経済なんでも研究会

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教えて! 植田・新日銀総裁

2023-04-12 07:26:11 | 金利
◇ なぜ、いまは利上げ出来ないのか? = 経済学者の植田和男氏が、第32代の日銀総裁に就任した。10日夜の初めての記者会見では「現在の大規模緩和政策は継続することが適当」「その副作用については、適当なタイミングで正常化へ」などと発言。サプライズもなく、まずは無難な船出だった。これを好感して11日の株価は上昇、為替は円安の方向に動いている。

副作用が最も大きいのは、長期金利を0.5%以下に抑え付けるイールドカーブ・コントロール政策。債券市場の機能が損なわれ、事業会社が10年以上の社債を発行できなくなってしまった。このため市中では、植田新総裁はこの問題から手を着けるという見方が強い。具体的には10年もの国債の利回り変動幅を0.75%に広げる。あるいはコントロールの対象を2-5年もの国債に移すなどの政策変更が、取り沙汰されているようだ。

もし10年もの国債の利回り変動幅を0.75%に広げれば、それは政策金利を引き上げたことになる。だから黒田前総裁も踏み切れなかったし、植田新総裁もいまのところは慎重な姿勢を崩していない。たしかに金利を上げれば、景気にとってはマイナス要因となるだろう。しかしプラス要因も非常に大きいのではないだろうか。

たとえば仮に預金に1%の金利が付けば、個人や企業には年間10兆円もの利子収入が見込める。これは景気にとっても大きなプラス。また為替も円高になりやすく、物価の引き下げに貢献する。もちろん借金をしている企業や個人にとっては、負担が増えるだろう。だが、そこは政府が補助金などの政策で救済する手もあるだろう。メリットの大きい利上げが出来ない理由は何か。植田教授にぜひ教えて頂きたいものである。

        ≪11日の日経平均 = 上げ +289.71円≫

        ≪12日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

超・金融緩和時代の 終わり

2022-03-18 07:40:11 | 金利
◇ FRBが0.25%の利上げを発表 = アメリカの中央銀行であるFRBは16日のFOMC(公開市場委員会)で、政策金利を0.25%に引き上げることを決めた。これにより2年前から続いたゼロ金利は終了、超・金融緩和時代は幕を閉じた。同時にFRBは「ことし中に7回の利上げが予想されること。金融の量的な引き締めは次回の会合で決定する方向であること」を明らかにしている。

FOMCというのは、FRBの政策決定会合。ことしはあと5、6、7、9、11、12月に開催される予定。したがって、すべての会合で0.25%ずつ利上げを決定すると、年末の政策金利は1.75%になる計算だ。また量的引き締めは5月の会合で決定されることになる。ただ国債や住宅ローン債券をどんな規模で売り戻すかは未定だ。その規模が大きくなれば、市中からの資金の引き揚げが加速する。

ニューヨーク市場では16日、ダウ平均が519ドルも値上がりした。朝方からウクライナの停戦交渉が進展しそうなこと、原油価格が急落したことなどを材料に買われたが、FRBが午後2時に利上げを発表すると、株価は横ばいとなった。つまり市場は利上げの発表に対して、上げも下げもしなかったことになる。

市場が判断に苦しんだのは、まず今回の引き締めでインフレを阻止できるのかという疑問。また利上げで、景気の回復が中断してしまわないかという疑問。さらに量的引き締めの規模が不明なこと。投資家はこうした点を解明できなかったと言えるだろう。東京市場では17日、日経平均が大幅高となった。ニューヨークに追随した形だが、やや乗り過ぎの感じもなくはない。

       ≪17日の日経平均 = 上げ +890.88円≫

       ≪18日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

置き去りになる 日本 : 金融緩和

2019-07-30 07:57:42 | 金利
◇ 景気の悪化を認めない政府・日銀 = 世界経済は再び金融緩和の波に洗われることになった。アメリカの中央銀行であるFRBはあす31日、政策金利の引き下げを発表する予定。ヨーロッパの中央銀行であるECBも、9月には緩和政策に踏み切る方針。こうしたなかで、日銀だけはずっと静観の姿勢を貫こうとしている。日本は世界の金融緩和という流れから、取り残されそうだ。

FRBのパウエル議長は30-31日に開く政策決定会合後に記者会見し、10年半ぶりの政策金利引き下げを発表する見込み。金利は現行の2.5%から、おそらくは2.25%に下がるものと思われる。利下げに踏み切る理由として、パウエル議長は「景気の現状は必ずしも悪くはないが、米中貿易戦争の影響などで悪化の可能性がある」と、予防的緩和の意義を強調するに違いない。

