経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

浮き上がれない 中国経済 (上)

2024-01-11 07:30:30 | 中国
◇ ことしの成長率は4%台に低下? = 日経新聞が、中国経済を専門とする内外のエコノミスト25人に「中国のことしの成長見通し」を聞いた。その予測の平均値は4.6%、昨年の見込み5.2%を大きく下回る。またアメリカの調査会社ムーディーズは、4.0%まで落ち込むという予測を発表した。深刻な不動産不況が回復せず、住宅価格の下落に直面した個人が消費支出を抑制し始めたことが大きい。

統計局が発表した11月の主要指標をみると、鉱工業生産は前年比6.6%の増加。自動車の生産が伸びて、10月の4.6%増加を上回った。小売り売上高は10.1%の増加、これも10月の7.6%増加を上回る。そこで一見すると改善に向かったように見えるが、実は前年がゼロ・コロナ政策の真っ最中。その反動で、数字が跳ね上がったに過ぎない。専門家はその分を割り引くと、実態はむしろ悪化しているとみている。

固定資産投資額は1-11月で、前年比2.9%の増加。国有企業のインフラ投資は5.9%伸びたが、民間企業の投資額は0.5%の減少だった。特に不動産開発投資は9.4%も減少している。新築住宅の販売面積も7.3%減少した。住宅価格は主要70都市のうち59都市で下落を続けた。中国では個人資産の約3割が不動産。その価格が下落しているため、家計は節約志向に傾いている。

すべての根源は、不動産バブルだった。政府がそのバブル抑制に乗り出すと、こんどは不動産不況に。大手の建設会社が次々と経営不振に陥り、地方政府は財源となる土地の貸し出しが出来なくなった。それに加えて最近では住宅価格の低落から、家計が節約志向に転じ、景気をいっそう悪化させている。民間企業の22%が赤字経営に陥り、これが失業の増大を産むことになった。

                          (続きは明日)

        ≪10日の日経平均 = 上げ +678.54円≫

        ≪11日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

5%成長は 達成できるのか? / 中国

2023-10-21 07:52:44 | 中国
◇ 現状判断では「きわめて微妙」 = 中国統計局の発表によると、7-9月期の実質成長率は前年同期比の年率で4.9%だった。前4-6月期の6.3%から大きく減速。不動産不況に改善の兆しが見られず、個人消費や輸出も伸び悩んだ。地方政府は財源難で景気対策を打ち出せず、北京政府はもっぱら金融緩和で需要を喚起しようとしている。だが今後の見通しは厳しく、習近平政権が目標としている「23年の5%成長」を達成できるかどうか。微妙なところだ。

統計局が同時に発表した主要指標をみると、1-9月の鉱工業生産は前年比4.0%の増加。1-6月の3.8%増を上回った。自動車や電機の生産が伸びている。また1-9月の小売り売上高は6.8%の増加、1-6月の8.2%増を下回った。一方、1-9月の固定資産投資額も3.1%の増加で、1-6月の3.8%増を下回っている。特に不動産開発投資は9.1%の減少、1-6月の7.0%減より悪化した。輸出も7-9月では10%の大幅な減少となっている。

こうした統計をみて、専門家の見方は割れている。「不動産不況が続いていて、回復の動きが鈍い」という見方と「予想以上にいい数字が出た」という評価。どの数字を重視するかによって、判断が分かれるようだ。そこから習近平政権が目標としている「23年の5%成長」も達成できるかどうか、その見通しも2分している。

個人消費と輸出が拡大するかどうか。その一方で、不動産不況がどのくらい改善するか。この3点が今後を予想するうえでのカギになる。まず消費は雇用情勢の好転がないと伸びにくい。それには時間がかかりそう。輸出は欧米の景気とアメリカの規制しだい。こちらも、やや望み薄。不動産不況の改善も、遅々として進まない。となると「5%成長」の達成は難しい? でも正確に言うと、目標は「5%前後」だから、4.7%でもOKなのかもしれない。

        ≪20日の日経平均 = 下げ -171.26円≫

        【今週の日経平均予想 = 5勝0敗】     
   

想像を絶する 不動産不況 / 中国 (下)

2023-08-18 07:27:49 | 中国
◇ 融資平台の債務は1300兆円に = 融資平台とは聞きなれない名前かもしれないが、中国の地方政府が設立した一種の投資会社だ。中国の地方政府は法律によって債券発行以外、資金の調達が出来ない。そこで‟抜け穴”となるのが、この融資平台である。まず金融機関からの借り入れ。後ろに地方政府がついているから、いくらでも借りられた。また土地の使用権を業者に売って、資金を調達する。土地はすべて国が所有しているから、原資は無限だ。

北京政府の指示のもと、これまで地方政府はこうして調達した資金を使って、不動産の開発を推進してきた。それが高度成長を生み出す源泉ともなってきたわけだ。ところがバブルが崩壊、土地の買い手が見付からない。IMF(国際通貨基金)の推計によると、金融機関からの借り入れも累計1300兆円に達したという。これ以上は借りられない。

