日本人ブラジル移住110周年記念行事
江嵜企画代表・Ken
ノンフィクション作家、山根一眞氏を講師に迎えて、「日本人ブラジル移住110周年記念講演会が、日伯協会主催、兵庫県、神戸市後援で4月28日(金)13時15分から神戸海洋博物館講堂で開かれ楽しみにして出かけた。会場は140名を超える参加者で満席だった。会場の様子をいつものようにスケッチした。
講師の山根一眞氏は、1972年から20回以上、ブラジル各地、特にアマゾン地方の取材を続けてきた。会場正面に写されたアマゾンの様子を背景に「24歳ではじめてブラジルを訪れ、いま、70歳になりました。アマゾンとは何か。未開の地です。だが、人類にとって重要な場なのです。」と話を進めた。
「1985年に金がアマゾンではじめて見つかった。8万人が殺到した。今は湖です。そのとき60トンの金が出ました。次に「黒い金」が採れました。ゴムのことをそう呼びました。ゴムはブラジルに富をもたらした。
ゴムの需要は海底ケーブル被覆用として伸びた。さらに自動車タイヤ用として拡大した。しかし、ゴムの種が、シンガポール、スリランカへ持ち出され、現地でプランテーション栽培された結果、アマゾンのゴムは衰退の道を辿った。
ゴムは衰退したが、アマゾンではコーヒー豆を入れる袋の材料としてジュートの生産が始まった。このジュート(黄麻)栽培と「黒いダイヤ」と呼ばれた胡椒がある。共に日本人が移民とともに東南アジアから持ち込んだものである。莫大な富を生んだ胡椒も病害で壊滅的打撃を受けた。
その時アマゾン先住民の生活をヒントに「アグロフォレストリー(森林農業)」を生み出した、日本人、坂口さんの存在なくして語れない。
坂口さんは「人間の命は限りがある。しかし、自然を通じて人間の命は永遠に続く」という言葉を残した。「自然との共存にかけての日本人の能力は抜群であり、日本人の力が遺憾なく発揮できる」と実感したと山根氏は力を込めた。
「いまブラジルではユウカリパルプの生産が活発化している。広大な熱帯地域は1年中高温に恵まれている。日本と比べると成長の早さが格段に違う。アマゾンの存在が見直される時代に入ったと明言できる。
一方、紙パルプの需要面では、紙おむつの需要が爆発的に拡大している。特に中国でそれが顕著だ。おむつは赤ちゃん用から大人用へ拡大している。特に高齢化が急速に進む中、大人用おむつが加速度的に伸びているからだ。それに呼応するように世界的に森林伐採、環境破壊の問題点が露呈してきていると山根氏は警告した。
結びに入りますと前置きして、山根氏は「日本人がブラジルへ移住後110年が経過した。この先110年を考えなければならない。ここに「人口時計」があります」とスクリーンに秒単位で動く様子を映した。
「2018年4月28日、現在世界の人口は75億人だが、人口は毎秒毎分増え続けている。一年で7,460万人増えている。1日で20万4,000人の増加だ。丁度今の鳥取県と同じ数の人口が毎日増えていることになる。自分が学生時代、ほぼ40年前になるが、世界の人口は38億人だった。」と山根氏は話を一瞬止めた。
山根氏はスクリーンに2,128年まで並べた一覧表を映した。「今後ますます気候変動が激しくなる。人間は生き物だから生きたものを食べていかないと生きていけない。22年後の2040年は人口爆発による食糧難が起きる大混迷時代に突入する。月旅行が始まる。37年後の2055年には月でオリンピックが行われる。」と山根氏は真顔で予測した。
「50年後の2068年には地球温暖化で生命の危機が訪れる。火星旅行が真剣に話し合われるだろう。110年後の2128年には新たな天地を求めて脱地球ということになり、火星へ移住する話が出てきているかもしれない。」と話した。
「110年前の1908年に今の姿を誰が予想できたであろうか。110年前、ブラジルへ渡りブラジルで新天地を切り開いた日本人の叡智から多くのことを学ぶことができる。」と山根氏は話を終えた。(了)