拇趾内転筋と短母趾屈筋
機能とは、もののはたらきのことですが、人体で言うと各部の主な働きで、手なら手の、足なら足の働きがあり、それら特有の動きを機能というわけです。
そして、それらと関連する部位にも機能があるので、治療を考える時に、部分の機能だけを考えるのではなく、関連している部分の機能も考えます。
それが「連携する機能の調整をする」ということです。
例えば、外反拇趾を考えますと、基本的に部分的な筋の過緊張が起るので拇趾が外旋するので、対象療法で治療するならば、その筋肉の過緊張を取り去り、拇趾の動きを良くすることです。
つまり、機能を回復させるわけです。
ところが、その状態が長く続くと、器質的(構造的)な症状になる可能性が高くなり、治しにくくなります。
では器質とは何かということになりますが、器質とは、解剖学的な性質のことで、本来は丸い形状のものが四角のように変形してしまうことです。
現実的には、◯が□になることはありませんが、骨折などをすると、その形態は明らかに変わってしまいます。
ですから我々が治療をするときには、機能的な治療と器質的な治療を考えます。
たとえば、先ほどの外反拇趾の治療で、機能的な治療なら、過緊張している筋肉の緊張をとってあげれば症状は治まるので、拇趾内転筋や短拇趾内転筋に、そっと指を添えているだけで症状を治めることができます。
ところが、それは対象療法になるので、症状を一時的に消すだけの治療になり、すぐに再発してしまうのです。
これでは根本的に治ったとは言えませんので、その症状が起ったルーツを辿るわけです。
そこは東洋医学に便利な理論がありますので、それを引用すると、「筋=肝」となり、根本的に肝が関係していることがわかります。
なので、肝の治療も加えるわけです。
つまり、器質的な症状にならないように予防的な治療も加えるわけです。
外反拇趾の器質的な症状とは何かと言いますと、私は、中足趾節関節が脱臼して、趾節骨が飛び出した状態と説明しています。
元の正常な形ではないからです。
先日、「前に教えてもらった外反拇趾の治し方をもう一度教えてほしい」という方が来られました。
話によると、「あの方法をしていると痛みが出ないのです」と言う。
拇趾内転筋や短母趾屈筋に軽く指を当てておく方法です。
しかし、私は納得できませんでした。
何故なら、それはあくまで対象療法だからです。
ですから、教えるには教えたのですが、「でもそれは機能をちょっと調整しただけですので、根本の肝臓ケアのことも考えなければいけませんよ」と付け加えておいた。
肝臓のケアとは、日々の生活では、
① 過度の飲酒を避ける
② 新薬を摂り過ぎない
③ 甘い物を摂り過ぎない
④ おかずを食べ過ぎない
⑤ 油モノを摂り過ぎない
等々になります。
それ以外にも肝臓への負担を減らす方法はあるのですが、どうもこの生活習慣の話をすると嫌われるようです。(笑)
それならそれで治療に来てもらえばいいのですが、私は気が弱いのか、「頻繁に治療に来なさい」と言うことができないのです。(泣)
今回の臨床実践塾では、五十肩の治療法を公開しようと思いますが、五十肩も機能と器質の角度から治療法の検討を進めていきます。
例えば、機能的なものなら、上腕を捻るだけで治まる場合もあるのですが、こじらせたり、年月が経っている場合はそうはいきません。
そのような場合は、脊椎や肋骨から整えていかなければならないのです。
鍼を使うと早いのですが、鍼が嫌いな人には鍼を使わずとも治療することができますので、今回は鍼を使わない方法での治療法を説明したいと思います。