思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

ポール・ルイスの「ディアベリの主題による変奏曲」ーついにディアベリの真価が露わに。

2015-05-16 | 芸術

 バッハの「ゴールドベルク変奏曲」を超えて、ピアノ音楽の頂点に立つベートーヴェンの「ディアベリの主題よる変奏曲」は、演奏がとても難しく、ピアノソナタでは情緒音痴に過ぎなかったポリーニによる予想外の名演でその真価を現わしましたが、ポリーニではまだ静的に留まっていたディアベリは、ポール・ルイスの演奏で、その全貌を露わにすることになりました。

  もちろん、これは私の主観的見方です、音楽家や愛好家の共通意見ではありませんが、強い感度でそう思うのです。

力に溢れ、
輝き、
推進力が強い。
既存の世界を打ち破るロゴスを持ち、エネルギーに溢れる。

というルイスの演奏の特質を並べると、これは、ベ-トーヴェンだ!

彼の示す美しさや品位は、近代市民社会の「市民」のもつ善美そのもの。
昔の王や貴族がもつ質ではなく、俗物エリートがもつ質でもなく、成金者のもつ質でもない。

ベートーヴェンと同じくシチズンシップに基づく美質だ。私=個人から始まり、そこから立ち昇る善美の世界だ。道ですれ違った時に「王侯たちの方から挨拶するのは当然のこと。」と言い、へりくだるゲーテをたしなめた共和主義の偉大な個人・ベートーヴェンの精神と重なる。

何度聴いても、
保守主義、アナクロニズムの停滞や濁り、絶対的なものへの固着、怠い精神、横暴な権力意思・・・というマイナス価値を根こそぎにする「私」(個人)から立ち昇る見事な力に胸のすく思いだ。

ピアノ音楽の頂点であり、かつ、市民革命の自由な精神に基づく音楽は、超気分いい!!(笑) ぜひどうぞ。

 

武田康弘

 

 

 

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