経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

米中首脳会談の 見どころ (下)

2019-02-28 08:02:23 | 貿易
◇ 追加関税10%は撤廃するのか = モノ貿易については、中国側が完全に譲歩した形になっている。アメリカの対中貿易赤字は年3800億ドルだが、中国側は今後6年間で輸入を1兆ドル増加すると約束したらしい。年平均で1600億ドルほど赤字が減る計算だ。トランプ大統領としては大満足。来年の大統領選挙を控えて、大成功と宣伝するに違いない。

だが長期にわたる経済覇権争いの点からみると、知的財産権の保護などの交渉もきわめて重要だ。アメリカ側はこれまでの交渉で、モノ貿易以外で142項目にのぼる要求を提出している。なかでも中国政府による国有企業への過度な補助金支給は、不公平な政策だと厳しく批判した。しかし首脳会談で取り交わす6項目の覚え書に、補助金問題は入っていない。

中国側としても、この点だけは譲れない。習政権の経済政策は、15年に作成した「中国製造2025」が根幹になっている。しかし仮に国有企業への補助金が制限されると、この根幹が崩壊してしまうからだ。ある意味では、国家主導経済と民間主導経済の哲学論争であり、簡単に結論は出ないだろう。トランプ大統領は、この辺をどう考えるのだろうか。

最大の注目点は、トランプ大統領が昨年9月に発動した10%の追加関税をどうするかだ。これに手を着けなければ、いぜんとして中国側に改善を迫り続けることになる。仮に撤廃すれば、米中貿易戦争は一時的にもせよ幕引きとなる。前者なら「最悪の事態は免れた」程度、後者なら「米中和解」となるわけだ。最近の株式市場は、どうもこの2つを混同しているように思われる。

       ≪27日の日経平均 = 上げ +107.12円≫

       ≪28日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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米中首脳会談の 見どころ (上)

2019-02-27 08:09:13 | 貿易
◇ 大成功と宣伝するものの = トランプ大統領は24日、米中貿易交渉について「十分な進展があったため、3月2日に予定していた25%への関税引き上げは延期する」と発表。これに伴い、閣僚級の交渉も1か月ほど継続し「3月中には首脳会談を開いて、最終的な決着を目指す」ことを明らかにした。これにより米中貿易戦争の激化は、当面避けられることになった。

これまでに漏れてきた情報を総合すると、首脳会談では6項目の議題について合意した内容を覚え書の形で交換する。その6項目は①輸入増加②為替③技術移転④知的財産保護⑤サービス分野⑥非関税障壁――となる模様。このうち最も前進したのは輸入増加で、たとえば中国はアメリカ産大豆を1000万トン追加輸入することになった。昨年の輸入実績は1600万トンだから、増加率は6割以上になる。

このほか小麦、トウモロコシ、さらにはLNG(液化天然ガス)などについても、品目ごとに輸入増加目標量が定められたようだ。また為替についても、中国側は「輸出を増やすための元安政策はとらない」と確約した模様。さらにサービス分野の開放、知的財産権の保護、非関税障壁の問題についても、一定の合意が得られたものとみられる。

しかし覚え書が作成される6項目のなかには、中国政府の国有企業に対する補助金の問題が見当たらない。中国側も経済政策の根幹にかかわるだけに、譲れないのだろう。トランプ大統領は首脳会談の前に、そこにまで楔を打ち込もうとしているのか。それとも補助金問題には目をつぶって「首脳会談は大成功」と宣伝するつもりなのか。大きな見どころの1つである。

                                 (続きは明日)

       ≪26日の日経平均 = 下げ -78.84円≫

       ≪27日の日経平均は? 予想 = 下げ≫           
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減益に転じた 企業業績

2019-02-26 08:26:07 | 利益
◇ 中国経済の減速が冷や水 = 日経新聞が上場企業1580社の昨年4-12月期決算を集計したところ、純利益は前年同期比0.2%の増加にとどまった。17年4-12月期は35%の増益だったので、増益率は急降下したことになる。製造業は1.9%の減益、非製造業は3.1%の増益だった。また19年3月期の見通しは1.4%の減益で、絶好調だった企業業績も3年ぶりに減益となることが確実になった。

製造業が減益になったことからも判るように、業績が急降下した大きな原因は中国経済の成長鈍化。業種でみると、自動車と自動車部品、それに電気機械の変調が著しい。その一方、内需関連の企業は多くが好調を持続しており、全体の4社に1社は過去最高益を更新している。このような業績の二極化は、まだ広がりそうだ。

