『秘密の競技者』
野球をしている男たち、そして箱状の開いた扉から姿を見せている口と下半身を皮のようなもので覆われた女。正しく区画された領域の内外に林立するポールは、枝を伸ばし花を咲かせている。
いかにもあり得ない光景である。
オサガメが泳いでいるところをみると、ここは海中であり、あきらかに異相である。
異相ということは現世(物理的法則の通用する自然界)ではなく、空想(the other world)の世界の展開である。
手前左のポールから突き出た枝はオサガメの後ろに回っている。区画の線条が直線であることから、空間の歪みを疑わないが、明らかにこのエリアの空間は不条理である。
野球をする男たちの姿があるが、画面の向こうにも人がいるはずで、二人の男+一人以上の男は必至である。閉じられた女は若くして逝った母であると想定するならば、男三人は息子であると推定される。
『秘密の競技者』とは、亡き母の墓前に遊ぶ息子たちの姿ではないか。
ここに物理的法則はなく、解放された世界の異相の自由があるばかりである。
(写真は『マグリット』西村書店刊より)
「どら、」カンパネルラもそらを見ました。そのときあのやぐらの上のゆるい服の男は俄かに赤い旗をあげて狂気のやうにふりうごかしました。
☆現れる章(文章)には、複(二つ)の談(はなし)がある。
我(わたくし)の釈(意味を解き明かす)記は、教(教え導く)記である。
もしかしたら、使者を出すなりすぐに帰ってしまっていたかもしれません。それどころか、これは、おおいにありそうなことですわ。お城の人たちの気まぐれは、ほんのそのときかぎりなんですから。
☆たぶん、同じ小舟を放ち、小舟は走り去っていたのかもしれません。それどころか、これはおおいにありうることです。(死へ向かう)大群の機嫌は一時的なものですから。