中国中央銀行が、人民元の基準を1ドル=7.9982元へ0.0100元引き上げを決めた。
米財務省は先週、世界の貿易不均衡の元凶と中国を批難した。しかし、『為替操作国』のレッテルをはることは巧みに避けた。中国のプライドを尊重したことが功を奏して、結果として、わずかとはいえ、中国の自主的な切り上げを促したというのであろう。
中国は2005年7月に2%切り上げ1ドル=8.11元と決めた。その後わずかずつ元高が進んでいた。中国は1994年1月に人民元レートを5.8元から8.7元に切り下げて以来の1ドル=7元台であると日本のマスコミも歓迎しているかのように見受けられる。
米ドルの主要通貨に対する値下がりが続いている。ドル安が進めば米国からの輸出が有利になり、逆に米国内の物価は割高になり輸入にブレーキをかける。元切り上げは対中国で、2005年、米国は貿易赤全体の26%の2,020億ドルを出したから落とせない条件だった。
ブッシュ大統領の支持率低下で各州で共和党が苦戦を余儀なくされる。先に開かれたG7の会合でドル安に向けての種まきが行わはれた。今回の人民元1ドル=7元台は蒔いた種からささやかながらも芽が出たケースとしてホワイトハウスは大いに喧伝するであろう。
スノー米財務長官は5月17,18両日議会証言を予定している。スノー長官は米国は強いドルは国益だと繰り返すだろう。しかし、G7後の1ドル=117円から1ドル=109円台までの一挙のドル安も無視、事実上のドル安の現状をホワイトハウスは容認したと言える。
中国はわずか1ドル=0.0100元動かし1ドル=7.9976元へ心理的な壁と見られた8元割れを演出して見せたところ、「1ドル=7元台はじめて」と日本の新聞の見出しが躍った。
この程度の人民元切り上げでは対中国の膨大な貿易赤字は解消しない。わかりきった話である。しかし、相場の世界では人民元はさらに切り上げられるとして、対円でのドル安を催促するから、実に厄介だ。
自国の通貨が値下がりすることは決して喜ばしいことではない。ドル暴落は輸入インフレを通じて利上げを催促する。だからこそホワイトハウスは口を酸っぱくして強いドル堅持を繰り返す。急激なドル安進行はFRBの利上げ打ち止めにブレーキをかけるだろう。
前門の虎(ドル安)後門の狼(利上げ)。なかでも2006年は米中間選挙の年である。為替相場は安定が第一義であるにもかかわらず、為替が選挙の争点に利用され、副産物として為替相場が上下思わぬ方向に大きくぶれることだけはなんとしても避けて欲しい。(了)
江嵜企画代表・Ken
米財務省は先週、世界の貿易不均衡の元凶と中国を批難した。しかし、『為替操作国』のレッテルをはることは巧みに避けた。中国のプライドを尊重したことが功を奏して、結果として、わずかとはいえ、中国の自主的な切り上げを促したというのであろう。
中国は2005年7月に2%切り上げ1ドル=8.11元と決めた。その後わずかずつ元高が進んでいた。中国は1994年1月に人民元レートを5.8元から8.7元に切り下げて以来の1ドル=7元台であると日本のマスコミも歓迎しているかのように見受けられる。
米ドルの主要通貨に対する値下がりが続いている。ドル安が進めば米国からの輸出が有利になり、逆に米国内の物価は割高になり輸入にブレーキをかける。元切り上げは対中国で、2005年、米国は貿易赤全体の26%の2,020億ドルを出したから落とせない条件だった。
ブッシュ大統領の支持率低下で各州で共和党が苦戦を余儀なくされる。先に開かれたG7の会合でドル安に向けての種まきが行わはれた。今回の人民元1ドル=7元台は蒔いた種からささやかながらも芽が出たケースとしてホワイトハウスは大いに喧伝するであろう。
スノー米財務長官は5月17,18両日議会証言を予定している。スノー長官は米国は強いドルは国益だと繰り返すだろう。しかし、G7後の1ドル=117円から1ドル=109円台までの一挙のドル安も無視、事実上のドル安の現状をホワイトハウスは容認したと言える。
中国はわずか1ドル=0.0100元動かし1ドル=7.9976元へ心理的な壁と見られた8元割れを演出して見せたところ、「1ドル=7元台はじめて」と日本の新聞の見出しが躍った。
この程度の人民元切り上げでは対中国の膨大な貿易赤字は解消しない。わかりきった話である。しかし、相場の世界では人民元はさらに切り上げられるとして、対円でのドル安を催促するから、実に厄介だ。
自国の通貨が値下がりすることは決して喜ばしいことではない。ドル暴落は輸入インフレを通じて利上げを催促する。だからこそホワイトハウスは口を酸っぱくして強いドル堅持を繰り返す。急激なドル安進行はFRBの利上げ打ち止めにブレーキをかけるだろう。
前門の虎(ドル安)後門の狼(利上げ)。なかでも2006年は米中間選挙の年である。為替相場は安定が第一義であるにもかかわらず、為替が選挙の争点に利用され、副産物として為替相場が上下思わぬ方向に大きくぶれることだけはなんとしても避けて欲しい。(了)
江嵜企画代表・Ken