中上守/訳 市川英夫&プラスB/装丁 チャールズ・ケア ほか/挿絵
※「ジュヴェナイル」カテゴリー内に追加します
このシリーズの長編のうち3冊目
これも読み始めて一気に引き込まれる
『恐怖の谷』同様、1つの事件解決後に
その背景となる過去の出来事の回想が
もう1つの小説のように展開される
ホームズは相変わらず天才的な腕を見せるが
難解な事件がない時は憂鬱でコカインを注射しているという
衝撃的な場面から始まる/驚×5000
これに関して、問題は起きなかったのだろうか?
それから、この事件でワトソン博士は依頼人にひと目惚れして
2人は結婚し、ホームズとの同居生活が終わるという大きな転換期でもある
最初にその女性のイラストがあるが
「とても魅力的」とは見えない絵でちょっと残念
巻末のジュヴェナイルシリーズの紹介も毎回楽しみにしているのに
発行年のページとともにがっつりテープでとめてある/汗
保護のためとはいえ、大事なページまで貼り付けてしまわずともいいのに・・・
貴重なジュヴェナイルの蔵書が
なぜか府中図書館にたくさんあることについて
近所の司書さんに聞いたら
他館からの相互貸し出しの場合
同じ図書館であっても、本があまりに古いと
禁帯出になっていることもあるとのことで
予約した2冊を断られてしまったのも残念
それでもまだまだジュヴェナイルシリーズは続く予定v
【内容抜粋メモ】
■1 推理学
ホームズの腕には無数の注射針の跡があり
コカインを打つ姿は、医者のワトソン博士からしたら
何度見ても平気ではいられない
これまで何度も難解な事件を解決するのを見て
コカインに対して無頓着な友人に対して意見することは控えてきたが
とうとう我慢できずに諫める
ワトソン:
アフガン戦争でまだ体力が回復してない上
体を傷めるような真似は出来ない
ホームズ:
たしかに体には良くないと思うが
精神はなかなかいいよ
ワトソン:結局は体が永久に弱くなるよ
ホームズ:
気持ちがふさいでしょうがない
仕事をくれよ そしたら注射など必要ない
僕はワクワクすることを求めている
だから特殊な職業を選んだ いや生み出した
世界でただひとりの民間顧問探偵だ
僕はけして名声を求めない
能力を発揮する楽しみそのものが報酬なんだ
(この会話が『緋色の研究』後だということが分かる
犯罪捜査は厳しい科学でなければならない
だが、あれに恋の話を持ち込んだ(本作もそうだけど?w
大事なのは、結果から原因を求める分析的な推理の仕方だ
ワトソンはジェゼール銃で撃ち抜かれた脚が気候の変わり目に痛む
ホームズ:
僕は最近商売の手を大陸まで伸ばした
フランス探偵界に名が知られてきた男
フランソワ・ル・ビラールから相談を受けた
(どこかの小説の人物か?
理想的な探偵に必要な3つの条件のうち2つを備えている
観察力、推理力 知識が足りないがだんだん獲得するだろう
彼は僕の論文を翻訳してくれている
『さまざまなたばこの灰の識別について』や
足跡の追跡、職業が手の形に及ぼす影響など
ホームズはワトソンが今朝、郵便局から電報を打ったことを見事に当てる
ワトソン:君は人が毎日使う物には、持ち主の個性が刻まれると言ったね
ワトソンが持つ懐中時計について推理させてホームズの暇つぶしをさせると
兄が亡き父からもらったもので
兄がだらしない人間で
お金のある時もあったが貧乏な時もあったと見事言い当てる
兄がいることすら知らなかったが
時計が傷だらけなこと
イギリスの質屋では裏に番号を彫ることから
何度か出し入れした跡から推理した
ホームズ:
僕は絶えず頭を働かせなければ生きていられない
こんな侘しい世界ってあるだろうか
なにもかも平凡で退屈だ
(シーモア・グラースみたいな危険性を孕んでいるなあ・・・
そこに依頼人の女性メアリー・モースタンが入って来る
●2 事件の陳述
上品なブロンドで、洗練され、感じやすい性質のある顔は動揺で震えている
家庭教師として働いている主人のフォレスター夫人の事件を解決したことでホームズを訪ねた
メアリー:
父はインドの連隊士官 母はもう亡くなった
1878年に父からロンドンに帰ったと電報が来た
ホテルに行くとモースタン大尉はいるが
前の晩外出して帰っていない、と言われ
その後10年も音信不通
父と同じ連隊だったショルトー少佐は親友
6年前、タイムズ紙に自分の住所が知りたいと広告が載った
その後、小さなボール箱が届き、大きな真珠が1個入っていた
それから毎年同じ日に真珠の箱が届くが送り主が分からない
今朝手紙が届いた
「今晩7時にライシアム座に来て欲しい
心配なら友人2人連れておいでなさい」
筆跡は箱の宛名と同じで、父のものではない
後で会う約束をしてメアリーが去った後
非常に魅力的な女性だと感動するワトソンに
ホームズ:
依頼人は事件に関わる1人の人間、要素に過ぎない
感情が混ざると正しい推理が出来なくなる
ホームズが調べもので部屋を出ると
むやみにラブレターが書きたくなる衝動に駆られるワトソンw
(この後、ずっと伴侶になる2人だが
こんなにひと目で愛していると分かるものかねえ
●解決の道をもとめて
ショルトー少佐は1882年に死んでいると分かる
モースタンが帰還した4年後
その1週間後から真珠が送られている
相続人が償いをしていると考えられる
約束の時間に馬車に乗る3人
メアリーは父の机から妙な紙切れを見つけたと見せる
「4つの署名 ジョナサン・スモール、マホメット・シング、
アブドゥラ・カーン、ドスト・アクバー」と走り書きしてある地図のようだ
街の往来を見ていると
暗がりから光へ出たり入ったりする様が
人の一生のように感じられるワトソン
2人が警官でないことを確かめてから
浅黒い男が馬車に乗せて闇雲に走るが
正確に場所を言い当てるホームズ
なんとなくいかがわしい場所に着き
部屋に入るとインド人の下男ウィリアムズが出迎える
●はげ頭の男の話
小柄でおそろしく長い頭のサディアス・ショルトーが現れる
部屋には2枚の虎の皮(涙)ほか豪華なしつらえ
いきなり「メアリーの父も心臓に負担さえかけなければ長生きしたのに」と話す
サディアス:
私たち3人ならノーウッドにいる兄のバーソロミューを説得できるだろう
私たちの父はジョン・ショルトー少佐
インドでかなりの金を貯めた
子どもは私と兄の双子のみ
アーサー・モースタンの死の真相を知るのは父のみ
