すごい前に録画したのを今ごろ観た
・マンガ感想メモリスト1
・少女漫画の神さま~萩尾望都@漫勉
・萩尾望都先生インタビュー #1
「100分de萩尾望都」を観た後に急にYouTubeのおすすめに出てきた/驚
出演:カズレーザー、安部みちこ


戦後、少年マンガ全盛の1960年代後半に登場し
70年代に突如として花開いた少女マンガ
個性豊かな女性漫画家が新時代を開拓
その1人、萩尾望都はデビューから50年
トップランナーとして少女マンガに革命を起こした





女優さんみたい



萩尾望都ファン4人が語る

●出逢ったきっかけ
ヤマザキマリ 漫画家
お小遣いで買った2冊『少年よ 萩尾望都イラスト詩集』


夢枕獏 小説家 『11人いる!』で驚いて少女マンガを買い占めた
小谷真理 SF・ファンタジー評論家 歯医者に置いてあった『ビアンカ』
中条省平 フランス文学者・学習院大学教授
男子校でスポ根ばかり読んでいたが『ポーの一族』がすごいと噂があって少女雑誌を買った
■第1章 性別を越境する少女漫画
小谷さんの推し『トーマの心臓』
小谷:文学そのもの かなり難解だが分からなさ自体が魅力

あらすじ:
ギムナジウムの生徒トーマは鉄橋から身投げする



ユーリに届いた遺書

トーマにそっくりな転校生エーリクが来て驚くが性格はトーマと逆

エーリクの最愛の母が事故死
ユーリはエーリクと向き合う
トーマの死の意味は翼をユーリにあげるためと理解し、神学校へ入る列車に乗る

●BLの先駆的な作品
それまでは少女が主人公が当たり前

女性が良妻賢母に縛られていた時代
ウーマンリブ 女の子も自由でいいという文化が入ってきた
ヤマザキマリ:実際のギムナジウムはもっと汗臭くてがさつw
夢枕獏:14歳の神秘性 美しいファンタジーのイメージを作った
“人は二度死ぬという
まず自己の死
そしてのち友人に去られることの死”
アガペー:神から人間への自己犠牲的な愛
小谷:
キリスト教で自殺は許されない
ユーリの罪は性暴力を受けている 魂の殺人
ユーリを生かすためにトーマが捧げた
ギムナジウムはSFの異世界
たとえ話として苦しい現実を考える
世界全体を相対化する
女性の性暴力は生々しすぎる
それを許して肩代わりするのは救いになる
●1949年 福岡生まれ

幼い頃、絵を描いたり、話を書くのが大好きで
自己流でマンガを描くようになる
高校時代、手塚治虫『新選組』に衝撃を受けて漫画家になることを決意
20歳、両親の反対を押し切って『ルルとミミ』でデビュー

上京 同世代の女性漫画家と共同生活しながら創作
出版社に原稿を持ち込んでも断られる日々が続いた


インタビュー

萩尾望都:
ボツが2年くらい続いてすごく悩みました
私の作家感性は間違っていない 絵がヘタなだけw
技術上げなきゃと軌道修正しながら
その時のイメージイラストが『トーマの心臓』だった


きっかけはフランス映画『寄宿舎~悲しみの天使~』少年同士の恋愛悲劇

その笑顔がとてもステキで頭から離れなくなって
自分ならこの続きを書きたいと思って描き始めた
女の子が乱暴、木に登ったりするたびに言い訳しなきゃいけないと気づいた
男の子はそれが不要
少女は不自由だけど、少年は自由なんだと目覚めた
女の子は自分で自分に枷を作る(周りの影響だけどなあ
竹宮恵子が『風と木の詩』を発表 2作は元祖BL作品と言われた

