★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

恋する百人一首 第5回「女の分かれ道 セレブ美人妻・道綱母」

2016-01-04 23:42:16 | 文学


……日暮るるほどに、文見えたり。天下のそらごとならむと思へば、「ただいま心地悪しくて。」とて、遣りつ。(「蜻蛉日記」)

……翁、心地あしく苦しき時も、この子を見れば、苦しきこともやみぬ。腹立たしきことも慰みけり。(「竹取物語」)

小さいかわいい者がお爺さんに効き目があることは明らかであるが、セレブ妻には何が効くのであろうか。全く分からない。

 機嫌の直った時細君はまた健三に向った。――
「そう頭からがみがみいわないで、もっと解るようにいって聞かして下すったら好いでしょう」
「解るようにいおうとすれば、理窟ばかり捏ね返すっていうじゃないか」
「だからもっと解りやすいように。私に解らないような小六ずかしい理窟はやめにして」
「それじゃどうしたって説明しようがない。数字を使わずに算術を遣れと注文するのと同じ事だ」
「だって貴夫の理窟は、他を捻じ伏せるために用いられるとより外に考えようのない事があるんですもの」
「御前の頭が悪いからそう思うんだ」
「私の頭も悪いかも知れませんけれども、中味のない空っぽの理窟で捻じ伏せられるのは嫌ですよ」
 二人はまた同じ輪の上をぐるぐる廻り始めた。

――漱石「道草」


やっぱり漱石は怖い……壇蜜さんに上の部分とか朗読して欲しい。わたくしはきっと悲鳴を上げるであろう。