父は誰かに狙われているように、プロのボクシング選手を雇った
ウィリアムズもその1人
義足の白人男をひどく怖がっていた
インドから手紙を受け取り、そのショックで亡くなった
もとから脾臓肥大症だったため、遺言で呼ばれる
少佐:
モースタンが亡くなり、孤児になった娘にやるべき宝を今まで渡せずにいた
アグラの宝は十分分けてやるんだぞ
モースタンは心臓が弱っていた
彼と私はかなりの宝を手に入れた
その分配で激しい口論となり、倒れて頭をぶつけて死んだ
私が疑われても仕方ない
だが、警察が調べれば宝について話さないわけにいかなくなるため知らせなかった
下男のラル・チョーダーは私が殺したと思い込み、死体を隠そうと言った
その晩、死体を片付け、宝も隠した モースタンの分まで
その場所は・・・
暗闇の窓際に顔があるのを見て、そのショックで父は死んだ
朝、部屋は乱れ、「四つの署名」というメモが留めてあった
兄と庭中を掘り返したが宝は見つからない
兄は欲深い面で父に似ていた
私はモースタンさんに毎年1個ずつ
真珠を送ることを納得させるのがやっとだった
私たちは裕福で、私はそれ以上欲しいとは思わなかった
だが、昨日、宝が発見された
我々が行って分け前を要求すればいい
兄は待っています
4人は馬車に乗る
宝は家のどこかにあると結論し、あらゆる箇所を測ると
一番上の部屋の天井に物置があった
ショルトーは慢性の心気症(健康を心配しすぎる病気)だと判断するワトソン
●ポンディシェリー荘の惨劇
ボクシング選手のもう1人マクマードは
2人の連れのことは聞いていないと家に入れないが
ホームズが以前彼と戦った話をすると態度は一変する
マクマード:
あなたは天からの才能を活かさなかった
プロに入れば高いランクを狙えたかもしれない
(そんな腕力も強いイメージはなかったな/驚
静かで大きな建物は不気味で、兄の部屋には灯りがない
庭には6年も掘り返した跡がそのまま
家政婦バーンストーン夫人のすすり泣きが聞こえる
主人が部屋に籠って出てこないと言う
鍵穴から覗くと、サディアスそっくりな兄の死に顔が見える
ドアも窓も内から鍵がかけてある
ドアを破って部屋に入ると、天井下に踏み台があり
天井に大きな穴がある
体は硬直し、謎めいた微笑みを浮かべている
石のついた棒と「四つの署名」のメモが落ちていた
首に毒のとげがあり、それで殺されたと言うホームズ
宝物はなくなっている
ホームズは警察を呼びに行かせる
●シャーロック=ホームズの論証
ホームズ:
事件はほぼ見当がついたが
自信を持ちすぎて失敗があってはならない
まずはどこからどう入ったかだ
(もう解決しちゃったの 早い!
窓には義足の足跡とひどく小さな共犯者の足跡がある
ロープで屋根から天井づたいに部屋に入った
不可能を取り去れば、後に残ったものが
どんなにあり得そうになくても事実でなくてはならない
ワトソンはホームズが犯罪を犯すほうに頭脳を使ったら
どんなに恐ろしいかと考える
共犯者は慌てたため、酷い臭いのする液体クレオソートに足を入れて逃げた
ただの猟犬でもニシンのにおいを州の端までつけていけるのだから
この強いにおいならすぐ分かるだろう
死体の謎の笑みは「ヒポクラテスの微笑」
植物性アルカロイドによる笑筋痙攣
ストリキニーネのような毒の矢が刺さった
そこにアセルニー・ジョーンズ警部がやって来る
以前、ホームズが彼の事件を解決したが
プライドが高く、とんちんかんな推理を並べて
サディアスを兄殺しで逮捕する
ホームズ:
『馬鹿のくせに利口ぶる奴ほど始末の悪いものはない』
フランスの諺だ
『人は自分の理解できないことをあざ笑うものだ』
ゲーテはいつも穿ったことを言う
犯人の1人はジョナサン・スモールだ
ホームズはワトソンにメアリーを家まで送り
シャーマンという剥製屋にいる
嗅覚に優れたトービーという犬を連れて来るよう頼む
●たるのエピソード
ワトソンはメアリーを愛し、同情する気持ちが高まるが
弱っている今プロポーズするのはつけこむようなものだし
宝物を継げばイギリス一の金持ちになり
恩給を受ける外科医の身として
もし遺産目当てなどと疑われたら耐えられないとふさぐ
玄関に立つ2人、ステンドグラス、階段の絨毯
こういう静かなイギリスの家庭を見るのは大きな慰めとなる
(ドイルは時々とても詩人になる
シャーマンはワトソンを追い返そうとするが
ホームズの名を出した途端態度を一変させる(w
部屋の中は変わった動物だらけで、檻からトービーを出す
垂れ耳のみっともない雑種
ジョーンズ警部はサディアスだけでなく
マクマードや家政婦らも一挙に逮捕してしまう
ホームズは犯人と同じように屋根に上り再現してみせる
共犯者が落とした袋の中には毒矢が何本も入っていた
トービーに綱をつけて臭いを嗅がせると早速2人を案内していく(ステキ!
アキレス腱を傷めた休職中の軍医ワトソンも一緒に追跡する
その間に推理を話すホームズ
ホームズ:
ショルトーが読んだ手紙には、宝物の持ち主が釈放されたと書かれていたのだろう
地図には白人の名は1つしかない あとはインド人か回教徒だ
だから義足の男はジョナサン・スモールだ
執事のラル・ラオもくさい
けちな野心を抱いて齷齪している僕たちは
自然の偉大な力の前ではなんと小さく感じられるだろう
人間の真の偉大さは、自分の小ささを悟るところにあると
ジャン・パウル(作家)は言っている
ジョナサンは君に任せるが、もう一人が来たら撃ち殺してやる
トービーはついに勝ち誇った声をあげるが
そこはクレオソートを置いた材木置き場だった(^^
●ベーカー街特捜隊
ホームズ:
ロンドンで1日にどれだけたくさんのクレオソートが運ばれるか考えれば仕方ない
可哀想に トービーのせいじゃないよ(w
犬が迷った広場まで戻ろう
途中で船に乗ったと分かる
近くにモーディケアイ・スミスという貸し船屋がある
ホームズはそこの子を褒めて、さり気なく奥さんに夫の居場所と
ランチの行方を聞き出す
義足の男と醜い顔の異国の男をオーロラ号に乗せて戻らないと心配している
ホームズ:
ああいう連中が相手の時は
重要なことを聞きだそうとしているそぶりを見せないことだ
さもないとカキのように口を閉ざしてしまうからね
朝食を食べて、1時間ばかり眠ろう
(ハム・エッグを作るホームズが意外/驚
君は僕が家政の面でも相当の腕の持ち主なのをまだ知らなかっただろう?