要するに資金不足。だから景気が悪くなってきても、財政面からの対策が打てない。仕方がないので、いまは人民銀行の金利引き下げに頼っている状態だ。しかし金利が下がったからと言って、住宅を買う人は限られる。一方、売りに出されているのはみな投機目的で購入された物件だから、金利とは関係なく早く売ってしまいたい。利下げの効果は、どうしても限定的にならざるをえない。

中国共産党は7月下旬に開いた中央政治局会議で「不動産の需給関係に重大な変化が生じた」と認めた。しかし習近平政権はまだ「ことし5%成長」という目標を降ろしていない。近く大規模な景気対策を打ち出すという推測も出ているが、真偽のほどは全く不明。仮に中国の成長率がゼロに近付けば、世界経済への影響もきわめて大きい。バイデン米大統領は「中国経済は時限爆弾、いまの成長率は2%程度」と述べている。

        ≪17日の日経平均 = 下げ -140.82円≫

        ≪18日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

想像を絶する 不動産不況 / 中国 (上)

2023-08-17 08:32:15 | 中国
◇ 主要な経済指標がいっせいに悪化 = 中国統計局は15日、7月の主要経済指標を発表した。それによると、鉱工業生産は前年比3.7%の増加で、6月の4.4%増加から悪化。小売り売上高は2.5%の増加で、6月の3.1%増加から悪化。固定資産投資額も1-7月は3.4%増加で、1-6月の3.8%増加から悪化。また失業率も5.3%で、前月より0.1ポイント悪化した。こうした経済の不振は、想像を絶する不動産不況が主たる原因。たとえば不動産の投資額は17か月連続で、販売額は25か月連続で減少した。

とにかくマンションなど住宅が売れず、価格がどんどん下落している。統計局の発表によると、新築住宅の販売面積は22年中に26.8%減少したあと、ことし1-6月も2.8%減少した。この結果、7月の新築住宅の販売価格は主要70都市のうち49都市で下落した。特に地方の中小都市では売れず、なかにはマンションの1戸を買ったら、もう1戸がおまけという例まであるという。「住宅価格は上がり続ける」という神話は、完全に崩壊してしまった。

日本のテレビ・ニュースでも、高層マンションが林立しながら無人の街となった地方都市の風景がよく映し出された。そこで思い出されるのが、経営不振に陥った不動産最大手の恒大集団だ。その恒大が発表したところによると、22-23年の2年間で最終赤字は5800億元(約11兆2000億円)になる見通し。加えてやはり最大手の不動産会社である碧桂園が、ことし1-6月に500億元の赤字を出したと発表した。

不動産会社の従業員は、昨年だけで10万人が解雇された。そして住宅の売れ行きが悪くなると、自動車や家具、家電などの消費も減退する。それがいま生産や小売り売上高、雇用などの経済統計を、いっせいに悪化させる結果となって現われているわけだ。しかも不動産不況は地方政府の財政を圧迫、財政面からの対策を打ち出す余裕すらなくなってしまった。事態はきわめて深刻である。

                      (続きは明日)

        ≪16日の日経平均 = 下げ -472.07円≫

        ≪17日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

失速する 中国経済 (下)

2023-06-22 08:07:20 | 中国
◇ 不動産不況で財源難に陥った地方政府 = 財政面から景気刺激策を実施する場合、中国では中央政府の指示に従い地方政府が実行する。そのときの財源は、地方債の発行・銀行借り入れ・土地使用権の売却など。このうち地方債と銀行借り入れの合計はすでに100兆元、GDPの8割に達している。そこで頼りは土地使用権の売却。中国の土地はすべて国有地なので、タネは尽きない。ところが不動産不況の影響で、使用権の需要がガタ減りしてしまった。1-4月の収入は昨年の55%に減少している。

このため財政面からの景気対策は遅れがち、もっぱら金融緩和に頼っているのが現状だ。しかし景気回復の足取りは重く、失業者の増大が政治的にも社会的にも大きな問題となっている。5月の失業率は5.2%で4月と変わらなかったが、16-24歳の若年層に限ってみると、なんと20.8%で過去最悪の水準に。昨年の大学卒業生は、文系の就職率がわずか12.4%。大卒 即 失業者となっている。

ユーロ圏の景気後退入りで、輸出も伸び悩んだ。5月の輸出はドル建てで前年比7.5%の減少。これも景気の足を引っ張った。一方、国内景気の回復鈍化で、輸入も7.9%の減少。その分だけ、日本を含む各国の中国向け輸出が伸び悩んだことになる。また産油国が減産しているにもかかわらず、原油の国際価格が上がらない。その最大の原因は、中国の需要が減退していることにある。

このように中国経済が不調に陥った影響は、世界経済に波及し始めている。しかも中国ではいま、コロナの大規模な再流行が起きているという報道もある。いずれにしても政府が目標とする「ことし5%」のGDP成長率は、達成が困難だろう。習政権は7月中に、本格的な景気対策を打ち出すという情報もある。それが、どんな内容で、どんな効果を挙げるのか。この夏の見どころである。

        ≪21日の日経平均 = 上げ +186.23円≫

        ≪22日の日経平均は? 予想 = 下げ≫  

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