客観性をもった歴史学的考察による現代史を知るのは、日本の中にいるととても難しいことです。
それは、天皇尊敬という想念(日本宗教)によって日本人は、年を取るほどに《金縛り》になるからです。日本社会には強いタブーがあり、皇族と呼ばれる人々には、無条件で、赤ちゃんにさえ敬語を使うのが当然という風潮があるからです。
尊称をつけて呼ばない人は「変わり者」とされるのですから、恐ろしいほどです。
そうなので、ふつうに学校教育を受け、テレビや新聞を見ていると、皇族は特別な人々という観念を知らずに刷り込まれ、自由は消えてしまいます。日本のように公共領域(学校や会社や役所など)における自由がない国は、先進国には他にありません。
「日常」のどうでもよいことは全部自由ですが、その代わりに、「公的・公共的な場」は、強烈なタブーが支配して、窒息しそうです。
そうした現状は、変えていけなければならないですが、そのためには、【ほんとうのこと】を知る必要があります。わたしもあなたも、囚われが少ない自由な心をもち、魅力的な存在になり、豊かで幸福な人生を歩むには、正しく知ることが大切です。ほんとうの市民的な「公共性」をつくるにも、よく知ることは欠かせません。
日本の現状の中で、特定の政治勢力や特定のイデオロギーに邪魔されずに、客観性のある認識をするには骨が折れますが、ここにあげる書物3冊は、分明に書かかれ、読む者に深い納得を与えてくれます。
1「憲法9条はなぜ制定されたか」の古関彰一さんは、NHKの90分にも及ぶ教育番組で、「焼け跡からの憲法草案」(民間の憲法研究会の7人)の解説者も務めた著名な憲法学者です。獨協大学教授。
2「昭和天皇の戦後史」は、歴史家の吉田裕さんの1992年の著作ですが、すでに現代の古典としての地位を獲得しています。一ツ橋大学教授。
3「明仁さん、美智子さん、皇族やめませんか」は、33年もの間宮内庁の記者を務めた板垣恭介さんの著作です。板垣さんは昭和の裕仁天皇と現在の明仁天皇の二人と交流があり、美智子さん、明仁さんを陰で支えた人でもあります。貴重な話、考えさせられる話の連続で、この一冊は、日本人の必読書だと思います。新書版にして、買いやすくしてほしいもの。
この三冊、まだの方は、ぜひお手にしてください。安いですし。
武田康弘