こちら(三浦半島)では滅多に雪は積もらない。その雪が積もった日の事は、逐一覚えているほど記憶に刻まれている。
小学校低学年のころ、大雪が降って嬉しくてたまらず外で飛び跳ねて遊び、手にした雪の純白を今しも口に運ぼうとしたとき、母の声がした。
「決して食べたりしてはいけないよ、放射能で汚れているからね」という厳しい叱責だった。
第五福竜丸のことが新聞に大きく報じられ、子供心にも目に見えない放射能に恐怖を感じていたころの話である。
ひどく気落ちして、雪のまばゆい白さを恨めしく眺めたあの日。
それでも、近所に咲いたチューリップの色鮮やかな赤・白・黄色の花が、雪の中から見えたメルヘンチックな光景は忘れがたい。
雪景色のロマン、その下の過酷。
高校生のころに降った雪・・・まさか学校へは行かれまいと雪道を眺めていたら、肩をぽんと叩く人がいた。驚いて顔を見ると隣のクラスのNさんである。彼女の家からは、すでに4キロくらいは歩いて来ている。学校まではさらに3キロはあると思うのに、異に解さないという風な感じで、にっこり笑っていた。
結局、わたしも学校に向かうことになり、途中クラスメートも交えて三人で辿り着いた時には、すでに休校の張り紙が・・・連絡網も何もないころの話である。
教室で一休みしていると、突然歓声が上がった。S君の登場だった。S君は三浦三崎の人、三浦三崎から学校までは好天でも歩き徹すには余程の覚悟がいる距離。それをこんな日に!
NさんもS君も立派過ぎて到底わたしの及ぶところではない。
ああ、わたしはあのころから頑張りの足りない人間だった。自分の事ながら、本当に残念な人間であるわたしの末路も・・・補える努力(余力)は、あるだろうか。
雪の日の思い出は尽きない。
小学校低学年のころ、大雪が降って嬉しくてたまらず外で飛び跳ねて遊び、手にした雪の純白を今しも口に運ぼうとしたとき、母の声がした。
「決して食べたりしてはいけないよ、放射能で汚れているからね」という厳しい叱責だった。
第五福竜丸のことが新聞に大きく報じられ、子供心にも目に見えない放射能に恐怖を感じていたころの話である。
ひどく気落ちして、雪のまばゆい白さを恨めしく眺めたあの日。
それでも、近所に咲いたチューリップの色鮮やかな赤・白・黄色の花が、雪の中から見えたメルヘンチックな光景は忘れがたい。
雪景色のロマン、その下の過酷。
高校生のころに降った雪・・・まさか学校へは行かれまいと雪道を眺めていたら、肩をぽんと叩く人がいた。驚いて顔を見ると隣のクラスのNさんである。彼女の家からは、すでに4キロくらいは歩いて来ている。学校まではさらに3キロはあると思うのに、異に解さないという風な感じで、にっこり笑っていた。
結局、わたしも学校に向かうことになり、途中クラスメートも交えて三人で辿り着いた時には、すでに休校の張り紙が・・・連絡網も何もないころの話である。
教室で一休みしていると、突然歓声が上がった。S君の登場だった。S君は三浦三崎の人、三浦三崎から学校までは好天でも歩き徹すには余程の覚悟がいる距離。それをこんな日に!
NさんもS君も立派過ぎて到底わたしの及ぶところではない。
ああ、わたしはあのころから頑張りの足りない人間だった。自分の事ながら、本当に残念な人間であるわたしの末路も・・・補える努力(余力)は、あるだろうか。
雪の日の思い出は尽きない。