『心のまなざし』
不穏に見える空は、奇妙な彩色で恐怖さえ感じるような気色の悪さを漂わせている。
建屋は6階建てだが倒壊を免れないようなバランスの悪さで、物理的にはあり得ない構造である。
これをもって『心のまなざし』であるという。
遠近も理に外れ、下階より上階が大きく、重心も下階に集中していない。まさに心(精神的/内面)の凝視である。
《真理》の象徴である球体も建屋の後方に遠く位置して見えるのみ。
わずかに見える赤い屋根、屋根に見える突起(煙突?)部分には更に赤い炎のような暗示がある。これは情熱、闘志と理解していいかもしれない。燃えているが控えめに隠した闘志である。
外を見ることは可能だけれど、外からは覗き見られないという警戒、窓はすべて閉ざされている。玄関(入口)も小さく、人が入ってくるのを拒むような感がある。
危機感を孕んだ構造、真理を究めようと建屋(視野)を高くしている。しかし、真理を内包しているのか、真理から遠ざかっているのか不明である。
マグリットの告白であり、自嘲である。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)
カンパネルラは、その紙きれが何だったか待ち兼ねたといふやうに急いでのぞきこみました。ジョバンニも全く早く見たかったのです。
☆詞(ことば)で接(つなぐ)と、化(形、性質を変えて別のものになる)の態(ようす)が見えてくる。究めると、然(状態)は双(二つ)現れる。
それは、古い、価値のない手紙かもしれない。おなじように無価値なたくさんの手紙のなかからいいかげんに引きぬいたものかもしれない。年の市で運勢占いのおみくじを、カナリアを使って任意に引かせるのとおなじようないいかげんさで、引っこぬいたものかもしれない。
☆それは古い価値のない書き物かもしれない。先祖の価値のないたくさんの書き物のなかから無作為に引いたものかもしれない。先祖の悪党を使ったのと同じくらいの無謀さで引き抜いたのかもしれない。