経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

この夏 電気料金は最高値へ (下)

2024-05-17 08:02:00 | エネルギー
◇ 達成できない計画の連続 = エネルギーの大半を輸入に頼る日本にとって「エネルギー基本計画」は最も重要な経済政策の青写真だと言える。2003年に初めて作成され、その後3年ごとに改定されてきた。だが残念なことに、この計画目標が達成されたことはない。目標の水準が高すぎるのか、それとも達成するための具体的な政策に欠陥があるのか。いずれにしても、責任官庁である経済産業省の失態。ことしは改定の年に当たっているが、また同じ轍を踏む公算が大きくなっている。

現行の計画は、21年に作成された。地球温暖化ガスの放出を30年度には、13年度の46%に抑えることを中軸の目標としている。この目標を達成するための具体策として、30年度の電源構成を作成した。その内容は再生可能エネルギーによる発電量を全体の36-38%に、原子力による発電量を20-22%に増大させるという内容。ところが22年度の実績は再生エネが21.7%、原子力が5.5%に過ぎない。目標の達成は、ほとんど不可能に近い。

太陽光発電については補助金を出し過ぎて、発電量が過剰に。送電線が足りないから遠くへは送れない。蓄電池もないから貯めても置けない。結局、廃棄するかタダ同然で売られている。原発については、電力会社や自治体に任せっぱなし。政府は傍観を決め込んでいる。これではエネルギーの輸入は少しも減らず、国民は高い電気・ガス代に悩まされ続けるだけだ。

経産省はいま24年度版のエネルギー計画を作成中。日経新聞によると、今回は40年度の電源構成を提示する方針だという。30年度が目標だともう時間がないから、大きく改善する数字は出しにくい。目標を16年先に伸ばすことで、なんとか格好のいい数字並べられる。こんな目論見が透けて見える。政府の‟やる気”のなさが、諸悪の根源となっていると言えるだろう。

        ≪16日の日経平均 = 上げ +534.53円≫

        ≪17日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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この夏 電気料金は最高値へ (上)

2024-05-16 07:53:07 | エネルギー
◇ 太陽光発電は余って困っているのに = 気象庁の予測によると「ことしの夏は猛暑になりそう」だという。そして気温の上昇とともに、電気料金もどんどん上がりそうだ。たとえば標準家庭について6月請求分をみると、東京電力は8538円で5月より401円高くなる。大手10社がすべて値上げし、いちばん高いのは北海道電力の9114円。いちばん安いのは九州電力の7101円ということになる。

国際的なエネルギー価格の高騰に、円安による輸入価格の上昇が加わった。これが電力料金を押し上げている基本的な原因。それに6月からは、政府が補助金を停止する。これで各社が一斉に値上げすることになった。北海道・東北・東京の料金が高く、関西・九州の料金が比較的安いのは、主として原発が稼働しているかどうかの差。

政府は物価の高騰を緩和するため、23年1月から電気と都市ガス会社に補助金を支給、料金の上昇を抑えてきた。しかし、この補助金は24年5月には半減、6月からは停止することを決めている。だから7月請求分はもっと値上がりし、おそらく過去最高の水準に達するとみられている。この停止によって、標準世帯の電気代は年間1万7696円増加するという試算もある。猛暑でクーラーの使用が増えれば、家計の痛手はもっと大きくなるかもしれない。

ところが一方で太陽光発電が普及した結果、その電力が余り始めた。このため電力市場では太陽光による電力の価格が低落、1キロワット時=1円以下の取り引きさえ現われているという。太陽光発電が昼間に集中するとか、送電線が足りないとかの問題はあるにしても、どこかおかしい。政府がきちんとしたエネルギー計画を持たないから、こんな矛盾が生まれる。これも岸田内閣の‟失政”である。

                         (続きは明日)

        ≪15日の日経平均 = 上げ +29.67円≫

        ≪16日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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ガソリン補助金 またも延長 (上)

2024-03-28 07:56:31 | エネルギー
◇ 予算規模は防衛費並みに膨張 = 岸田首相は先週の参院予算委員会で、ガソリンに対する補助金について「国民経済や経済活動への影響を考慮して、検討して行くことが重要だ」と述べ、4月末で終了する予定の補助金政策を延長することに前向きな姿勢をみせた。この制度で、たしかにガソリンの小売り価格は1リットル=175円程度に抑えられている。しかし反対論も多いなかで、補助金はまたしても延長されることになりそうだ。

ガソリンに対する補助金制度は、22年1月に導入された。原油の輸入価格が上昇した場合、政府が元売り会社に補助金を支給することで小売り価格を抑制する仕組み。たとえば最近の小売り価格は、レギュラーの全国平均が1リットル=174.3円。もし補助金がなければ196.0円になっているはずだと試算されている。当初はごく短期で終える計画だったが、これまで6回も延長された。現在は4月末で終了の予定になっているが、これをまたまた延長する。