ベーカー街特捜隊が案外役に立つかもしれない
あれは私設探偵団だ
新聞にバーソロミューは他殺
ジョーンズ警部は経験の腕を奮い捜査していると書かれている
(ほんとにメディアは当てにならないね
ベーカー街特捜隊隊長ウィギンスと浮浪児たちが部屋に来て
オーロラ号を探すよう頼み、前金を渡し
見つけた者には別に1ギニーやると言って送り出す
(少年探偵団もこの真似か?
ホームズ:
あの連中ならどこにでも入り込み、なんでも聞ける
僕は妙な体質で、のらくらしている時はたまらなく疲れるが
仕事をして疲れた記憶はない
インド人の足は長くて狭い
サンダルを履く回教徒はいつも革紐を挟むから親指が離れる
アンダマン島人は、地球でもっとも背の低い人種
生まれながらに醜く、強暴
石のついたこん棒で叩いたり、毒矢で射殺したりするので
航海者から恐れられている人食い人種、と書物に書かれている
(だいぶ白人の偏見があるっぽいな
ホームズ:実に愛すべき民族じゃないか!
ワトソンを眠らせるために、ホームズはバイオリンで
即興の曲を弾いて聴かせる
(どんだけ才能があるんだ/驚
●鎖の切れ目
ウィギンスからランチの行方がまったく分からないという報告が来て
捜索が頓挫する
ワトソンはフォレスター夫人にその後の報告をしに行くというが
目的はメアリーに会うためと知っているホームズ
ホームズ:
女というのは、頭から信用するわけにはいかない
もっとも信頼できる相手でも
帰宅するとハドスン夫人はホームズが部屋に籠って様子が変だと心配している
ホームズは化学の実験をしていて
水夫に扮装して川を見に行くと出て行く
ホームズはたまに理屈をこねすぎて
わざと難しい解釈をして失敗することがあるのを心配するワトソン
捜査に困り果てたジョーンズ警部が家にやって来る
ジョーンズ:あの人の手で解かれなかった事件は一つもない と電報を見せる
「事件の最後の場面に立ち会いたければ、今晩同行されるがよし」
2人が行くと老人から声をかけられ
かつら、ヒゲ、眉毛を取り
ようやくホームズの変装だと気づいて驚く
警察艇で一番速いものを用意させる
●島人の最後
ホームズは気の向いた時はずいぶんよく喋る
警察艇に乗り、ロンドン塔方面に向かう
ホームズ:
ある政治家が言っていた
仕事をかえるのが最高の休息になる
僕は炭化水素の分解に成功し
再びショルトーの問題に戻り
改めて自分が彼ならどうするかと考えた
彼はスミスに口止め料を払い、逃亡のための船を用意し
宝を隠れ家へ運んだ
16か所目でようやくオーロラ号の場所を見つけた
少年を船の見張りに立たせて
船が出る時合図することになっている
造船所に着き、仕事から帰る労働者を見て
ホームズ:
身なりこそ汚いが、みんな心のうちにキラっと光るものを持っている
実際光るのを見ないかぎり信じられないのも無理はない
ほんとうに人間とは不思議な謎だよ!
少年から合図があり、オーロラ号はかなりの速度で飛び出す
石炭をくべて全速力で追いかける警察艇
ここから猛烈なチェイスが始まる
義足の男と今まで見たことのない小さな黒人が乗っている
その顔は見ただけで恐ろしくて眠れなくなるシロモノだった
小男が口に毒矢の棒を当てた瞬間、ピストルを撃ち川に落ちて消える
沼地に降りたスモールは、義足が根本まで潜り
あがいても一歩も動けなくなる
スモールと宝箱は警察艇に運んだ
●すばらしいアグラの宝もの
スモール:
ショルトーさんはトンガの鬼が毒矢で射った
あの部屋には誰もいないと思ったんです
正当な権利を持った私がアンダマン島で防波堤づくりに人生の半分を過ごし
あとの半分をダートムーア刑務所で下水堀りをして過ごすなんておかしな話だ
ワトソンは宝の箱と一緒に降りて
メアリーのもとへ届けることになるが
鍵はスモールが逃走している際に川に捨てたため
火かき棒でこじ開けると、中は空っぽだった
2人を隔てる壁がなくなり、思わず「良かった」と叫ぶワトソン
ワトソン:あなたを愛している 心から
メアリー:それなら私も「良かった」と言いますわ
宝は私が手に入れたとハッキリ思った
●ジョナサン・スモールのふしぎな物語
スモール:
宝は川に投げた
自分の手に入らないなら誰にも渡すものか
5、6マイルにわたって散らばっているから探しても容易じゃない
俺がどんな思いで手に入れたか話してやろう
(ここから長い回想に入る
自業自得な話で同情の余地はないにせよ
ジョーンズと違って、スモールを丁寧に扱うホームズが紳士的
沼地で熱病に脅かされながら20年も働かされた
18歳の時、ある娘とごたごたを起こして
逃れる唯一の道として軍に志願し
インドに派遣される連隊に入った
ガンジス川で泳ぐバカなことをして
ワニに膝の上から食いちぎられたおかげで
軍隊から使い道がないと追い出された
インド藍の栽培に来ていたエーベル・ホワイトが
クーリー(旧中国やインドで低賃金で酷使された労働者)の仕事を監視する仕事をくれた
すっかり満足して、一生ここで暮らしてもいいと思った
突然、なんの前触れもなく大暴動が起きた
バンガローが焼き討ちに遭い
毎日、ヨーロッパ人が妻子を連れて
一番近い駐屯地アグラに来た
帳簿をつけるドースンのかみさんはズタズタに引き裂かれ
死体は野犬に食われたのを見た
その先にはセポイ(イギリス東インド会社のインド人雇い兵)が死んでいた
ホワイトさんの家から煙が見えたので逃げて
ようやくアグラ城壁に着いた
(こういう話を聞くと、小さな島国の日本がこれまで一度も
植民地にされたことがない歴史が尊く感じる
なにより酷いのは、敵の歩兵、騎兵、砲兵もみんな
私らが訓練した精鋭部隊だということ
私らは暴動のど真ん中にいたため
川を渡り、古い要塞に本拠を移した
荒れ放題の大ホール、迷路のような通路
無数の門の1つに番兵を置くなんてムリだった
私は西南側の小さな門の見張りになった
ある晩、部下の2人のパンジャブ人と見張りをした
マスケット銃を置いた途端、シーク教徒が銃口を頭に向けた
アブドゥラ・カーン:
俺たちの味方になるか死ぬか
