「Elvira Madigan」というスウェーデン映画で、邦題は、「みじかくも美しく燃え」。私が生まれる前の作品。
とにかく、Pia Degermarkのとても人間とは思えん美しさで心中映画であることを忘れる。当時、映画館を出た人は皆、「妖精って本当にいたんだ!」と口々に言ったであろう。
筋は、「曽根崎心中」のようなものとはちがう。どちらかというと「舞姫」である。この映画に元になった心中事件と「舞姫」の時代はほぼ同じだしw。しかし、この話は、豊太郎が妻子持ち軍人でエリスが綱渡り芸人だった場合みたいなかんじで、相沢みたいな友人のとめるのも聞かず、二人は森の中でさっさと心中してしまうのである。立身出世が意味なくなるとこわいのう……。つまり、このような話は、才子佳人小説の時代にとどめを刺すものであろう(笑)。最後に、蝶々と戯れる少女を男が一発で撃ってしまうところは、「西部戦線異状なし」のラストみたいなものではなかろうか。人間をじりじりと追いつめる戦争とか差別とかが問題なのである。してみると、この映画の代名詞ともなったモーツアルトの21番協奏曲第2楽章も、なんとなく、ショスタコーヴィチの7番のボレロのパロディの如く思えてくる。音楽までが二人を森へ追いやり追いつめる感じがする。想像では、わたしはもっとロマンチックで流れるような映画だと思っていたのだが、ヌーヴェルヴァーグの影響か何か分からんけれども、カクカクした感じで映画が進行する。このカクカクもまた、ショスタコーヴィチの「タカタカタ タカタカタ タカタカタカタカタカタカタ」というスネアドラムのようであった。