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経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

対照的だった ‟短観”と‟毎勤”

2023-12-19 07:57:11 | 景気
◇ 賃上げが物価高を超えるのは難しい = 日銀が発表した12月の短観(企業短期経済観測調査)は、明るく輝いてみえた。大企業・製造業の業況判断指数は3期連続の上昇でプラス12。大企業・非製造業はプラス30で、なんと32年ぶりの高さ。これまでマイナスに沈んでいた中小企業・製造業もプラス1となり、ようやく水面上に顔を出した。要するに、企業の景気は非常によろしい。

一方、厚生労働省が発表した10月の毎月勤労統計は、うす暗くよどんでみえた。1人当たりの実質賃金は、前年比で2.3%の減少。これでマイナスは19か月連続となった。現金給与総額は27万9172円で、前年比1.5%増加している。しかし物価が3%以上も上昇したため、実質でみるとマイナスになってしまう。要するに、家計は非常に苦しい。

企業の景気がよくなった原因は、いろいろ考えられる。たとえば企業努力による新製品の開発や新市場の開拓など。だが一般的にみて、円安や値上げの恩恵に浴している部分も少なくない。その半面、家計は円安と値上げによる物価上昇で、19か月間も実質的な収入を減らしている。要するに、円安と値上げは最終的にすべて家計が負担していると言ってもいい。

景気のいい企業がもっと賃上げをすれば、実質賃金がプラスになる。すると消費が増えて、企業の利益がさらに増える。これが岸田首相が言う‟経済の好循環”だ。しかし、その実現はかなり難しそう。人手不足で賃上げは進むかもしれないが、企業は人件費の増加分を値上げでカバーしようとする。だから物価も上がってしまう。家計の実質収入が恒常的にプラスになる可能性は、ないに等しいのではないか。

        ≪19日の日経平均 = 上げ +460.41円≫

        ≪20日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

持続性に欠ける 6%経済成長

2023-08-16 07:39:30 | 景気
◇ 物価高で伸び悩む個人消費 = 内閣府は15日、ことし4-6月期のGDP速報を発表した。それによると、年率換算した実質成長率は6.0%で、事前の予測を大きく上回った。四半期の成長率が6%に達したのは、20年10-12月期以来のこと。ただ内容をみると、外需の貢献度が7.2%だったのに対して、内需はマイナス1.2%と振るわなかった。このため7-9月期以降もプラス成長を持続できるかどうか、疑問視する専門家も少なくない。

GDPの構成項目をみると、いずれも年率換算で個人消費は2.2%の減少。住宅投資は7.7%の増加、企業の設備投資は0.1%の増加、輸出は13.6%の増加、輸入は16.2%の減少だった。コロナの5類移行で経済の正常化が進んだのに消費が減少したのは、物価高の影響が大きい。また輸入が大幅に減少したのは、原油の国際価格が下がったため。このように燃料の輸入価格が減ると、成長率は上向く。このことは銘記しておく必要があるだろう。

ことし4-6月期の実質成長率はアメリカが2.4%、ユーロ圏が1.1%、中国が3.2%だった。したがって日本の6.0%成長は断トツに高い。だが今後もその優位を持続できるかというと、かなり覚束ない。というのも物価高で実質所得が伸びず、消費の委縮は続きそう。加えて原油の国際価格が上昇し始めたから、輸入の減少も期待できないからだ。

高い成長率を持続するためには、まず物価を下げて消費の回復を計ること。次いで輸入燃料を減らうようなエネルギー政策を推進することが肝要だ。しかし政府・日銀は、それと反対の方向に動いている。補助金をいくら出しても、物価上昇の原因には触れない。ゼロ金利政策に固執して円安を放置、輸入価格を引き上げている。だから企業も安心して設備投資を増やせない。

        ≪15日の日経平均 = 上げ +178.98円≫

        ≪16日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

景況感は改善した : 日銀短観

2023-07-04 07:36:30 | 景気
◇ 急激な円安の影響は反映されず = 日銀は3日、6月の企業短期経済観測調査の結果を発表した。それによると、大企業・製造業の業況判断指数はプラス5で、3月調査の結果より4ポイント改善した。改善は7四半期ぶり。半導体の供給不足が解消し、自動車がプラス5で14ポイントも改善したことが大きい。また大企業・非製造業の判断指数はプラス23で、前回より3ポイント改善。なかでも宿泊・飲食サービス業はプラス36で、36ポイントも改善している。

3か月後の先行き見通しは、大企業・製造業が4ポイントの改善。大企業・非製造業は3ポイントの悪化を見込んでいる。この調査は日銀が全国約9000社を対象として3か月ごとに実施。自社の景況が「よくなった」という回答の割合から「悪くなった」という回答の割合を差し引いた数字が業況判断指数。日銀も金融政策を決める際の材料として、常に重視している。