仲間になれば、シーク教徒の三重の誓いをたてて
宝の4/1の公平な分け前をやる
北にアクメットという偽名の金持ちの藩王がいる
いやしくて、金を使うより貯めるほうが好きなんだ
暴動の際、セポイと東インド会社両方と組んで
どちらに転んでも半分は戻るよう計画した
アクメットはアグラにいて砦に入りたがっている
奴が司令長官に捕まれば縛り首か銃殺だ
宝石は政府に取り上げられて得する人間はいない
私は心の底から仲間になると言った
アクメットがシーク教徒と来て、誰何の声をかけると
助けを求めてすがる
2人のシーク教徒はアクメットを殺そうとして逃げて来た所に
スモールが転ばせて、とどめが刺された
これがバレたら軍法会議で銃殺は免れない
死体を埋葬し、宝を取り出して目録を作り
秘密を守ると誓い、そこに隠し
地図を作り、4人の署名を添えた
ウィルスンがデリーを占領し
私らはアクメット殺しで逮捕された
アクメットは召使をスパイにしていて軍曹に話したため
法廷では宝の話はまったく出なかった
4人は無期懲役になった
私は植民地のブレア島に移されて軍医の助手もやった
軍医は賭け事が大好きで、常連はショルトー少佐、モースタン大尉ら
勝つのはいつも役人で負けるのはいつも軍人
負けっぷりが一番ひどかったのが少佐
少佐が「辞表を出さなければならなくなった」と話すのを聞いた
50万ポンドの宝のありかを教える代わりに
4人の脱獄に協力してくれと頼むと
モースタン大尉を連れて来て1/5の分け前に決まった
少佐らは小舟と食糧を用意するだけ
宝の地図を渡して、そこに4人の署名を書いた
ショルトーはインドに行ったきり
叔父の遺産が入ったとウソをついて戻らず
モースタンが行くと宝は消えていた
私は復讐を誓った
ある日、軍医が熱病にかかり、島人が手当てをして回復した
島人は私が気に入り、どこにでもついて来た
それがトンガで船を漕ぐのが得意
囚人監視員がいたため義足で殴り倒した
途中で貿易船に助けられ、数年前にようやくイギリスに着いた
ショルトーは2人の息子とボクシング選手を雇って警備させていた
死にかけていると聞き、窓越しに覗いた時、ちょうど死んだと分かった
4人の署名を胸にピンで留めた
トンガを人食い人種だと言って、縁日の見世物にして
2人の食い代を稼いでいた
トンガはするすると屋根から忍び込み
ショルトーを殺して得意げになっていたためロープで引っぱたいた
宝を持って出て行った
これが真相です
ホームズ:まったく驚くべき話だ
スモールは逮捕される
ワトソン:
この事件を最後に私は君の方法を研究する機会はなくなると思う
モースタンがプロポーズを承知してくれたんだ
ホームズ:
正直、おめでとうと言う気にはなれないね
恋は感情的なもので、感情的なものはすべて
僕がなにより尊重する冷静で正しい理性と対立する
僕は絶対結婚しない
早くも反作用が始まっている
1週間はぼろきれみたいになるだろう
僕にはとびきり怠け者の素質と
非常に活動的な素質が同居している
ゲーテの詩を思い出す
自然がお前をただ一人の人間にしかつくらなかったのが残念だ
価値ある人とも、したたかな悪党ともなれたものを
ワトソン:
私は妻を手に入れ、ジョーンズは名誉を勝ち得た
君には何が残っている?
ホームズ:まだこのコカインの瓶が残っているさ(驚
■シャーロック・ホームズを推理する 各務三郎
(小説内の料理について熱く語っているが
私は食べ物に興味がないためついていけない
食卓では政治・宗教を話題にしてはいけないのが西洋のテーブルマナー
新聞のテレビ欄には1日に1ダースもの料理番組が放映されている
(今も変わらないね
探偵小説にも料理が登場する
アガサの『火曜クラブ』など
第一次世界大戦後のイギリス中流家庭の風俗・習慣が上手く書かれている
料理が事件の鍵となる場合もたくさんある
「探偵小説は、美味しい料理に似ている」と言われる
どんな主義主張の人でも気楽に楽しめるからかもしれない
(メグレ警視を例にあげる
食べ物はその国の文化と言われる
私はハメットのスペード探偵が好きだ
ジョンの店の2階は、ハメット記念室になっていて
映画『マルタの鷹』のスチール写真などがある
アメリカの探偵で美食家といえば、ネロ・ウルフ探偵が有名
作者のスタウトは、料理をすべて二度作り
いけるとなって初めて作品に使った
NY市のアメリカ料理学院で
100人を超すホームズファンたちの記念集会が開かれ
ホームズにちなんだ料理が出された
そこにジュリア・C・ローゼンブラットという女性がいた
『シャーロック=ホームズとの食事』を書いた
ホームズが美食家かというと疑問だ
19C半ばのイギリスの食事は
朝食、朝のお茶、昼食、午後のお茶、肉料理つき午後のお茶、夕食
しかも昼食や夕食は12品くらい出た(驚
『シャーロック=ホームズ家の料理読本』は
ハドスン夫人が下宿人のホームズとワトソンにこしらえた料理とレシピをメモしたという体裁
■作品解説
映画『ロシアから愛をこめて』でモーターボートのチェイスシーンを見た時
本書を思い出した
『踊る人形』は暗号解読が主となる「パズル小説(謎解き小説)」
ホームズ物語には、スパイ小説、恐怖小説、サスペンスもある
現代の探偵小説のすべての分野にわたる
冒険小説と言われるのは、ホームズのフェア精神と行動のため
モリアーティ教授を「敵ながらあっぱれ」と褒め
金持ち、貧乏などに惑わされず、心がけを見る人間性の尊重
困難な謎に正面から挑戦する神話の英雄と同じ
だからこそ、いつ読んでも爽やかな気持ちになれるのです
※「ジュヴェナイル」カテゴリー内に追加します
このシリーズの長編のうち3冊目
これも読み始めて一気に引き込まれる
『恐怖の谷』同様、1つの事件解決後に
その背景となる過去の出来事の回想が
もう1つの小説のように展開される
ホームズは相変わらず天才的な腕を見せるが
難解な事件がない時は憂鬱でコカインを注射しているという
衝撃的な場面から始まる/驚×5000
これに関して、問題は起きなかったのだろうか?