アメリカの場合も、企業業績は似たような動きをしている。リフィニティブ社の調査によると、主要500社の昨年10-12月期の純利益は前年比14.6%の増益。それまでの20%を超える増益から、かなり減退した。その傾向はことしに入ってからも続き、1-3月期の見通しは11期ぶりに3.1%の減益になるという。人件費の高騰、ドル高、関税引き上げなどが原因で、日本ほどではないが米中貿易戦争の影響も出ているようだ。

したがって中国経済の不調が続くと、日米の企業業績は減益傾向を強める可能性が高い。この点で米中貿易交渉の結果に注目が集まるが、3月中にも実現しそうなトランプ・習会談で、摩擦がすべて解消するとは考えられない。現在の関税水準が維持されれば、企業業績に対する影響度は変わらないことになる。

       ≪25日の日経平均 = 上げ +102.72円≫

       ≪26日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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今週のポイント

2019-02-25 08:17:17 | 株価
◇ ねばり腰の株価 = 世界経済の先行きに注意信号が出ているにもかかわらず、株価は予想外の強さをみせている。特にニューヨークの市況が堅調だ。アメリカでは中古住宅の売れ行きが3年ぶりの低水準に落ち込んだり、企業業績も減益予想に。それでもダウ平均は先週149ドルの値上がり。9週間連続の上昇で、3か月半ぶりに2万6000ドルを回復している。市場は米中貿易摩擦の解消にだけ期待をかけて、買い続けているようだ。

その米中貿易交渉が、今週3月1日にヤマ場を迎える。この日までに進展がなければ「中国からの輸入品2000億ドル分に25%の関税をかける」と、トランプ大統領が宣言したからだ。最近の情報では、米中間で取り交わす覚え書の内容が固まり、トランプ・習会談も3月中に実現しそうだという。投資家の多くが、こうした情報に賭けているようにみえる。

日経平均は先週525円の値上がり。政府が月例報告で生産判断を40か月ぶりに引き下げたり、企業の3月期決算が減益予想になるなど、こちらも環境は芳しくない。ただ株価の出遅れ感が強いために、ニューヨークが上がれば引きずられる。また円相場が110円前後に終始していることにも助けられた。今週はやはり米中交渉の結果待ちということになるだろう。

今週は25日に、1月の企業向けサービス価格。28日に、1月の鉱工業生産、商業動態統計、住宅着工戸数。1日に、10-12月期の法人企業統計、1月の労働力調査、2月の消費動向調査、新車販売台数。アメリカでは26日に、12月の住宅着工戸数、FHFA住宅市場指数、2月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。27日に、1月の中古住宅販売。28日に、10-12月期のGDP速報。1日に、2月のISM製造業景況指数。また中国が28日に、2月の製造業と非製造業のPMIを発表する。

       ≪25日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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オレオレ詐欺を 根絶する方法

2019-02-23 07:56:19 | 高齢者
◇ “受け子”のなり手をなくす = オレオレ詐欺などの特殊詐欺は全国で1万6493件、被害総額は356億8000万円にのぼった。警察庁が21日発表した昨年の数字である。件数、被害総額とも前年よりは少し減っているが、それでも驚くほど多い。手口もオレオレ詐欺から架空請求、還付金詐欺など多岐にわたり、非常に巧妙になってきている。被害者はすべてが高齢者だから、何ともたまらない。

地域的にみると、東京・神奈川・埼玉・大阪の4都府県では増加、残りの道府県では減少した。手口では、まだオレオレ詐欺の被害が182億8000万円もあって最大。高齢者が多額の預金を引き出すと警戒されるためか、最近はキャッシュカードをだまし取るケースが増えてきたという。現金にしてもカードにしても、受け取りに来るのは、受け子と呼ばれる若年層だ。

全国の警察が逮捕した詐欺グループは、合計2747人。そのうち少年が754人もいる。そのほとんどが受け子で、なかには宿泊・交通費を支給され、地方から大都会に呼び寄せられた少年も少なくない。これらの多くはアルバイト感覚で受け子を引き受け、あまり犯罪意識がないという。

詐欺グル―プにとっては、受け子がいないと商売にならない。そこで受け子を引き受ける少年をなくせば、オレオレ詐欺は壊滅するだろう。そのために警察庁は、まず逮捕された少年がどんな罰を受けるのか。平均的ないくつかのケースを仮名で公表する。それを中学・高校の授業を通じて周知させ、オレオレ詐欺は「卑劣で重大な犯罪であること」を徹底的に教え込む。こうすれば、少年も高齢者も人生上の大難を免れることができる。

       ≪22日の日経平均 = 下げ -38.72円≫

       【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】   
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