夕暮れの梅林行けば木の影と人の影とがすり変りたり
夕暮れの梅林。さほど高くない梅の木の連立、夕暮れ、影を認めるほどの時刻である。(ならばマジックアワーの瞬間にも近いかもしれない)
木の影が人の影のようだ、と言うのではなく、(すり変わりたり)と言っている。
相が変わる、抽象的な空気の層の変容。しかし、物理的変化ではなく、精神的変容・・・梅の木のうねり、この曲線に人の影を見る。確かにわたくしの心を強く刺激してやまない、心の底に揺れる幻影が立ち現れたのだ。
静かに暮れていく梅林のなか、わたくしは愛しい人影に遭遇した。
この秘かな喜悦が胸に去来した梅林の夕暮れである。