今さら何を望むべくもない貧しい生活で充足しており、すでに70歳を目前にして先の見えてきた人生にこれ以上の破綻など無いように十分気をつけ、又祈るだけである。
いろんなことがあったけど、すべて忘れたい。
真っ白な気持ちで欲も得もなく歩いていく。
と言うと、少し言い過ぎかもしれない。(あれも食べたい、これも食べたい)(あんなものを作ってみたい)など、日常的な意欲を失ったわけではない。
愚鈍なうえ記憶機能の消失している現在、そういう劣化状況を正しく把握し、地味で慎ましい日常を心掛けている。
願うのは家族の健康のみ…みんな元気でいてね!
どうか、このまま小さな平穏がつづきますように・・・♪どうぞ~このまま♪ (いつか倒れるその日まで)
『すみれの歌』
石化した二人の紳士、岩だらけの地上、岩に置換された空(空間)。それきりの沈黙。
これが『すみれの歌』のすべてであり、ポンペイの遺跡で発掘された人の復元のようでもある。
ビックバンから始まったとされる宇宙、燃える隕石の集合体に奇跡的に存在した水によって発生した生物(人類)、人類の進化による今日・・・長い時間の歴史である。
そして時は止まらない。どこまでもどこまでも未来永劫、宇宙は変容を繰り返しながら予測不能な展開をしていくに違いない。
超未来人の生活形態は分からないが、ある日奇跡的に残存した大昔(現代)の化石(あるいは空洞)を発見する。
(この不明なものは何だろう)
微量に残った現代の片鱗から相対的な景色を復元すると、何やら慎ましくも誠実な人物像が浮上してきたという図ではないか。
わたし達が長いと感じる歴史も、超未来人にとっては同時代であり、地質の底にスミレほどの生気と鼓動を残した人物の発掘を見たのではないか。
人という精神を持つ有機体、岩という無機、空という透明な物質。そのすべてが同質に変容した博物誌の一ページから、静かな『すみれの歌』が聞こえるような気がする。
(写真は『マグリット』西村書店刊より)
ジョバンニは俄かに何とも云へずかなしい気がして思はず
「カンパネルラ、こゝからはねおりて遊んで行かうよ。」とこはい顔をして云はうとしたくらゐでした。
☆我(わたくし)は化(形、性質を変えて別のものになる)を運(めぐらせている)。
鬼(死者の魂)の詞(ことば)で、幽(死者の世界)の考えの願いを運(めぐらせている)。
「あなたは、ほんとうに大事な点がわかっていらっしゃらないわ」と、オルガは言った。「あなたがおっしゃったことは、みんな正しいかもしれません。だけど、ほんとうに重要な点は、アマーリアが縉紳館へ行かなかったということですわ。
☆「あなたは決定的なことが分かっていない」と、オルガは言った。「すべては正義かもしれません。けれど、決定的なことは、アマーリアが大軍の暈(死の入口)へ行かなかったことです。