団地の中でもツワブキの花が咲いていた。各号棟の北側の暗い場所に咲く黄色い花は目立つ。同時に北側の暗さが強調される。ツワブキはその葉と根元の暗さをセットにして鑑賞したい。
★石蕗(つわ)くらし易断にさへ人すがる 加藤楸邨
1947年(2月ごろ)の句。「野哭」所収。この句の前には「焦土より水ほとばしり冬満月」という句がある。戦後の暗く、不安が人々の生活を覆っていた時代の句である。占いに人々はすがって、将来の不安、生活の不安を払しょくしようと懸命であった。空襲によって寸断された都市施設、とりわけ水道施設は老朽化、劣化著しく、修理もままならなかった。冬満月に照らされた漏水したままの水道、易断の前に連なる人々、作者なりに捉えた戦後の荒廃した風景である。