続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット『魔術師の共犯者たち』

2016-06-16 07:06:23 | 美術ノート

 あからさまな女体が捕縛されたように網の中に納まり、上方(肩から上、頭部)は金色の筒に隠れて見えない。一方手前の筒な中からは女の上体(肩から上、頭部)が出ている。あたかも一人の女を魔術によって切断したかの印象を与える。
 背景の山は淫靡さえ見える盛り上がりを見せているが、不毛の山肌であリ、空の暗さは不吉な予兆を孕んでいる。
 木目の見える床板、ベランダのような囲い、その外側には赤いカーテン、女の背後には更衣の囲いがあり、それぞれの設えは隠蔽の手段の道具立てである。

 果たしてここに屋根(天井)はあるのだろうか。焦点は女体の陰部にあるようだが、それぞれの設えは平面的であり、どこから吊り下げられているのかが分からず重力(物理的状況)を疑うほかない。

 拘束の女の裸体は、女の尊厳を著しく犯している。切断されたかに見える女の上部は後ろ向きであり、眼差しは裸体の半身を凝視できるので、見ているとも無視しているともとれる位置にある。つまり自分が自身を見ている可能性を含んでいるということである。

 この残酷無比な位置関係の提示、次の瞬間、即、筒が落下し女体を隠すのだろうか。隠す(見せない)設えは用意されているが、明らかに性的な見世物であることは間違いない。

 この屈辱、この憤怒は沈思している。
 しかし、これを見る鑑賞者は、これを仕掛けた魔術師と共に共犯側に立つことは必至である。


(写真は『マグリット』西村書店刊より)


『城』2347。

2016-06-16 06:27:51 | カフカ覚書

かりにあの子が縉紳館へ行っていたとしても、わたしは、むろん、あの子の行動を是認したことでしょう。しかし、あの子がいかなかったのは、じつにりっぱなことでしたわ。


☆彼女が大群の暈(死の入口)へ行ったとしても、もちろん辛うじて正当化したでしょう。でも、彼女が入らなかったのは正しいことでした。