●花の24年組

ヤマザキマリ:それまでは少女マンガも男性作家が手掛けていた
石ノ森章太郎『水色のリボン』
赤塚不二夫『ひみつのアッコちゃん』
ある種、既成概念的
女性が描くと怖い
山岸凉子『日出処の天子』(!
中条:
時間表現を変えた
少年は成長する 勝利に向かって一直線 コマがきっちり
少女マンガの時間は停滞、深い哲学を表現 誰が喋ってるか分からない
現実、夢、過去、幻想が並列される コマ割りを変えてしまった
■第2章 家族という病
ヤマザキマリさんの推し『半神』
マリ:カフカのような短編

あらすじ:
体の繋がった結合双生児が主人公

美しく無邪気だが知能が低いユーシー
姉のユージーは優れた知能を持つが
妹に養分を吸われて醜くやせ細っている
父からも理解されない
“いっそ妹を殺したい わたしの不幸はそれほど深い”


2人に命の危険が迫り、リスクの高い分離手術を行う
やせ細ったかつての自分のようになったユーシーはその後亡くなる
ユージーは美しく成長するが、鏡を見ると妹の姿
ユージー:愛よりももっと深く愛していたよ おまえを(なんと切ない・・・
ヤマザキマリ:古代ギリシア人が読んでも、現代人が読んでも絶対心に突き刺さる
●人間の中の二面性
ヤマザキマリ:
双子という見方を止めて、1人の大人として捉えてみた
自分が思う自分と、世間が見ている自分が一心同体になった存在
少女は、求められる自分になり、本来の自分を捨てる
鏡で見た時、喪失感を感じる
カズレーザー:
親のルッキズムもひどい
ユージーが死んだことになってる
夢枕獏:神という言葉を使っているのもスゴイ
中条:なぜ神はこんな私を作ったのか、と問うている
『イグアナの娘』
(ドラマで観て衝撃的だったなあ!
ヤマザキマリ:
母と娘の関係は深刻
彼女はいち早くそれを取り上げていた

あらすじ:
母は長女を産むと醜いイグアナに見えて愛せない
次女はフツーのかわいい女の子に見えるため次女ばかり可愛がり
長女も自分がイグアナに見えるようになる

神さまが魂と体を入れ違えたのよ
ガラパゴスに本当の両親がいると思い込む

恋愛、結婚 親元を離れると幸せを実感するが
出産した娘は人間の姿で困惑して愛せないリカ
母の訃報にホッとして、悲しくないリカ
リカ:私は冷血動物のイグアナなんだ
死に顔を見ると、母もイグアナで驚く
夢の中のガラパゴスでイグアナの母と会う
母の辛さを知って許し、我が子も愛するようになる
(ドラマと違う?
小谷:
自分も息子と娘に対する態度がどうしても違うと悩む
娘に過剰に反応する 自分とイヤなところ、理想と重ねて涙が出た
ヤマザキマリ:
なぜありのままの自分を愛してもらえないのか
今日の親子関係に問う
夢枕獏:
萩尾さんも自分の両親との問題があった
『ポーチで少女が子犬と』
あの子はおかしい 空がキレイとかばっかり言ってると抹殺する話
ヤマザキマリ:
私の母もマンガを否定して、『テルマエ・ロマエ』がヒットするまで一切読まなかった
油絵を捨てて、道楽系に行ったとものすごく否定した
『ゲゲゲの女房』で水木さんの母親を見て
マンガに対して寛容になった(水木サン、すげー
ラスト
“どこかに母の涙が凝(こご)っている”(凝るって初耳
不穏な空気が残り続けている感じ
中条:
シルエットはヒトの女性
すべての母に共通する涙ととらえた
池の中にいる爬虫類は繰り返しを意味してる?

