Ⅰ-4-4〔無題〕Untitled
名づけようのない感覚、空気感、しかし作家はそれを体感している。
作品は《青》であり、海あるいは空をイメージさせる。いくつかの溝は総て人工的、人為の形であり、ありのままの自然ではない。
端には差し込みのスイッチらしき、接続がある、どこへつなげば、どう変化するのだろう。表面は平らであり安定しているように見えるが、半分は下方が浮いている。
人為的な世界、高さはなく掘削された溝があるばかりであるが、これ以上の深さは望めない危うさがある。
安定に見えるが不安定である、これらは何だろう。人間が築いている世界はより高くを志向しているが、実はより低く行き着く先の未定な暗渠かもしれない。
端にあるスイッチは不気味である。建設的な明るい未来を破壊するような、崩壊を予期させるような大きな脅威を孕んでいる。使用不可、決して入れてはいけないスイッチを作ってしまった世界の脅威。
海の青さ、空の青さは不変であるが、人類の創意がそれを阻む日を抱えている。
人類はその叡智をもって世界(青の平穏)に墓穴を掘っているのではないか、という静かなる疑惑である。
写真は若林奮『飛葉と振動』展より 神奈川県立近代美術館