それから、この事件でワトソン博士は依頼人にひと目惚れして
2人は結婚し、ホームズとの同居生活が終わるという大きな転換期でもある
最初にその女性のイラストがあるが
「とても魅力的」とは見えない絵でちょっと残念
巻末のジュヴェナイルシリーズの紹介も毎回楽しみにしているのに
発行年のページとともにがっつりテープでとめてある/汗
保護のためとはいえ、大事なページまで貼り付けてしまわずともいいのに・・・
貴重なジュヴェナイルの蔵書が
なぜか府中図書館にたくさんあることについて
近所の司書さんに聞いたら
他館からの相互貸し出しの場合
同じ図書館であっても、本があまりに古いと
禁帯出になっていることもあるとのことで
予約した2冊を断られてしまったのも残念
それでもまだまだジュヴェナイルシリーズは続く予定v
【内容抜粋メモ】
■1 推理学
ホームズの腕には無数の注射針の跡があり
コカインを打つ姿は、医者のワトソン博士からしたら
何度見ても平気ではいられない
これまで何度も難解な事件を解決するのを見て
コカインに対して無頓着な友人に対して意見することは控えてきたが
とうとう我慢できずに諫める
ワトソン:
アフガン戦争でまだ体力が回復してない上
体を傷めるような真似は出来ない
ホームズ:
たしかに体には良くないと思うが
精神はなかなかいいよ
ワトソン:結局は体が永久に弱くなるよ
ホームズ:
気持ちがふさいでしょうがない
仕事をくれよ そしたら注射など必要ない
僕はワクワクすることを求めている
だから特殊な職業を選んだ いや生み出した
世界でただひとりの民間顧問探偵だ
僕はけして名声を求めない
能力を発揮する楽しみそのものが報酬なんだ
(この会話が『緋色の研究』後だということが分かる
犯罪捜査は厳しい科学でなければならない
だが、あれに恋の話を持ち込んだ(本作もそうだけど?w
大事なのは、結果から原因を求める分析的な推理の仕方だ
ワトソンはジェゼール銃で撃ち抜かれた脚が気候の変わり目に痛む
ホームズ:
僕は最近商売の手を大陸まで伸ばした
フランス探偵界に名が知られてきた男
フランソワ・ル・ビラールから相談を受けた
(どこかの小説の人物か?
理想的な探偵に必要な3つの条件のうち2つを備えている
観察力、推理力 知識が足りないがだんだん獲得するだろう
彼は僕の論文を翻訳してくれている
『さまざまなたばこの灰の識別について』や
足跡の追跡、職業が手の形に及ぼす影響など
ホームズはワトソンが今朝、郵便局から電報を打ったことを見事に当てる
ワトソン:君は人が毎日使う物には、持ち主の個性が刻まれると言ったね
ワトソンが持つ懐中時計について推理させてホームズの暇つぶしをさせると
兄が亡き父からもらったもので
兄がだらしない人間で
お金のある時もあったが貧乏な時もあったと見事言い当てる
兄がいることすら知らなかったが
時計が傷だらけなこと
イギリスの質屋では裏に番号を彫ることから
何度か出し入れした跡から推理した
ホームズ:
僕は絶えず頭を働かせなければ生きていられない
こんな侘しい世界ってあるだろうか
なにもかも平凡で退屈だ
(シーモア・グラースみたいな危険性を孕んでいるなあ・・・
そこに依頼人の女性メアリー・モースタンが入って来る
●2 事件の陳述
上品なブロンドで、洗練され、感じやすい性質のある顔は動揺で震えている
家庭教師として働いている主人のフォレスター夫人の事件を解決したことでホームズを訪ねた
メアリー:
父はインドの連隊士官 母はもう亡くなった
1878年に父からロンドンに帰ったと電報が来た
ホテルに行くとモースタン大尉はいるが
前の晩外出して帰っていない、と言われ
その後10年も音信不通
父と同じ連隊だったショルトー少佐は親友
6年前、タイムズ紙に自分の住所が知りたいと広告が載った
その後、小さなボール箱が届き、大きな真珠が1個入っていた
それから毎年同じ日に真珠の箱が届くが送り主が分からない
今朝手紙が届いた
「今晩7時にライシアム座に来て欲しい
心配なら友人2人連れておいでなさい」
筆跡は箱の宛名と同じで、父のものではない
後で会う約束をしてメアリーが去った後
非常に魅力的な女性だと感動するワトソンに
ホームズ:
依頼人は事件に関わる1人の人間、要素に過ぎない
感情が混ざると正しい推理が出来なくなる
ホームズが調べもので部屋を出ると
むやみにラブレターが書きたくなる衝動に駆られるワトソンw
(この後、ずっと伴侶になる2人だが
こんなにひと目で愛していると分かるものかねえ
●解決の道をもとめて
ショルトー少佐は1882年に死んでいると分かる
モースタンが帰還した4年後
その1週間後から真珠が送られている
相続人が償いをしていると考えられる
約束の時間に馬車に乗る3人
メアリーは父の机から妙な紙切れを見つけたと見せる
「4つの署名 ジョナサン・スモール、マホメット・シング、
アブドゥラ・カーン、ドスト・アクバー」と走り書きしてある地図のようだ
街の往来を見ていると
暗がりから光へ出たり入ったりする様が
人の一生のように感じられるワトソン
2人が警官でないことを確かめてから
浅黒い男が馬車に乗せて闇雲に走るが
正確に場所を言い当てるホームズ
なんとなくいかがわしい場所に着き
部屋に入るとインド人の下男ウィリアムズが出迎える
●はげ頭の男の話
小柄でおそろしく長い頭のサディアス・ショルトーが現れる
部屋には2枚の虎の皮(涙)ほか豪華なしつらえ
いきなり「メアリーの父も心臓に負担さえかけなければ長生きしたのに」と話す
サディアス:
私たち3人ならノーウッドにいる兄のバーソロミューを説得できるだろう
私たちの父はジョン・ショルトー少佐
インドでかなりの金を貯めた
子どもは私と兄の双子のみ
アーサー・モースタンの死の真相を知るのは父のみ
父は誰かに狙われているように、プロのボクシング選手を雇った
ウィリアムズもその1人
義足の白人男をひどく怖がっていた
インドから手紙を受け取り、そのショックで亡くなった
もとから脾臓肥大症だったため、遺言で呼ばれる
少佐:
