円形の和紙に貼りつく赤きひれ掬われしのち金魚は濡れる
円形、和紙、赤、金魚、どれも美しいものを連想させる。明るく綺麗、いかにも日本の風情が漂う光景といった感であり、掬われしのち、なども(救われし)の語感が浮かぶほど。
美しい響き、情緒風情のしっとりとした光景がただよう。
しかし、金子みすゞの詩(大漁)を思い浮かべるまでもなく、ここには金魚にとって悲惨かつ厳しい喘ぎがあると言っている。金魚は濡れる、水の中では生き生きと泳ぐ金魚も相を違えた円形の和紙に貼りついては瀕死、金魚は泪していると歌っているのである。
何とも言えない調べの美しさ・緊張感・リズムの中に静かに漏れる命を問う血の叫び。この矛盾は見える人にしか見えない。