経済なんでも研究会

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ラグビー と EU離脱問題

2019-10-26 08:20:57 | イギリス
◇ 理解しにくいイギリス人の二面性 = イギリスはラグビー・ワールドカップに、イングランド・ウエールズ・スコットランドの3チームを出してきた。アイルランドは北アイルランドとの混成チームだから、全国の地域がすべて出場したことになる。そしてイングランドとウエールズが、まだ4強に残っている。さすがにラグビー発祥の国だけのことはある。そのラグビーは、大英帝国の価値観を体現したもの。規則・公正・忍耐・団結を最重要視すると聞いた。

そのイギリスは、いまEUからの離脱を巡って大混乱のさなかにある。“秩序のある離脱”を目指したメイ首相が退陣。合意がなくても離脱すると息巻くジョンソン首相に変わったが、事態は一向に進展しない。10月31日の離脱期限を目前にしながら、議会は関連法案には賛成する一方で、審議を促進する動議は否決している。

ジョンソン首相はやむなくEUに対して3度目の期限延期を申し出たが、その手紙には署名がなかったというから驚く。そしてEUが延期を決めれば、解散・総選挙に打って出る方針だという。もし選挙に勝てば、強硬離脱に。負ければ、残留ということになるのだろうか。もちろん、議員の一人一人は信念を持って行動しているのだろうが、遠くから見ていると全体が空回りばかりしているように思えてならない。

そもそもは16年6月の国民投票で、離脱票が残留票をわずかに上回ったことから始まった。僅差ではあっても国民の意志が示されたわけだから、その時点でノー・サイドというわけにはいかなかったのか。仮に総選挙で残留派が勝つようなことがあれば、「イギリスはこの3年半、何をしてきたのか」と問われることになってしまう。いまのイギリス議会に求められるのは、崇高なラグビー精神なのではあるまいか。

       ≪25日の日経平均 = 上げ +49.21円≫

       【今週の日経平均予想 = 2勝2敗】    

“合意なき離脱”に猛進 / イギリス (下)

2019-09-06 08:39:36 | イギリス
◇ 強固な岩盤はイギリス人魂 = EUは現在28か国が加盟、5億1200万人を擁する世界最大の単一市場だ。イギリスも1973年に加盟した。しかし近年はEUが定めた数々の規制や、特に移民の受け入れ方針などに対する不満が高じ、16年の国民投票でついに離脱を決定した。その根底には、ドイツとフランスが主導するEUの支配下には置かれたくないというイギリス人の歴史的・民族的な感情が、深く作用しているように見受けられる。

いま最大の問題となっているのは、メイ前首相とEUが合意したアイルランド国境に関する“安全策”。アイルランド島で国境を接するEU加盟国のアイルランドとイギリス領の北アイルランドを、どう処置するか。この両者は同じ民族で、国境に税関や検疫所を設けることには、きわめて強い抵抗がある。そこで解決策が見つかるまで、北アイルランドをEU加盟国並みに扱うというのが、いわゆる“安全策”だった。

ところが領土の一部である北アイルランドを、EUの支配下に残すことは許されない。そのくらいならば、たとえ大きな経済的損失があっても、北アイルランドを含めた離脱。それが結果的に“合意なき離脱”になっても、やむを得ない。これがジョンソン首相の考え方であり、国民の半数が同調する基本的な理由だろう。

総選挙が10月14日に実施されるかどうかは、まだ不明。仮に実施されてジョンソン氏の与党が勝てば、イギリスは“合意なき離脱”に向けて突っ走るに違いない。ただ野党が勝っても、離脱の期限が延長されるだけ。すぐに同じことが、繰り返されることになる。イギリス人の気質からだけ判断すると、結局は秩序がなくてもイギリスはEUを飛び出すことになりそうだ。

       ≪5日の日経平均 = 上げ +436.80円≫

       ≪6日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

“合意なき離脱”に猛進 / イギリス (上)

2019-09-05 07:57:09 | イギリス
◇ ジョンソン首相の異常な執念 = 「何があっても10月31日には、EUから離脱する」と、叫び続けてきたジョンソン首相。これに対して「合意なき離脱には反対」の、野党を中心とする一大勢力。イギリスでは、この両派がEU離脱を巡って最後の攻防戦を展開しようとしている。残された日は少ないが、その行方はいぜん混とん。見通しは全く立たない。

ジョンソン首相の“奇策”が、大きな議論を巻き起こした。夏休みが終わってイギリス議会は、9月3日に再開された。しかしジョンソン首相は10日ごろに再び議会を休会し、10月14日まで開かないことを決定。これはこの3月に、野党が出した「合意なき離脱の回避」動議が成立し、メイ前首相が動きを封じられてしまったことの二の舞を避けるための異常な手段。「民主主義の自殺行為」だとか「憲法違反」の批判も巻き起こったが、ジョンソン首相はどこ吹く風と受け流した。

