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×郎を眠らせ、×郎の屋根に雪ふりつむ。
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×郎を眠らせ、×郎の屋根に雪ふりつむ。
――三×達治「雪」
恐怖に澄んだ、その眼をぱつちりと見ひらいたまま、もう鹿は死んでゐた。無口な、理窟ぽい青年のやうな顔をして、木挽小屋の軒で、夕暮の糠雨に霑れてゐた。(その鹿を犬が噛み殺したのだ。)藍を含むだ淡墨いろの毛なみの、大腿骨のあたりの傷が、椿の花よりも紅い。ステッキのやうな脚をのばして、尻のあたりのぽつと白い毛が水を含むで、はぢらつてゐた。
どこからか、葱の香りがひとすぢ流れてゐた。
三椏の花が咲き、小屋の水車が大きく廻つてゐた。
――同「村」
……鹿とは×郎であろう……