どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

思い出の短編小説『見返り美猫』(2)

2022-08-16 00:39:22 | 短編小説
 思ったより観念するのが早いやと、万吉は内心ほくそ笑みながら内儀の顔を盗み見た。恐怖と隣り合わせの状況がかえって欲情を高めるのか、最後の嗜みをかいくぐって女の口から熱い息がもれた。 万吉は腕の重みを支えながら、一方の手で着物の裾を割った。どこへ横たえようかと行李や籠で狭められた板張りの床を目で探っていた。 獲物に体を重ねようとしたとき、ぴったりと閉めておいた薬庫の引き戸がカタカタと揺すられ . . . 本文を読む
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