モースタンが亡くなり、孤児になった娘にやるべき宝を今まで渡せずにいた
アグラの宝は十分分けてやるんだぞ
モースタンは心臓が弱っていた
彼と私はかなりの宝を手に入れた
その分配で激しい口論となり、倒れて頭をぶつけて死んだ
私が疑われても仕方ない
だが、警察が調べれば宝について話さないわけにいかなくなるため知らせなかった
下男のラル・チョーダーは私が殺したと思い込み、死体を隠そうと言った
その晩、死体を片付け、宝も隠した モースタンの分まで
その場所は・・・
暗闇の窓際に顔があるのを見て、そのショックで父は死んだ
朝、部屋は乱れ、「四つの署名」というメモが留めてあった
兄と庭中を掘り返したが宝は見つからない
兄は欲深い面で父に似ていた
私はモースタンさんに毎年1個ずつ
真珠を送ることを納得させるのがやっとだった
私たちは裕福で、私はそれ以上欲しいとは思わなかった
だが、昨日、宝が発見された
我々が行って分け前を要求すればいい
兄は待っています
4人は馬車に乗る
宝は家のどこかにあると結論し、あらゆる箇所を測ると
一番上の部屋の天井に物置があった
ショルトーは慢性の心気症(健康を心配しすぎる病気)だと判断するワトソン
●ポンディシェリー荘の惨劇
ボクシング選手のもう1人マクマードは
2人の連れのことは聞いていないと家に入れないが
ホームズが以前彼と戦った話をすると態度は一変する
マクマード:
あなたは天からの才能を活かさなかった
プロに入れば高いランクを狙えたかもしれない
(そんな腕力も強いイメージはなかったな/驚
静かで大きな建物は不気味で、兄の部屋には灯りがない
庭には6年も掘り返した跡がそのまま
家政婦バーンストーン夫人のすすり泣きが聞こえる
主人が部屋に籠って出てこないと言う
鍵穴から覗くと、サディアスそっくりな兄の死に顔が見える
ドアも窓も内から鍵がかけてある
ドアを破って部屋に入ると、天井下に踏み台があり
天井に大きな穴がある
体は硬直し、謎めいた微笑みを浮かべている
石のついた棒と「四つの署名」のメモが落ちていた
首に毒のとげがあり、それで殺されたと言うホームズ
宝物はなくなっている
ホームズは警察を呼びに行かせる
●シャーロック=ホームズの論証
ホームズ:
事件はほぼ見当がついたが
自信を持ちすぎて失敗があってはならない
まずはどこからどう入ったかだ
(もう解決しちゃったの 早い!
窓には義足の足跡とひどく小さな共犯者の足跡がある
ロープで屋根から天井づたいに部屋に入った
不可能を取り去れば、後に残ったものが
どんなにあり得そうになくても事実でなくてはならない
ワトソンはホームズが犯罪を犯すほうに頭脳を使ったら
どんなに恐ろしいかと考える
共犯者は慌てたため、酷い臭いのする液体クレオソートに足を入れて逃げた
ただの猟犬でもニシンのにおいを州の端までつけていけるのだから
この強いにおいならすぐ分かるだろう
死体の謎の笑みは「ヒポクラテスの微笑」
植物性アルカロイドによる笑筋痙攣
ストリキニーネのような毒の矢が刺さった
そこにアセルニー・ジョーンズ警部がやって来る
以前、ホームズが彼の事件を解決したが
プライドが高く、とんちんかんな推理を並べて
サディアスを兄殺しで逮捕する
ホームズ:
『馬鹿のくせに利口ぶる奴ほど始末の悪いものはない』
フランスの諺だ
『人は自分の理解できないことをあざ笑うものだ』
ゲーテはいつも穿ったことを言う
犯人の1人はジョナサン・スモールだ
ホームズはワトソンにメアリーを家まで送り
シャーマンという剥製屋にいる
嗅覚に優れたトービーという犬を連れて来るよう頼む
●たるのエピソード
ワトソンはメアリーを愛し、同情する気持ちが高まるが
弱っている今プロポーズするのはつけこむようなものだし
宝物を継げばイギリス一の金持ちになり
恩給を受ける外科医の身として
もし遺産目当てなどと疑われたら耐えられないとふさぐ
玄関に立つ2人、ステンドグラス、階段の絨毯
こういう静かなイギリスの家庭を見るのは大きな慰めとなる
(ドイルは時々とても詩人になる
シャーマンはワトソンを追い返そうとするが
ホームズの名を出した途端態度を一変させる(w
部屋の中は変わった動物だらけで、檻からトービーを出す
垂れ耳のみっともない雑種
ジョーンズ警部はサディアスだけでなく
マクマードや家政婦らも一挙に逮捕してしまう
ホームズは犯人と同じように屋根に上り再現してみせる
共犯者が落とした袋の中には毒矢が何本も入っていた
トービーに綱をつけて臭いを嗅がせると早速2人を案内していく(ステキ!
アキレス腱を傷めた休職中の軍医ワトソンも一緒に追跡する
その間に推理を話すホームズ
ホームズ:
ショルトーが読んだ手紙には、宝物の持ち主が釈放されたと書かれていたのだろう
地図には白人の名は1つしかない あとはインド人か回教徒だ
だから義足の男はジョナサン・スモールだ
執事のラル・ラオもくさい
けちな野心を抱いて齷齪している僕たちは
自然の偉大な力の前ではなんと小さく感じられるだろう
人間の真の偉大さは、自分の小ささを悟るところにあると
ジャン・パウル(作家)は言っている
ジョナサンは君に任せるが、もう一人が来たら撃ち殺してやる
トービーはついに勝ち誇った声をあげるが
そこはクレオソートを置いた材木置き場だった(^^
●ベーカー街特捜隊
ホームズ:
ロンドンで1日にどれだけたくさんのクレオソートが運ばれるか考えれば仕方ない
可哀想に トービーのせいじゃないよ(w
犬が迷った広場まで戻ろう
途中で船に乗ったと分かる
近くにモーディケアイ・スミスという貸し船屋がある
ホームズはそこの子を褒めて、さり気なく奥さんに夫の居場所と
ランチの行方を聞き出す
義足の男と醜い顔の異国の男をオーロラ号に乗せて戻らないと心配している
ホームズ:
ああいう連中が相手の時は
重要なことを聞きだそうとしているそぶりを見せないことだ
さもないとカキのように口を閉ざしてしまうからね
朝食を食べて、1時間ばかり眠ろう
(ハム・エッグを作るホームズが意外/驚
君は僕が家政の面でも相当の腕の持ち主なのをまだ知らなかっただろう?
