1-5-8 振動尺試作Ⅱ
斜めにカットされた切り口には接続を思わせる突起があり、長い直方体は規則的に刻まれた線条が見える。これらは台(地上)にあり、前後に抑え金のようなものがある。
バラバラに離散するイメージがあるが決してそうならず固定は原則かもしれない。規則的、乱れのない並列は《時間》を想起させる。時間には振動の波は無いのだろうか、少なくとも地球上では歪みの報告はない。この作品を時間と限定したわけではないが、時間に質量があるとは聞いていない。
この物は確かに質量をもって提示されている。
時間の中に凝縮された出来事、歴史は、時間の中に留まり、決して列を乱すことはない。しかし、時間を抑制するものなどあるだろうか。
この物(作品)は沈黙し決して語ることはないが、鑑賞者に訴えるものがある。その具体的な意味を感知できないが、無抵抗であり拡散がない。ストレートにひたすら接続を余儀なくされるもの、という印象である。
作家の説明はない、しかし体感した世界観(空気)を質量ある形に置換しようと試みる静謐な吐息、あるいは迫力(エネルギー)を見逃すことができない。
写真は若林奮『飛葉と振動』展より 神奈川県立近代美術館