「ユーロ債売却を検討しているとの一部メディア報道は根拠がない。」と27日、中国政府が正式に発表した。投資家に安心感が広がり、NYダウは、前日比284ドル、2.9%高、10,258ドルで取引を終了した。ハイテク株指数ナスダック、S&P500平均指数ともに3%強値上がりした。ティファニ―7.5%高、BP7% 高、金融株、資源株高が値上がりをリードした。
NY外国為替市場では、中国発言とスペイン議会が追加財政赤字削減計画を承認したとのニュ-スを受けて、ユーロが対ドルで買われ、1ユーロ=1.2193ドルから1.2360ドルへ約1%値上がりした。NY原油(WTI)先物相場は、前日比バレル3.04ドル高、74.55ドルへ値上がりした。リスクマネーへ再び資金が還流し始めたと今朝のWSJ紙は書いていた。
「腹立ちまぎれに自分の不利なことをしでかした(You can’t cut your nose to spite your face)」ことに中国が気付いたのだと、と投資会社、Hartford,シニアマネジングディレクター、Bob Froehlichさんは話したとWSJ紙は紹介している。
冒頭にある一部メディアの報道と言うのは、26日付けの英フィナンシャルタイムズ紙(電子版)の記事である。「中国が保有する外貨を管理している国家外貨管理局は、ギリシァ、アイルランド、イタリア、ポルトガル、スペインの債券保有に懸念を示している。これは大きな政策転換である。」と書いた。
この報道を受けて、OECDの世界経済見通しの上方修正を歓迎してはじめご機嫌で上げていたNYダウは引け間際に急落、69ドル下げる引き金となった。一方、ユーロは一時、1ユーロ1.21ドル、1ユーロ=108円台まで急落した。中国情報に振り回された結果である。
クリントン、ガイトナーと中国に乗り込んで人民元切り上げ、そのた諸々の米中間の懸案解決を意気込んだ。しかし、現実はどうだったか。北朝鮮問題もしかり、昨日、今日のNYダウの急落急騰を見ていても、中国抜きにしては何事も進まない実態をさらけ出した。
中国は3月末時点で2.4兆ドル(90円換算:216兆円)の外貨を保有している。このうち70%が米ドルである。中国は昨年来の米ドルの値下がりで米ドルを減らしてユーロなどへシフトしていた。フィナンシャルタイムズによれば、中国は6,300億ドル相当(外貨保有全体の26%)のユーロ圏債券を保有している。
ガイトナー米財務長官はドイツへ飛んで、ドイツ財務相と会談した。ドイツとアメリカの金融政策をめぐるすり合わせはうまく進まなかったようだと今朝BBCが流していた。
欧州の金融不安は始まったばかりである。辺野古で手一杯の日本という国が情けない。(了)