だが野党側も負けてはいない。3日に再開した議会に、すかさず「離脱の延期を政府に義務付ける」動議を提出。与党からも造反者が出て、あっさり可決された。この動議は法案化されて審議されるが、成立する可能性はきわめて大きい。その場合、ジョンソン首相は解散・総選挙に踏み切る方針だ。ただ解散の前倒しには、下院の3分の2の賛成が必要。現状では、結果を予測できないという。

仮に総選挙が行われるとすれば、これは“合意なき離脱”の是非を問う国民投票と同じことになる。もしジョンソン氏の率いる与党が勝てば、“合意なき離脱”の実行は確定的に。逆に野党が勝てば、“秩序ある離脱”を求めて、イギリスはまたまたEU側と交渉しなければならない。総選挙になるとすれば、投票日は10月14日になる予定だ。

                              (続きは明日)

       ≪4日の日経平均 = 上げ +23.98円≫

       ≪5日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

“混迷病”に憑りつかれた イギリス

2019-07-26 07:42:11 | イギリス
◇ ジョンソン新首相の登場でさらに重篤化 = イギリスの新首相に、ボリス・ジョンソン氏が就任した。メイ前首相が、EUとの間で合意した離脱協定案の議会承認を得られず辞任。あとを受けて保守党の党首選挙に圧勝、直ちに議会で首相に選出された。EU離脱の強硬派として知られ、首相就任直後の演説でも「予定された10月末の離脱を目指す」と言明している。

離脱協定案について、新首相は「EUとの間で再交渉はする」とも述べている。しかしEU側は、再交渉には応じない方針。もし再交渉がなく、協定案が修正できなければ「10月末に離脱」というのが、ジョンソン新首相の考え方だ。このため、一般には「10月末の合意なき離脱」の可能性が強まったと考えられている。

ところが問題は、そう簡単には割り切れないようだ。というのも野党の労働党は、ほとんどが離脱反対。与党内にも反対派がいるから、もし下院で投票ということになると離脱は拒否される公算が大きい。また野党がジョンソン首相の不信任案を提出した場合も、成立する可能性が高いとみられている。

こうした事態を防ぐため、ジョンソン首相は10月末まで議会を招集しないという奇襲作戦をとる見込み。これに対して野党側は、早くも休会の阻止法案を提出して可決された。どうにも事態は相変わらず複雑、混沌としている。収拾がつかなくなって、最後はまた国民投票という観測も出ているが、こんど投票すれば残留派が勝つという予想も。イギリスの“混迷病”は、むしろ進行したようにも思われる。

       ≪25日の日経平均 = 上げ +46.98円≫

       ≪26日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

テリーザ・メイ首相の 壮絶な最期

2019-05-29 07:47:15 | イギリス
◇ イギリスは混迷の極致に = イギリスのテリーザ・メイ首相が、とうとう降板に追い込まれた。これまでEU離脱を巡っていくつもの方策を議会に提案してきたが、ことごとく否決。最後は再度の国民投票案まで持ち出したが、これもダメ。地方選挙では保守党が大敗するなど、自分が率いる保守党内からも辞任を要求される始末だった。6月7日に党首を辞め、次期党首が決まりしだい首相の座も明け渡す。

保守党は7月中に次期党首を選出する予定。現在の下院で保守党は過半数を割っているが、それでも第1党だ。したがって次期党首が、首相に選ばれることは間違いない。最近の世論調査では、ロンドン市長と外相を務めたことがあるジョンソン氏が最有力。EU離脱の強硬派だから、この人が首相になれば「合意なき離脱」の可能性が強くなるだろう。

それにしても、イギリス議会は“解のない方程式”だ。大別して何があっても離脱する強硬離脱派、EUとの経済関係は維持しながら離脱する穏健離脱派、それに残留派の3グループに分けられる。しかし、どんな具体案が出されても、このうちの2派が反対するから、まとまるはずがない。誰が首相になっても、同じなのではないか。

とにかく「離脱はしたいが、アイルランド国境問題は現状維持」という全く矛盾した発想の議員が多すぎる。これでは解決のしようがない。首相の問題ではなく、議会が異常だと言ったらイギリス人は怒るだろうか。矢尽き刀折れて退陣したメイ首相に拍手を送りたいと思うのは、日本人的な感覚に過ぎるのだろうか。

       ≪28日の日経平均 = 上げ +77.56円≫

       ≪29日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

Zenback

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