武田哲学へのインタビュー 《コーヒーブレイク》 です。
ここで6月のアテフ・ハリムのコンサートについて伺いましょう。バッハからラフマニノフ、クライスラーまでのコンサート楽しみですね。 ポピュラーな曲が多いのでこのFBをご覧の皆さんともお会いできるかもしれません。
さて、ハリムは、あのヘンリク・シェリングのお弟子とのことですね。シェリングと言えば、バッハの無伴奏が凄かった。バッハの無伴奏の 話をしましょう。
私は、生演奏は聴いていませんが、モノラルとステレオの二種類の無伴奏を持っています。武田先生もシェリングは好きですね。最近ならク レーメルの新録音のバッハが人気でした。私が若いころは前橋汀子さんのバッハが凄い人気でした。その後、日本の演奏家は素晴らしい活躍です。
さて、期待のハリムはどうでしょうか?「シャコンヌ」だけのようですが、本当は全曲通して聴きたいです。きっとシェリングとは全く違っ た世界が聴けると思いますが・・・。
内田卓志
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内田さん、
バッハの無伴奏は、一番の感動は、シェリングでした。クレーメルの冴え過ぎの演奏は、音楽というより修行のよう。大変な実力者ですし、生で聴いたパガニーニの音楽の魅力=美しさは忘れられませんが。
ハリムは、従来のクラシックとは異なる温かさや親しみの音楽のように思えます。生で聴くのが一番よいのではないでしょうか。いまこの場で生きている人間同士の熱い心の通い合い、そんな感じがする演奏でしょう。来月28日(日)、上野の東京文化会館・小ホールでの演奏会、楽しみです。わたしは、シャコンヌだけで十分満足。
なお、バッハの無伴奏はシェリング、と思っていたわたしは、小林洋子さんが生で聴き感動したと記しているのを見て、ロシアの若い女性奏者・イブラギモヴァの全曲を買いましたが、これを聴いて驚愕! ああ、時代が変わった!と思いました。
大きな話をすれば、どこかに客観的な「よい」の基準がある、最高の演奏、ベスト1があるはず、という風な見方からの根本的な転回で、いわば、「私」=主観性の豊穣です。
しなやかで自由で、そのまま心身に沁み込むような音楽は、バッハであろうがなかろうがどうでもよい(笑)、ただそこに素晴らしい音楽が息づいていて、それに聴き惚れてしまうのです。20世紀のシェリングの男性的魅力の演奏が色褪せるわけではないですが、まったく異なる21世紀の若き女性のなよやかな無伴奏にいたく感動した、というわけです。
なお、わたしは全曲を一気に聞くことはほとんどありません。飽きてしまいますし、疲れますし。
武田康弘