経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

コロナが憎い トランプ大統領

2020-05-22 07:44:04 | トランプ
◇ 大統領選挙まで薄氷の半年間 = トランプ大統領は先週、放送記者のインタビューに答える形で「中国と完全に断交することは可能かどうか、思案している」と発言した。トランプ氏の暴言癖は周知のとおりだが、この発言には驚いた人が多い。なぜ、こんな物騒な発言が飛び出したのか。原因はコロナ・ウイルスと半年後に近づいた大統領選挙にあるようだ。

アメリカでは今週までに全国50州のすべてが、何らかの形でコロナ規制を緩和した。このままでは、経済が崩壊してしまうと心配されたからである。トランプ大統領は早くから各州に対して経済活動の再開を要請していたが、それは景気の回復が遅れれば遅れるほど、11月の大統領選挙では不利に働くと考えられるためだ。しかし現状では、景気が早期に回復する保証はない。

逆にコロナ・ウイルスの感染が、再発する危険性もかなり大きい。もし第2波が予想より大きくなれば、大統領の責任が追及され、これも票の喪失につながりかねない。要するに、どちらに転んでも選挙は苦しくなる。その元凶はコロナ・ウイルスだ。そのウイルスを世界にまき散らしたのは、中国に違いない。その中国寄りのWHO(世界保健機構)も同罪だ。

これがトランプ氏の心情だろう。さらにアメリカ国民の多くが、中国のウイルス情報隠しを批判している。この際は中国に強く当たった方が、有権者の共感を得やすい。こんな計算も働いたに違いない。ウイルスがこのまま終息に向かい、景気はV字型に回復。中国はアメリカの農産物を大量に買う。トランプ氏は頭のなかでこんな道筋を描いているのだろうが、その道は狭く険しそうだ。

       ≪21日の日経平均 = 下げ -42.84円≫

       ≪22日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

カード切れになった トランプ大統領

2020-02-14 08:05:48 | トランプ
◇ 市場は10兆ドルのインフラ投資に反応せず = トランプ大統領は10日、21年度(20年10月-21年9月)の予算教書を議会に送付した。歳出総額は4兆8290億ドル(約530兆円)で、前年度比0.8%の増加となっている。このなかで、インフラ投資を10年間で1兆ドル支出するという景気対策を打ち出した。高速道路や鉄道に8100億ドル、高速通信や水道に1900億ドルを振り向けている。

そのほか防衛費は5.7%の増加、メキシコ国境のカベ建設には20億ドルの支出を要求している。その一方で、社会保障費などは0.3%削減。この結果、財政赤字を5年後には半減させると約束した。野党の民主党は防衛費の削減と社会保障費の増額を主張しているから、議会の審議ではこの辺が最大の対立点になると思われる。

トランプ大統領にしてみると、10年間に1兆ドルのインフラ投資は、大統領選挙を前に繰り出した“切り札”だったに違いない。だが専門家による評価はいま一つ。今後5年間に毎年3%成長することが土台となっているために、全体の構想が甘すぎると受け取られたようだ。市場もこの予算教書をほとんど無視、好材料とは認めていない。

空振りとなった形のインフラ投資。トランプ大統領は選挙前に、まだ何枚かの“切り札”を使いたいところ。しかし中国は新型肺炎で、揺さぶりをかけにくい。中東情勢で強腰に出ても、選挙の票にはなりにくい。カナダやメキシコ、日本との貿易交渉も終わってしまった。どうやらカード切れになったらしい。あとはFRBに圧力をかけて、金融を緩和させるか。トランプ大統領の新しいカード探しが始まろうとしている。

       ≪13日の日経平均 = 下げ -33.48円≫

       ≪14日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

トランプ大統領の 大きな誤算

2019-09-25 07:29:29 | トランプ
◇ 中国の耐久力を見誤った = トランプ大統領が中国製品に対する関税引き上げ第1弾を発動したのは、昨年7月だった。その後も第4弾まで輸入規制を拡大。現在では輸入する中国製品のほとんどに、高い関税がかけられている。このため中国の対アメリカ輸出は大幅に減少、たとえば8月の輸出額は前年比16%も減った。鉱工業生産が低迷し、GDP成長率も政府が目標とする6%を割り込みそうだ。ところが中国政府は音をあげず、貿易交渉でもアメリカに譲歩をしてこない。

この中国の粘り強さは、トランプ大統領にとって予想外だったに違いない。歴史的にみても、中国人の耐久力の強さは証明されている。しかも現在の中国は共産党の一党独裁で、財政や金融政策を意のままに動かせる。企業や国民の不満も、割と簡単に抑え込める。習近平主席は、長老会議で一任を取り付けるなど万全の態勢を整えていた。

