経済なんでも研究会

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トランプの 切り札 : 対中関税上げ (上)

2019-05-08 07:42:38 | 貿易
◇ 副首相はきょう訪米するのか = トランプ大統領がまたまた“関税”という名の切り札を投げつけた。「中国製品2000億ドル分にかけてきた10%の輸入関税を、今週10日から25%に引き上げる」と5日のツイッターで発表。さらに制裁関税をかけていない3250億ドル分についても「速やかに25%の関税を課す」と述べている。理由は米中貿易交渉の進展が遅すぎるというもの。

つい3日ほど前のツイッターでは「米中交渉は極めて順調。歴史的な取り引きになりつつある」と、ご機嫌だったトランプ大統領。態度が一変したから、市場も虚を突かれた形。上海市場で株価が5%の急落となったほか、欧米や東南アジア市場の株価も大幅安となった。長い連休が明けた東京市場でも、7日は令和入りの祝賀ムードもすっ飛んでいる。

米中両国は昨年末から、閣僚級の貿易交渉を継続している。最初の期限は3月1日だったが、しだいに延長。この間に中国側は、アメリカ産の農産物やLNG(液化天然ガス)の輸入を大幅に増やす。外資の技術移転強要を禁ずる外商取引法を成立させるなど、かなりの歩み寄りをみせた。しかし国有企業に対する政府の補助金廃止と、中国側が協定違反した場合の罰則条項の2点では、まだ決着がつかないと報じられている。

閣僚級の交渉を率いるのは、アメリカ側がライトハイザーUSTR(通商代表部)代表、中国側が劉鶴副首相だ。これまでワシントンと北京で何度も会議を開いてきたが、いまの予定ではこの8日にワシントンで協議することになっている。トランプ大統領の切り札に対して、中国側は「話し合いを続ける」と冷静に応じているが、8日の会議に劉鶴副首相が出席するかどうかは明らかにしていない。

                                (続きは明日)

       ≪7日の日経平均 = 下げ -335.01円≫

       ≪8日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

米中首脳会談の 見どころ (下)

2019-02-28 08:02:23 | 貿易
◇ 追加関税10%は撤廃するのか = モノ貿易については、中国側が完全に譲歩した形になっている。アメリカの対中貿易赤字は年3800億ドルだが、中国側は今後6年間で輸入を1兆ドル増加すると約束したらしい。年平均で1600億ドルほど赤字が減る計算だ。トランプ大統領としては大満足。来年の大統領選挙を控えて、大成功と宣伝するに違いない。

だが長期にわたる経済覇権争いの点からみると、知的財産権の保護などの交渉もきわめて重要だ。アメリカ側はこれまでの交渉で、モノ貿易以外で142項目にのぼる要求を提出している。なかでも中国政府による国有企業への過度な補助金支給は、不公平な政策だと厳しく批判した。しかし首脳会談で取り交わす6項目の覚え書に、補助金問題は入っていない。

中国側としても、この点だけは譲れない。習政権の経済政策は、15年に作成した「中国製造2025」が根幹になっている。しかし仮に国有企業への補助金が制限されると、この根幹が崩壊してしまうからだ。ある意味では、国家主導経済と民間主導経済の哲学論争であり、簡単に結論は出ないだろう。トランプ大統領は、この辺をどう考えるのだろうか。

最大の注目点は、トランプ大統領が昨年9月に発動した10%の追加関税をどうするかだ。これに手を着けなければ、いぜんとして中国側に改善を迫り続けることになる。仮に撤廃すれば、米中貿易戦争は一時的にもせよ幕引きとなる。前者なら「最悪の事態は免れた」程度、後者なら「米中和解」となるわけだ。最近の株式市場は、どうもこの2つを混同しているように思われる。

       ≪27日の日経平均 = 上げ +107.12円≫

       ≪28日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

米中首脳会談の 見どころ (上)

2019-02-27 08:09:13 | 貿易
◇ 大成功と宣伝するものの = トランプ大統領は24日、米中貿易交渉について「十分な進展があったため、3月2日に予定していた25%への関税引き上げは延期する」と発表。これに伴い、閣僚級の交渉も1か月ほど継続し「3月中には首脳会談を開いて、最終的な決着を目指す」ことを明らかにした。これにより米中貿易戦争の激化は、当面避けられることになった。

これまでに漏れてきた情報を総合すると、首脳会談では6項目の議題について合意した内容を覚え書の形で交換する。その6項目は①輸入増加②為替③技術移転④知的財産保護⑤サービス分野⑥非関税障壁――となる模様。このうち最も前進したのは輸入増加で、たとえば中国はアメリカ産大豆を1000万トン追加輸入することになった。昨年の輸入実績は1600万トンだから、増加率は6割以上になる。