ベーカー街特捜隊が案外役に立つかもしれない
あれは私設探偵団だ
新聞にバーソロミューは他殺
ジョーンズ警部は経験の腕を奮い捜査していると書かれている
(ほんとにメディアは当てにならないね
ベーカー街特捜隊隊長ウィギンスと浮浪児たちが部屋に来て
オーロラ号を探すよう頼み、前金を渡し
見つけた者には別に1ギニーやると言って送り出す
(少年探偵団もこの真似か?
ホームズ:
あの連中ならどこにでも入り込み、なんでも聞ける
僕は妙な体質で、のらくらしている時はたまらなく疲れるが
仕事をして疲れた記憶はない
インド人の足は長くて狭い
サンダルを履く回教徒はいつも革紐を挟むから親指が離れる
アンダマン島人は、地球でもっとも背の低い人種
生まれながらに醜く、強暴
石のついたこん棒で叩いたり、毒矢で射殺したりするので
航海者から恐れられている人食い人種、と書物に書かれている
(だいぶ白人の偏見があるっぽいな
ホームズ:実に愛すべき民族じゃないか!
ワトソンを眠らせるために、ホームズはバイオリンで
即興の曲を弾いて聴かせる
(どんだけ才能があるんだ/驚
●鎖の切れ目
ウィギンスからランチの行方がまったく分からないという報告が来て
捜索が頓挫する
ワトソンはフォレスター夫人にその後の報告をしに行くというが
目的はメアリーに会うためと知っているホームズ
ホームズ:
女というのは、頭から信用するわけにはいかない
もっとも信頼できる相手でも
帰宅するとハドスン夫人はホームズが部屋に籠って様子が変だと心配している
ホームズは化学の実験をしていて
水夫に扮装して川を見に行くと出て行く
ホームズはたまに理屈をこねすぎて
わざと難しい解釈をして失敗することがあるのを心配するワトソン
捜査に困り果てたジョーンズ警部が家にやって来る
ジョーンズ:あの人の手で解かれなかった事件は一つもない と電報を見せる
「事件の最後の場面に立ち会いたければ、今晩同行されるがよし」
2人が行くと老人から声をかけられ
かつら、ヒゲ、眉毛を取り
ようやくホームズの変装だと気づいて驚く
警察艇で一番速いものを用意させる
●島人の最後
ホームズは気の向いた時はずいぶんよく喋る
警察艇に乗り、ロンドン塔方面に向かう
ホームズ:
ある政治家が言っていた
仕事をかえるのが最高の休息になる
僕は炭化水素の分解に成功し
再びショルトーの問題に戻り
改めて自分が彼ならどうするかと考えた
彼はスミスに口止め料を払い、逃亡のための船を用意し
宝を隠れ家へ運んだ
16か所目でようやくオーロラ号の場所を見つけた
少年を船の見張りに立たせて
船が出る時合図することになっている
造船所に着き、仕事から帰る労働者を見て
ホームズ:
身なりこそ汚いが、みんな心のうちにキラっと光るものを持っている
実際光るのを見ないかぎり信じられないのも無理はない
ほんとうに人間とは不思議な謎だよ!
少年から合図があり、オーロラ号はかなりの速度で飛び出す
石炭をくべて全速力で追いかける警察艇
ここから猛烈なチェイスが始まる
義足の男と今まで見たことのない小さな黒人が乗っている
その顔は見ただけで恐ろしくて眠れなくなるシロモノだった
小男が口に毒矢の棒を当てた瞬間、ピストルを撃ち川に落ちて消える
沼地に降りたスモールは、義足が根本まで潜り
あがいても一歩も動けなくなる
スモールと宝箱は警察艇に運んだ
●すばらしいアグラの宝もの
スモール:
ショルトーさんはトンガの鬼が毒矢で射った
あの部屋には誰もいないと思ったんです
正当な権利を持った私がアンダマン島で防波堤づくりに人生の半分を過ごし
あとの半分をダートムーア刑務所で下水堀りをして過ごすなんておかしな話だ
ワトソンは宝の箱と一緒に降りて
メアリーのもとへ届けることになるが
鍵はスモールが逃走している際に川に捨てたため
火かき棒でこじ開けると、中は空っぽだった
2人を隔てる壁がなくなり、思わず「良かった」と叫ぶワトソン
ワトソン:あなたを愛している 心から
メアリー:それなら私も「良かった」と言いますわ
宝は私が手に入れたとハッキリ思った
●ジョナサン・スモールのふしぎな物語
スモール:
宝は川に投げた
自分の手に入らないなら誰にも渡すものか
5、6マイルにわたって散らばっているから探しても容易じゃない
俺がどんな思いで手に入れたか話してやろう
(ここから長い回想に入る
自業自得な話で同情の余地はないにせよ
ジョーンズと違って、スモールを丁寧に扱うホームズが紳士的
沼地で熱病に脅かされながら20年も働かされた
18歳の時、ある娘とごたごたを起こして
逃れる唯一の道として軍に志願し
インドに派遣される連隊に入った
ガンジス川で泳ぐバカなことをして
ワニに膝の上から食いちぎられたおかげで
軍隊から使い道がないと追い出された
インド藍の栽培に来ていたエーベル・ホワイトが
クーリー(旧中国やインドで低賃金で酷使された労働者)の仕事を監視する仕事をくれた
すっかり満足して、一生ここで暮らしてもいいと思った
突然、なんの前触れもなく大暴動が起きた
バンガローが焼き討ちに遭い
毎日、ヨーロッパ人が妻子を連れて
一番近い駐屯地アグラに来た
帳簿をつけるドースンのかみさんはズタズタに引き裂かれ
死体は野犬に食われたのを見た
その先にはセポイ(イギリス東インド会社のインド人雇い兵)が死んでいた
ホワイトさんの家から煙が見えたので逃げて
ようやくアグラ城壁に着いた
(こういう話を聞くと、小さな島国の日本がこれまで一度も
植民地にされたことがない歴史が尊く感じる
なにより酷いのは、敵の歩兵、騎兵、砲兵もみんな
私らが訓練した精鋭部隊だということ
私らは暴動のど真ん中にいたため
川を渡り、古い要塞に本拠を移した
荒れ放題の大ホール、迷路のような通路
無数の門の1つに番兵を置くなんてムリだった