この結果からみる限り、夏から秋にかけての景気は順調に推移しそうだ。しかし注意すべき点は、最近の急速な円安傾向が十分には反映されていないこと。多くの企業が回答してしまったあとに、円相場が145円前後まで下落した。残念ながら、この時間差は致し方なかった。企業の先行き見通しに、この円安がどんな影響を及ぼすかは不明である。

たとえば調査では、1年後の物価見通しも聞いている。その結果は、全規模・全産業の平均で物価は2.6%上昇するという回答だった。前回の2.8%上昇よりはやや鈍化する。だが円安で、この結果はかなり変わってくるはず。全産業の平均で、企業はことし下半期の円相場を132円程度と想定しているので、業況判断も変化することは必至だろう。

        ≪3日の日経平均 = 上げ +564.29円≫

        ≪4日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

物足りない 企業景気調査

2023-06-14 07:55:20 | 景気
◇ いちばん知りたい点に触れず = 内閣府・財務省は13日、共同で実施した4-6月期の法人企業景気予測調査を発表した。それによると、自社の景況判断指数は大企業が2.7ポイント、中堅企業が1.9ポイントのプラス。中小企業は0.8ポイントのマイナスだった。業種別では食品製造業・化学・サービス業・運輸郵便業の景況感が大きく上昇している。

景況判断指数は「前期より上昇」と回答した企業の割合から「下降」と回答した企業の割合を差し引いた数字。全国1万1000を超える企業が回答した。調査では「景気の先行き見通し」も聞いているが、結果はきわめて強気。全産業ベースで7-9月期はプラス12.0ポイント、10-12月期はプラス8.6ポイントとなっている。

「自社の業績見通し」についても聞いた。景気の先行き見通しが明るいため、売り上げは順調に伸びると予想。全産業ベースで23年度の売上高は2.7ポイントのプラス。製造業は3.5ポイント、非製造業は2.4ポイントのプラスだった。ところが「経常利益の見通し」は製造業が9.9ポイントのマイナス、非製造業も2.4ポイントのマイナス。全産業では4.4ポイントのマイナスという結果になった。

景気の見通しがよく、自社の売り上げも伸びる。それなのに、どうして利益は鈍化する予想なのか。考えられることは、光熱費や燃料代、原材料費や人件費が上昇して利潤が減少してしまう。あるいは、ほかにも利益を抑制する原因があるのか。いちばん知りたい点だが、この調査では聞いていない。

        ≪13日の日経平均 = 上げ +584.65円≫

        ≪14日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

景気後退への 注意報 : 日銀短観

2023-04-04 07:37:48 | 景気
◇ 23年度の純利益は3.8%の減少へ = 日銀は3日、3月の企業短期経済観測調査を発表した。それによると、大企業・製造業の業況判断指数はプラス1で、昨年12月調査に比べて6ポイントの悪化だった。業種別では石油・石炭がマイナス46で13ポイントの悪化、電機がプラス3で15ポイントの悪化、自動車がマイナス9で5ポイントの改善などとなっている。悪化の原因は原材料・エネルギー価格の高騰、欧米諸国の金融引き締め。自動車は部品供給体制の回復で改善した。

大企業・非製造業はプラス20で1ポイントの改善。コロナ規制の解除やインバウンドの復活が、全体を下支えした。業種別では小売りがプラス18で10ポイントの改善、情報サービスがプラス42で2ポイントの改善、対個人サービスがプラス24で4ポイントの改善。宿泊・飲食サービスは0で前回と変わらずだった。宿泊・飲食サービスは、人手不足が改善を妨げている。

3か月後の予想をみると、大企業・製造業はプラス3で2ポイントの改善、大企業・非製造業はプラス15で5ポイントの悪化。物価高・人手不足・規制解除の効果一巡に加えて、世界経済の低迷が重荷となってくる。この結果、22年度と23年度の純利益は大企業・製造業が6.5%の増益から6.1%の減益へ。大企業・非製造業は22.7%の増益から5.5%の減益へ。全規模・全産業でも10.5%の増益から3.8%の減益へと悪化する見込みだ。

内閣府が発表した昨年10-12月期のGDP改定値は年率換算で0.1%、速報値の0.6%から大きく下方修正された。短観の結果から推測すると、1-3月期のGDPも拡大はムリ。下手をすると、マイナスに落ち込む可能性も小さくはない。世界経済が明らかに下降線をたどり始めたなか、政府は114兆円にのぼる巨大予算を編成した。だが成長部門への支出が少ないため、企業は先行きに明るさを感じ取れない。日銀の短観は、景気後退への注意報だと読み取れる。

        ≪3日の日経平均 = 上げ +146.67円≫

        ≪4日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

Zenback

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