これに先立ちECBも25日の理事会で、金融政策のカジを緩和へ切り替えることを決めた。次回9月の理事会で、政策金利の引き下げと量的な緩和を打ち出す公算が大きいと観測されている。こちらもアメリカと同様、景気の下降を未然に防ぐための措置。特にアメリカの利下げで「ユーロの対ドル相場が上昇しないようにするための政策」だと説明するはずだ。

ところが日銀は、政策の変更など全く考えていない。もうマイナス金利で、下げる余地がないのか。いや、ECBも政策金利はゼロ、市中銀行から預かる場合の預金金利はマイナス0.4%で、日本と変わらない。日銀がFRBやECBと違う点は、ただ1つ。それは消費増税を前にして「景気が心配」とは、口が裂けても言えないこと。景気に心配がなければ、金融緩和の必要はなくなる。

       ≪29日の日経平均 = 下げ -41.35円≫

       ≪30日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

利上げは あと5回 / アメリカ

2018-10-03 08:01:24 | 金利
◇ 微妙な円相場への影響度 = アメリカの中央銀行であるFRBは先週26日の政策決定会合で、政策金利を0.25%引き上げ年2.25%とすることを決めた。15年末にゼロ金利を抜け出してから、これで9回目の利上げ。今後については、ことし12月と来年は3回、20年は1回という見通しを公表している。この通りに行けば、利上げはあと5回。20年春ごろには、3.5%の金利で打ち止めとなる見込みだ。

今後の見通しは、政策決定会合に出席した委員による現時点での予想。したがって仮にインフレ傾向が強まれば、利上げの回数は増える。また景気の状況が悪化すれば、回数は減る可能性がある。それにしても、こういう形で中央銀行が今後の見通しを発表するのは異例と言えるだろう。一般に予見が広まれば、金融政策の心理的効果は薄れてしまうからだ。

FRBは逆手をとって、利上げの心理的効果をむしろ薄めようとしている。いま利上げが大きなインパクトを発揮すると、長期金利が上がってしまう。すると景気に悪影響が及んだり、新興国からの資金流出が激しくなりかねない。それを避けるために、FRBはわざわざ今後の見通しを公表しているわけだ。

この戦術は成功し、市場の目は今回の利上げよりも将来の金利動向に向いている。このため先週は利上げにもかかわらず、長期金利はほとんで動かなかった。アメリカの金利が上がれば、ふつうならドル高・円安になる。しかしFRBのこの作戦によって、為替市場でもドルは上がらなかった。ただ、この効果がいつまで持続するかは予測できない。もし呪縛が解ければ、円相場は下落することになるだろう。

       ≪2日の日経平均 = 上げ +24.86円≫

       ≪3日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

金利2%の そのあとは? / アメリカ (下)

2018-06-23 07:49:18 | 金利
◇ 忍び寄る世界貿易不況の影 = FRBが強調するように、たしかにアメリカの景気は好調を持続している。たとえば5月の失業率は3.8%で、18年ぶりの低さ。小売り売上高は前月比で0.8%増と、予想をはるかに上回った。消費者物価も前年比2.8%上昇している。これならFRBが利上げを速めるのも当然と言えるだろう。だが、そこへ立ちふさがったのがトランプ主導の貿易戦争だ。その悪影響が大きくなれば、利上げは難しくなる可能性がある。

それだけではない。大半の新興国が、アメリカの利上げによる資金の流出と貿易戦争のダブル・パンチに苦しみ始めた。自国の通貨を防衛するため、アルゼンチンやブラジル、インドネシアやフィリピンなど多くの国が利上げを余儀なくされた。利上げは景気の悪化を招き、貿易戦争は輸出を阻害する。それが時間とともに世界に拡散して行く。

そうした環境のなかで、ECB(ヨーロッパ中央銀行)が「量的緩和政策を年内で打ち切る」と発表した。ECBは15年1月から量的緩和を開始、現在でも国債などを月300億ユーロ買い入れている。それを年内で取り止めるというわけだ。アメリカの引き締め促進に刺激された感じもあるが、世界経済の動向しだいでは実現できない可能性もあるのではないか。

アメリカやヨーロッパの中央銀行が、金融政策の方向を緩和から引き締めに転換しようとしているのは、次の世界同時不況に備えるためでもある。この観点からすると、日本の場合は全く身動きがとれないまま。したがって不況がやってきても、財政面からも金融面からも対策を講ずる余地がない。世界貿易不況の影が見え始めただけに、とても心配である。

       ≪22日の日経平均 = 下げ -176.21円≫

       【今週の日経平均予想 = 2勝3敗】  


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