昔の江戸時代の日本人は、理髪店で浮世話や将棋をしながら、殆んど丸一日を暮して居た。文化の伝統が古くなるほど、人の心に余裕が生れ、生活がのんびりとして暮しよくなる。それが即ち「太平の世」といふものである。今の日本は、太平の世を去る事あまりに遠い。昔の江戸時代には帰らないでも、せめて巴里かロンドン位の程度にまで、余裕のある閑散の生活環境を作りたい。
――萩原朔太郎「喫茶店にて」
……そういえばこの前、ケーゲル指揮の「グレの歌」を聴いたのだが、農民が大絶叫するあたりから俄然、プロコフィエフのカンタータみたいな感じになっており、素晴らしかった。シェーンベルクってソ連じゃどういう扱いだったんだろう……