萩尾も母から「フツーの子と違う」と言われて認めてもらえず
漫画家として活躍しても変わらなかった
萩尾:
どうしてこんなに言葉、価値観が通じ合わないんだろう
観ている世界がまったく違うのでは?
私は宇宙語で人間ではないかもと思ったら諦めがつくと思った
片方を動物にしちゃえと思いついた
これを読んだ母は「あれば読んで泣いたたい」と言った
といっても、やっぱり「マンガやめなさい」(命令形なのも毒親の共通なのか
こごっていたのは“母の無念”
きっと母は無念のまま死んだだろうなとリカは思っている
「小さな生き物は?」
トカゲは母のイメージ 人間になりたかったお母さんの正体
●社会的にも母娘関係が注目

精神科医・斎藤環:
『イグアナの娘』は母娘問題を取り上げた先駆的作品だと取り上げている
母娘問題の特徴
女性としての身体が一緒というところ 洋服、色、仕草など
母娘関係は支配的になる こうありなさいと押し付けにならざるを得ない構造
(うん、命令調になるんだな
ご自身のナラティブ(物語を語ること)として表現して
葛藤、トラウマを浄化する
トラウマが1、浄化が100な感じ
トラウマを糧にするパワーがものすごくて驚く
■第3章 夢と現実のパラレルワールド
中条省平さんの推し『バルバラ異界』SF大作
中条:
2006年のSF大賞受賞(まだまだ知らない作品たくさんあるなあ!
恐ろしいほどの傑作
夢が一番重要 遺伝子、脳科学などの問題が入り込む

あらすじ:
2052年 他人の夢に潜入できる夢先ガイドの時夫に依頼が来る
7年間眠り続ける青羽の夢に潜る


9歳の時、母が父を殺し、その心臓を食わせて(!)自死した(重すぎる・・・
そのショックで深い眠りに入った
夢の中で青羽はバルバラで暮らしている
ヒトが空を飛べるユートピア

時夫の息子キリヤは、父を憎み、コンピューター上の世界をバルバラとしている
青羽の世界とソックリで驚く時夫
事件を調べるため、青羽の祖母・菜々美を訪ねる
若返り薬バルバラを開発させている(面白い
青羽は火星こそが生命の起源だと告げる
まもなく火星と地球の生命体は再び一つになり永遠の命を持つようになる
(スピリチュアルだな
時夫が再び夢のバルバラに入ると、死んだ人間の心臓を食べる儀式がある
食べることで永遠の命が約束される(コワイ・・・ そんな命要らない
ヤマザキマリ:萩尾先生は膨大な量のSFを読んでいる

「バルバラとは?」
約100年後の世界 予知夢に生きている
時夫が時空を行ったり来たりしている
カニバリズムと結びついた不老不死への欲望
心臓の筋肉にあるバルバラプロテインは消化吸収されないから
脳に届いて、封印されていた記憶を解き放つ
2002年当時、狂牛病が流行
『ポーの一族』では表面的な姿が保たれる永遠の命
本作は記憶の継承による不老不死なのが今風
時夫は心肺停止となり、バルバラでトキと親子のように過ごす
キリヤは火星の体験をする
キリヤ:
オレは1つになるのはイヤだ オレはオレだもの
目覚めた君と話がしたい

