どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

芭蕉の名句㉒ 『しばらくは花の上なる・・』

2025-03-15 00:03:00 | 俳句

「しばらくは花の上なる月夜かな」

 

関東地方は3月下旬にはサクラの開花予報が出ている。

高めの気温が続けば4月を待たずに満開になる。

千鳥ヶ淵や北の丸公園は例年花見の客でごった返す。

 

芭蕉の目の前にはサクラだけがある。

今を盛りと咲き誇る桜の花を上空から月が照らしている。

季節的にまだ寒さを感じる夜更け、月光を受けて満開の櫻花が輝いている。

見る者は芭蕉ただ一人。

 

ワビ-サビの極致である。

桜花が輝いているのは月が上空にある間だけ。

ほんのしばらくの間は我が世の春だが、やがて月が傾けば輝きも失われる。

 

〈人生の栄華もつかの間のことでいずれ凋落する〉・・芭蕉がそんな感慨を抱いたとは思えないが

自然が織りなす風景は人の心をおのずから無常観に導く。

日本人なら誰もが感じるであろうワビ-サビの文化である。

 

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