必要な経費は、想像以上に多い。この4月末までに支給される補助金の総額は、約4兆4000億円にのぼる。予算ベースでみると、累計は6兆4000億円。1年間の防衛費にほぼ匹敵する。これだけ巨額の税金を使うわけだが、その恩恵は黒字を出している企業や大金持ちの個人にも及ぶ。これが反対論の一つの根拠だ。

ガソリンの値段が上昇すれば、消費が抑えられるはず。しかし価格を抑えれば、その機能が働かない。したがって補助金政策は、脱炭素の方向と矛盾する。また価格が175円前後で統一されるため、小売り市場ではほとんど競争がなくなった。と言うより、ガソリンの小売り市場は消滅してしまった。このように副作用も大きく、反対論は根強い。

                   (続きは明日)

        ≪27日の日経平均 = 上げ +364.70円≫

        ≪28日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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100ドルを超える恐怖 : 原油価格 (下)

2023-10-27 07:24:19 | エネルギー
◇ 日本はこの50年間なにをやったのか = ちょうど50年前の1973年10月6日、エジプトとシリアが共謀してイスラエルを奇襲。いわゆる第4次中東戦争が始まった。結果はイスラエルの勝利に終わったが、OPEC(石油輸出国機構)はイスラエル寄りの先進国を牽制するため、突如として原油の輸出価格を4倍に引き上げた。これが石油ショック。各国の物価は急騰、景気は下降を余儀なくされた。日本でもトイレット・ペーパーの買い占め騒ぎが起こり、当時の福田赳夫首相はこの現象を‟狂乱物価”と命名している。

この経験から、日本は実に多くのことを学び取った。原油の輸入先の分散、輸入先国との良好な関係維持、省エネの推進、エネルギー輸入依存度の引下げ、備蓄の増強など・・・。このうち省エネの推進や備蓄の増強、それに原油から天然ガスへの切り替えなどは、そこそこ進捗した。しかし中東への依存度は当時の80.7%から、最近は95.2%へと悪化している。

なかでも重要なのは、エネルギー輸入依存度の引き下げだ。総発電量に占める輸入化石燃料の比率をみると、1972年度は94.0%だった。それが22年度には72.4%まで下がっている。しかし50年間で、これしか下げられなかったと言うべきだろう。もし50%にまで下げていたら、現在の貿易赤字は大幅に縮小。物価もこんなには上がらなかったはず。

エネルギー輸入依存度の引き下げは、国内自給率の引き上げによって達成される。つまり日本はこの50年間に、もっと原発を安全に稼働させ、太陽光や風力など再生可能エネルギーによる発電量を増やしておくべきだった。これは歴代政府の失政だったと言えるだろう。産油国側は「減産による価格維持」を学んだが、日本政府は50年前の教訓を生かしきれなかった。

        ≪26日の日経平均 = 下げ -668.14円≫

        ≪27日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
 
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100ドルを超える恐怖 : 原油価格 (上)

2023-10-26 07:19:40 | エネルギー
◇ ガザ戦争で高まる危険性 = 原油の国際価格は、いま高止まりしている。ニューヨーク市場のWTI(テキサス産軽質油)先物相場は、このところ1バレル=90ドルを前に足踏み状態。しかしイスラエルのガザ地上作戦が、本格的に始まったらどうなるか。ごく短期で決着すればともかく、もし長引いてレバノンやイランなどの近隣アラブ諸国が巻き込まれれば、価格は確実に100ドルを突破するに違いない。それが世界経済に及ぼす悪影響は、計り知れないほど大きくなりそうだ。

原油価格が100ドルを超えれば、各国の物価はさらに押し上げられる。アメリカやEUの中央銀行は、金融引き締めを継続せざるをえなくなる。その結果、景気は悪化するだろう。中国も燃料高で、景気の回復はさらに遅れる。日本も貿易赤字がいっそう拡大、企業収益も圧迫される。景気が下降する一方で物価は上昇、庶民の生活は苦しくなるばかり。政府が補助金を積み増せば、財政は破たんに近付く。

現在の原油価格は、実に複雑な要因が重なって形成されている。まず供給面では、OPEC(石油輸出国機構)とロシアなどによる生産調整。さらにサウジアラビアとロシアは7月から、自主減産を追加。これを継続することで、相場を下支えしてきた。たとえば9月上旬に、プーチン大統領がサウジのムハンムド皇太子と電話会談しただけでも、価格は上昇した。その可能性は小さいが、仮にイランがホルムズ海峡を封鎖したら、価格は130ドルにも暴騰するだろう。

需要面の要因も複雑だ。アメリカの原油在庫が行楽シーズンのガソリン消費増加で減少すると、価格は上昇。中国の景気回復が遅れて需要が伸びないと、価格は下落。冬の暖房シーズンが近づくと、価格は上がる。現在はアメリカで高価格のためにガソリンの消費が伸び悩み、それが原油価格を抑える要因となっている。こうした需給両面からの力に加えて投機資金が暗躍するから、先行きの予想はかなり難しい。

                       (続きは明日)

        ≪25日の日経平均 = 上げ +207.57円≫

        ≪26日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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