このほか小麦、トウモロコシ、さらにはLNG(液化天然ガス)などについても、品目ごとに輸入増加目標量が定められたようだ。また為替についても、中国側は「輸出を増やすための元安政策はとらない」と確約した模様。さらにサービス分野の開放、知的財産権の保護、非関税障壁の問題についても、一定の合意が得られたものとみられる。

しかし覚え書が作成される6項目のなかには、中国政府の国有企業に対する補助金の問題が見当たらない。中国側も経済政策の根幹にかかわるだけに、譲れないのだろう。トランプ大統領は首脳会談の前に、そこにまで楔を打ち込もうとしているのか。それとも補助金問題には目をつぶって「首脳会談は大成功」と宣伝するつもりなのか。大きな見どころの1つである。

                                 (続きは明日)

       ≪26日の日経平均 = 下げ -78.84円≫

       ≪27日の日経平均は? 予想 = 下げ≫           

米中首脳会談の 疑問点2つ (下)

2018-12-05 07:14:01 | 貿易
◇ なぜ「中国製造2025」は消えたのか = もう1つの疑問点は、最大の対立点だった「中国製造2025」の問題が姿を消したことである。今後の90日間にわたる米中両国の交渉では①米企業への技術移転の強要②知的財産権の保護③非関税障壁④サイバー攻撃⑤サービス・農業の市場開放――の5項目が議題になると発表された。しかし最大の問題と目されてきた「中国製造2025」は、どこにも見当たらない。

「中国製造2025」というのは、中国政府が15年3月の全国人民代表大会で公表した経済成長の基本計画。半導体やITからロボット、宇宙産業に至るまで10分野の産業を、先端技術で発展させる計画だ。建国100周年の2045年を最終目標とし、その第1段階を2025年までとしている。財政からの補助は、最初の10年間で5兆2000億元(82兆円)を予定した。

この計画は、中国の産業を「先進国に追いつき、追い越す」ための国家計画だと言える。計画が順調に達成されて行くと、その成果は軍事面や宇宙開発の面にも反映されるだろう。したがって、アメリカとしても座視はできない。民間企業に巨額の補助金を出すこの計画はフェアーでないと、前々からいちゃもんを付けていた。

だが習政権としては、絶対に譲れない。共産党が最も重視する政策だし、この問題でアメリカに譲歩すれば弱腰だと叩かれる。また社会主義国家では、国が民間企業にカネを出したり口を出すのは当たり前。資本主義国から文句を言われても、修正するわけにはいかない。しかし最大の対立点であることは事実。この問題を回避して、貿易戦争の終結はありえないのでは。

       ≪4日の日経平均 = 下げ -538.71円≫

       ≪5日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

米中首脳会談の 疑問点2つ (上)

2018-12-04 08:22:23 | 貿易
◇ 中国は対米黒字を縮小できるのか = トランプ大統領と習近平国家主席は1日、ブエノスアイレスで貿易問題について会談。アメリカ政府が来年1月から予定していた中国に対する追加関税の実施を、90日間猶予することで合意した。この間に両国はアメリカの対中赤字を縮小する方策を検討するが、芳しい結果が得られなければ、トランプ大統領は輸入する中国製品2000億ドル分について25%の制裁関税をかける方針だ。

この合意によって、米中貿易戦争は当面の“和平”が成立した。このため各方面からは歓迎の声が聞かれ、株価も上昇した。だが、これで本当に貿易戦争は終結に向かうのだろうか。大きな疑問点が2つある。その1つは、はたして中国の巨額な対米黒字が減るのかという疑問だ。

アメリカ側の統計によると、17年の対中赤字額はモノの貿易だけで3752億ドル(約42兆円)にのぼった。この赤字額は、アメリカの対日赤字額の5倍を上回る。トランプ大統領は、中国に対して「この赤字を半分ぐらいに減らすよう」強く要求しているようだ。ところが今回の首脳会談では、すでに実施済みの制裁・報復関税を撤廃する話は出なかった。

米中両国は現在、たがいに制裁関税と報復関税をかけ合っている。アメリカは中国製品2500億ドル分、中国はアメリカ製品1600億ドル分が対象だ。この中国の規制には鉄鋼や航空機、自動車、LNG(液化天然ガス)、それに大豆や牛肉などの農畜産物が含まれている。トランプ大統領によると、このうち中国は自動車の関税は撤廃するという。だが中国が対米黒字を減らすには輸入の拡大が不可欠。その他の高関税を放置したままで、アメリカ製品の輸入を大幅に増やすことが可能なのだろうか。

                           (続きは明日)

       ≪3日の日経平均 = 上げ +223.70円≫

       ≪4日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

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