名倉誠人コンサ―ト風景
江嵜企画代表・Ken
マリンバ奏者、神戸生まれで、世界で活躍中の、名倉誠人さんの演奏会が、神戸凮月堂地下ホールで開催され、楽しみにして家族と出かけた。名倉さんは、3月6日、青山財団(京都市)よりバロックザール賞を受賞された。開演午後1時半までにほぼ100名満席近い盛況だった。会場の様子をいつものようにスケッチした。
今回の催しは、KOBEミュージックウォーク2010協賛事業で、三宮(ポピュラー)、元町(クラシック)、ハーバーランド(ジャズ)の商店街とその周辺地域で開催され、「歩み(ウオーク)」をテーマにしていると事務局の説明があった。
前半は、J.S.バッハ作曲「無伴奏バルティータ第二番ニ短調」をサイズがマリンバの半分以下のヴァイブラフォ―ン、休憩15分を挟んで、後半は、マリンバによる、アイルランド民謡「柳の園にて」(Down By the Salley Gardens)(W.B.イエ―ツ作詩)、一時間半を堪能した。
休憩時間に凮月堂特製のお菓子とお茶が用意された。今回のイベントは、「光・花・音楽」がテーマである。お菓子の上半分は透き通った春の「光」、中の赤い「花」は,今年震災15年の神戸だから、命の大切さをイメージした。「音楽」は名倉さんのマリンバですと事務局の方が説明した。
後半の「柳の園にて」のトークと演奏が特によかった。参加者に英文の詩が配られた。詩は2節各節4行に分かれている。英文をゆっくり読み上げたあとで、二人の違ったタイプの歌い手が歌うDVDを会場に流した。
同じ詩でありながら、歌い手や歌い方が異なると聴き手は全く違った印象を受けることを実感した。
楽器の演奏には当然、歌詞がない。そこで4本のスティクに託して、違う和音を加える。さらに対旋律を加えたと解説した。不思議にも、演奏を聞きながら、詩の一行一行イメージしながら聴くことが出来た。
詩がなかなか良かった。”Down by the salley garden my love and I did meet(柳の木の茂る辺りで、僕と彼女は出会った」でその詩は始まる。「彼女の雪のように白い足、彼女は言った「恋は焦らず柳の葉が茂るように」
”But I ,being and foolsh,With her would not agree(だけど若く愚かだった僕には、それがわからなかった」で第1節は終わる。アイルランドで昔から口ずさんでいた言葉を元にイエ―ツが詩に仕上げたそうだ。
「川のほとりの草原で、たたずむ僕と彼女、僕が寄せた肩には、彼女の雪のような白い手、「自然に生きればいいわ 川の堰に草が生えるように」、だけど若く愚かだった僕は、今はただ涙に暮れるばかりだ」で終わる。
詩を聞いたあと演奏を聴いた。こんな形の演奏会を初めて体験した。「ただ演奏して終りたくないと常々思っています。色々なことを知れば知るほど一つひとつの音楽の味合いは益々深くなります」と名倉さんは話された。印象に深く残る演奏会であった。(了)。