母から出生の秘密が明かされる
タカという少年と入れ替わっていた
タカは遺伝子操作で生まれた
キリヤは事故死
タカが現れ、夢と現実が入れ替わる?
バルバラは火星との戦争で消える
青羽が歴史を改変し、地球は救われる
青羽は老衰で亡くなる
(ネタバレされちゃったけど読みたいな
「パンスペルミア説」
生命の起源は地球外にあったという説
近年は火星が有力な惑星とされる
中条:
火星は原初のユートピア
すべての生命がとけあって1つになる素晴らしさと
個々が孤独な地球の対比は
ある種、カルト宗教的なファシズム(全体主義)的な誘惑
生命の統一性の回復は危険かも
(スピリチュアルとは捉えないのか
ヤマザキマリ:
第一次世界大戦後、ドイツからヒトラーが出た
俯瞰で状況が見えなくなる
夢枕獏:コロナでどうしたらいいか教えてと外に問う
ヤマザキマリ:まとめてくれる人を待ってるのとも重なる
中条:
人間は必ず死ぬ キリヤのほうに萩尾さんは肩入れしている
言葉を介してでないと、本当の意味で人間にはなれないというメッセージを感じる
血がつながらなくても親子関係は築けるという希望
時夫は珍しい父親像
夢枕獏:息子のために心を砕く父親はあまり見られない
『残酷な神が支配する』
父親による性的虐待を描いたサイコサスペンス
萩尾:
サディスティックな父親を登場させて義理の息子をいじめる
怖いお父さんが人間レベルまで降りて来た
大人、社会がコワイという気持ちを描いて片付ける体験ができたのが面白かった
最後のセリフを読み解く
“未来はきみらを愛しているか?”
きみたち=子どもたち 未来を変えられるかもしれない
ヒトは神に操られて運命のままに生きているのか
個人の意志で切り開けるのかオイディプス以来の大問題を埋め込んでいる
萩尾さんはSF少女マンガという新たなジャンルを開拓した
幼い頃からの「ここではないどこか」への強い憧れがあった
萩尾:
本当に妄想系の子どもだった
SFはあるかもしれないもう1つの現実を描く
思考の幅がすごく好き
現実は書いててちょっと辛い 空想の世界に遊ばせてくださいw
■第4章 人間ならざるものの孤独
夢枕獏さんの推し『ポーの一族』
萩尾さんとの親交は数十年
読んだ人の魂が透き通る

発表順は飛び飛びで時系列とは違う

1960~1970年代初頭 男たちによる革命の時代
その後の経済成長 おお!太陽の塔が出てきた!

あらすじ:
エドガーはバンパネラと呼ばれる吸血鬼
200年の時を超えて生きる物語

1744年 妹メリーベルと森に捨てられる
育てたのは吸血鬼のポー一族
秘密の儀式を見てしまい14歳で吸血鬼にされてしまう
1879年 養父母の男爵夫妻の目的は新しい生贄を手に入れるため
同い年のアランに出会う
医師クリフォードは正体を見破り
メリーベルは銀の弾丸に撃たれて消滅
“僕は行くけど、君はどうする? おいでよ 一人ではさびしすぎる”
アランも仲間に加え不老不死となる



小谷:吸血鬼のイメージが変わった 醜いモンスターから美しく儚いもの
夢枕獏:
14歳という設定が素晴らしい
萩尾作品につねに出てくる醜いアヒルの子
集団の中で違和感をもつ子が
どうやって世間と折り合いをつけていくか
異形のものの中でエドガーは究極のマイノリティ
子どもの姿のままでは疑われるため、2年間しか同じ土地にいられない
永遠に時空を旅する宿命
“1人ではさびしすぎる”
萩尾さんが少女マンガ家として生きる上の肉声が入ってる
創作に入った人間は孤独
エドガー=萩尾望都
萩尾さんも特殊な才能を持って生まれたのでシンクロする
世間でどんな立ち位置をとるか重要な問題
描くことで自身を確かめたのではないか
「絵の特徴」
ヤマザキマリ:
萩尾ワールドが凝縮されている
その後の少女マンガのパターンが全部入ってる
実際サラサラと描いて見せるのもスゴイ!
1.顔の特徴は鼻がない 左から描くだけで、その人が真似してると分かる
2.風が吹いている
3.花びらが舞う

目の形
これまで大きな目に星がいっぱい
萩尾さんはリアル 奥が深い まつ毛がかかっている 黒目がち
これを描くのにどれだけの時間を費やしたのかと思う

●宝塚 2018年 エドガー役は明日海りお

インタビュー(厚い化粧を落とすとガラっと印象が変わるな/驚

りお:
少年のままの人恋しさや、人との触れ合いに憧れ、求める気持ち
時を超えて生きて、精神年齢はずっと年上で達観している
何回もマンガを読みこんで、先生の心を想像しながら演じた
2021年1月から3年ぶりに舞台化
あらすじのつづき:
20世紀 イギリス
19世紀に描かれたランプトンの肖像画が残されている
オービン卿は証言を集め、2人を生け捕りにしようと考える
館で火事になり絵が燃える
1人の少女が犠牲となる
10年後 エディスという少女に出会う
館で焼死した少女の妹 アランはエディスに惹かれ、アランとすれ違う
爆発事故でエディスを助けようとしてアランは炎に巻き込まれる