ひるがえってアメリカの状況をみると、中国製品の流入を抑制したにもかかわらず、鉄鋼や自動車の業績は一向によくならない。中国側の報復関税によって、農業は大きな打撃を受けている。また消費財の値上がりで、小売り業界や消費者からの苦情も出始めた。ところが財政は議会、金融はFRBが権限を握っているから、トランプ大統領といえども中国のようにすべてを動かすことはできない。

来年11月には大統領選挙。もう前哨戦はスタートした。このまま進んで行くと、米中経済戦争は大統領選挙のマイナス要因になりかねない。そこで戦術転換。その第1歩として、強硬派のボルトン補佐官を切り捨てた。新しい方向は、懐柔戦術だろう。さて具体的に、どんな手を打つか。いまトランプ氏は、その具体策とタイミングを計ることに腐心しているに違いない。

       ≪24日の日経平均 = 上げ +19.75円≫

       ≪25日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

日米交渉は アメリカの判定勝ち

2019-08-30 07:13:12 | トランプ
◇ “奥の手”を温存したトランプ大統領 = 日米2国間の貿易交渉が、大筋で合意した。9月末までの署名・成立を目指す。注目された日本側の農産物輸入は、すべてTPP(環太平洋経済連携協定)並みに自由化。たとえば牛肉は、現在38.5%の関税率が33年には9%にまで段階的に引き下げられる。すでにTPPでは26.6%に下げられているので、アメリカ産についても協定が発効すれば、即時この水準が適用される。

一方、アメリカ側は広範囲の工業製品について関税を撤廃する。ただ乗用車にかかる2.5%、ピックアップ・トラックにかかる25%という関税は変更なし。また大統領権限で実施できる輸入自動車に対する追加関税や数量制限についても、日本に対して適用しないという約束はしなかった。トランプ大統領は“奥の手”を温存したわけである。

日本側は9月の署名に向けて、こうした大統領権限を日本には適用しない確約を取り付けたい方針。だが、その望みは全くムリだろう。現にトランプ氏は「現時点では考えていないが、あとになってやるかもしれない」と、脅しともとれる発言をしている。ここまでが精一杯と言ってしまえばそれまでだが、“奥の手”を封じられなかったことで、日本側は判定負けになった形だ。

最後に日本側は、アメリカ産のトウモロコシ250万トンを購入することになった。日本国内で害虫の被害が広がり、飼料用のトウモロコシが不足するからだという。だが、これはトランプ大統領の票田であるアイオワ州が中国向けに売れず、苦境に陥っていることへの支援。こんなお土産まで付けても、トランプさんは隙をみせなかった。

       ≪29日の日経平均 = 下げ -18.49円≫

       ≪30日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

トランプ大統領の 頭のなか

2019-02-19 08:28:17 | トランプ
◇ 選挙の票しか考えないぞ = またビッグ・ニュースを造り出してやった。議会がまとめた修正予算案に署名した一方で、大統領の権限を使って非常事態宣言を発令。国防予算などの使途を変更して81億ドル(約9000億円)の財源を捻出、メキシコ国境のカベ建設を強行するんだ。修正予算案にはカベ建設費が13億7500万ドルしか入っておらず不満だったが、これに署名したことで国家機関の一部閉鎖は回避される。これで無党派層の支持も取り付けられるに違いない。

カベ建設を強行する姿勢を打ち出したことで、保守層の支持はさらに強まるだろう。民主党との関係は極端に悪化するだろうが、それは覚悟のうえ。非常事態宣言の発令を巡っては各地で訴訟が起こされ、最終的には最高裁の判断を待つことになるかもしれない。でも地裁で負けることはあっても、最高裁では勝てる。そのために、最高裁の判事に保守派を送り込んでおいたのだから。

政治的な緊張感が高まり、株価が下がっては困る。そこで北朝鮮や中国との関係改善を前面に打ち出し、株価を持ち上げる。その一方ではイランに対する締め付けを強化し、国際緊張のバランスを維持することも必要だ。また当分は議会との関係がこじれるから、政府債務の上限引き上げが難しくなるかもしれない。

議会が債務限度の引き上げを認めないと、夏前には政府の資金が枯渇する。すると国債の新規発行ができず、利子の支払いも出来なくなる。11年には同様の問題が起こり、アメリカ国債が格下げされた。しかし今回その危険性が高まれば、責任は大統領より議会にあるという判断になるだろう。議会が動かなければ、また非常事態を宣言する手もあるぞ。

       ≪18日の日経平均 = 上げ +381.22円≫
 
       ≪19日の日経平均は? = 下げ≫

Zenback

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