私は西南側の小さな門の見張りになった
ある晩、部下の2人のパンジャブ人と見張りをした
マスケット銃を置いた途端、シーク教徒が銃口を頭に向けた
アブドゥラ・カーン:
俺たちの味方になるか死ぬか
仲間になれば、シーク教徒の三重の誓いをたてて
宝の4/1の公平な分け前をやる
北にアクメットという偽名の金持ちの藩王がいる
いやしくて、金を使うより貯めるほうが好きなんだ
暴動の際、セポイと東インド会社両方と組んで
どちらに転んでも半分は戻るよう計画した
アクメットはアグラにいて砦に入りたがっている
奴が司令長官に捕まれば縛り首か銃殺だ
宝石は政府に取り上げられて得する人間はいない
私は心の底から仲間になると言った
アクメットがシーク教徒と来て、誰何の声をかけると
助けを求めてすがる
2人のシーク教徒はアクメットを殺そうとして逃げて来た所に
スモールが転ばせて、とどめが刺された
これがバレたら軍法会議で銃殺は免れない
死体を埋葬し、宝を取り出して目録を作り
秘密を守ると誓い、そこに隠し
地図を作り、4人の署名を添えた
ウィルスンがデリーを占領し
私らはアクメット殺しで逮捕された
アクメットは召使をスパイにしていて軍曹に話したため
法廷では宝の話はまったく出なかった
4人は無期懲役になった
私は植民地のブレア島に移されて軍医の助手もやった
軍医は賭け事が大好きで、常連はショルトー少佐、モースタン大尉ら
勝つのはいつも役人で負けるのはいつも軍人
負けっぷりが一番ひどかったのが少佐
少佐が「辞表を出さなければならなくなった」と話すのを聞いた
50万ポンドの宝のありかを教える代わりに
4人の脱獄に協力してくれと頼むと
モースタン大尉を連れて来て1/5の分け前に決まった
少佐らは小舟と食糧を用意するだけ
宝の地図を渡して、そこに4人の署名を書いた
ショルトーはインドに行ったきり
叔父の遺産が入ったとウソをついて戻らず
モースタンが行くと宝は消えていた
私は復讐を誓った
ある日、軍医が熱病にかかり、島人が手当てをして回復した
島人は私が気に入り、どこにでもついて来た
それがトンガで船を漕ぐのが得意
囚人監視員がいたため義足で殴り倒した
途中で貿易船に助けられ、数年前にようやくイギリスに着いた
ショルトーは2人の息子とボクシング選手を雇って警備させていた
死にかけていると聞き、窓越しに覗いた時、ちょうど死んだと分かった
4人の署名を胸にピンで留めた
トンガを人食い人種だと言って、縁日の見世物にして
2人の食い代を稼いでいた
トンガはするすると屋根から忍び込み
ショルトーを殺して得意げになっていたためロープで引っぱたいた
宝を持って出て行った
これが真相です
ホームズ:まったく驚くべき話だ
スモールは逮捕される
ワトソン:
この事件を最後に私は君の方法を研究する機会はなくなると思う
モースタンがプロポーズを承知してくれたんだ
ホームズ:
正直、おめでとうと言う気にはなれないね
恋は感情的なもので、感情的なものはすべて
僕がなにより尊重する冷静で正しい理性と対立する
僕は絶対結婚しない
早くも反作用が始まっている
1週間はぼろきれみたいになるだろう
僕にはとびきり怠け者の素質と
非常に活動的な素質が同居している
ゲーテの詩を思い出す
自然がお前をただ一人の人間にしかつくらなかったのが残念だ
価値ある人とも、したたかな悪党ともなれたものを
ワトソン:
私は妻を手に入れ、ジョーンズは名誉を勝ち得た
君には何が残っている?
ホームズ:まだこのコカインの瓶が残っているさ(驚
■シャーロック・ホームズを推理する 各務三郎
(小説内の料理について熱く語っているが
私は食べ物に興味がないためついていけない
食卓では政治・宗教を話題にしてはいけないのが西洋のテーブルマナー
新聞のテレビ欄には1日に1ダースもの料理番組が放映されている
(今も変わらないね
探偵小説にも料理が登場する
アガサの『火曜クラブ』など
第一次世界大戦後のイギリス中流家庭の風俗・習慣が上手く書かれている
料理が事件の鍵となる場合もたくさんある
「探偵小説は、美味しい料理に似ている」と言われる
どんな主義主張の人でも気楽に楽しめるからかもしれない
(メグレ警視を例にあげる
食べ物はその国の文化と言われる
私はハメットのスペード探偵が好きだ
ジョンの店の2階は、ハメット記念室になっていて
映画『マルタの鷹』のスチール写真などがある
アメリカの探偵で美食家といえば、ネロ・ウルフ探偵が有名
作者のスタウトは、料理をすべて二度作り
いけるとなって初めて作品に使った
NY市のアメリカ料理学院で
100人を超すホームズファンたちの記念集会が開かれ
ホームズにちなんだ料理が出された
そこにジュリア・C・ローゼンブラットという女性がいた
『シャーロック=ホームズとの食事』を書いた
ホームズが美食家かというと疑問だ
19C半ばのイギリスの食事は
朝食、朝のお茶、昼食、午後のお茶、肉料理つき午後のお茶、夕食
しかも昼食や夕食は12品くらい出た(驚
『シャーロック=ホームズ家の料理読本』は
ハドスン夫人が下宿人のホームズとワトソンにこしらえた料理とレシピをメモしたという体裁
■作品解説
映画『ロシアから愛をこめて』でモーターボートのチェイスシーンを見た時
本書を思い出した
『踊る人形』は暗号解読が主となる「パズル小説(謎解き小説)」
ホームズ物語には、スパイ小説、恐怖小説、サスペンスもある
現代の探偵小説のすべての分野にわたる
冒険小説と言われるのは、ホームズのフェア精神と行動のため
モリアーティ教授を「敵ながらあっぱれ」と褒め
金持ち、貧乏などに惑わされず、心がけを見る人間性の尊重
困難な謎に正面から挑戦する神話の英雄と同じ
だからこそ、いつ読んでも爽やかな気持ちになれるのです