どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

思い出の短編小説『松原遠く』

2022-12-03 01:46:15 | 短編小説
「敏彦さァ、あそこに一本だけ立っている松はなんで一本だけなんだろうねえ?」 九十二歳のヨシ婆が、眼脂のたまった瞼を眇めながら孫に訊いた。 テレビ画面には被災した陸前高田の海岸が映っていて、多くの人に愛されてきた高田松原が跡形もなくなくなっている惨状を目にしているところだった。 跡形もないという言い方が当たっているのかどうか、津波が攫って行ったあとの光景はさっぱりしすぎている。 一本残った松 . . . 本文を読む
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