オービン卿はエドガーの物語を書く

“エドガー おまえに私のはるかなおまえに
そして、そのポーの一族によせて”
1976年 ポーの一族の物語を封印した萩尾望都
夢枕獏:死んでない説を考えたが考えつかなかった
中条:根本的な孤独はもっと深いもの 死んだ結末で納得した
「永遠と一瞬の物語」
夢枕獏:
“いっしょにおいでよ”のセリフから“明日へは行かない”までの物語
いろんな悲しみを何百年も背負って生きなきゃならない
オービンは理解できてない
オービンはオレ 美しいものを見た時、探しに行く作家
中条:生み出すことがない存在を分かっている
日本の対局 生産至上主義=男性至上主義に対するアンチテーゼ
働くお父さんを一家で応援する70年代なかば
少女に愛、結婚、出産、子育てが与えられ、吸血鬼はそれがかなわない存在
萩尾さんの最愛のキャラクターはエドガー
萩尾:
社会から異端だと否定され、嫌われているが心を持っている
「どうしてちゃんと出来ないの」と母から言われてきた自分と重なる
日本の教育的文化背景の中で失敗したりする子に心があると思っていない
何を言ってもいい、どんな教育をしても良い
「バカ」「ダメだ」「死んじまえ」とか言ってもそれが許される
でも言われる子はツライ 心があるから
そういう立場としてエドガーを描いた
(それに共感して、感動するのは、まだそういう文化が根深く残っている証拠だな
●2016年 40年ぶりに『ポーの一族』の最新作発表
エドガーが蘇り、時代を超えて旅を再開


萩尾:
エドガーとアランの2人が待っていた
40年ぐらい放っておいたけど、彼らは吸血鬼だから歳をとらないw
昨日お別れ会みたいな顔して「待ってたよ」て感じで
こんなことがあったよってまた喋り始めた
なんか捨てたお母さんみたいな気分になっちゃった ごめんね
あなたたち元気だったのねって
それからずっと話を聞かせてもらっている感じです
夢枕獏:
会うたびに『ポーの一族』のつづき読みたいと
ずっと言い続けてきたので本当に嬉しかった
中条:勲章をもらいましたけど、足りない 人間国宝にしろ!
萩尾:
表現できるという手段を手に入れられただけでも
すごい幸福なんじゃないかと思います(そうだよなあ!
載せてくれる本があって
読んでくれる読者がいて
ほんとに良かった ありがたいと思って

・マンガ感想メモリスト1
・少女漫画の神さま~萩尾望都@漫勉
・萩尾望都先生インタビュー #1
「100分de萩尾望都」を観た後に急にYouTubeのおすすめに出てきた/驚
出演:カズレーザー、安部みちこ


戦後、少年マンガ全盛の1960年代後半に登場し
70年代に突如として花開いた少女マンガ
個性豊かな女性漫画家が新時代を開拓
その1人、萩尾望都はデビューから50年
トップランナーとして少女マンガに革命を起こした





女優さんみたい



萩尾望都ファン4人が語る

●出逢ったきっかけ
ヤマザキマリ 漫画家
お小遣いで買った2冊『少年よ 萩尾望都イラスト詩集』


夢枕獏 小説家 『11人いる!』で驚いて少女マンガを買い占めた
小谷真理 SF・ファンタジー評論家 歯医者に置いてあった『ビアンカ』
中条省平 フランス文学者・学習院大学教授
男子校でスポ根ばかり読んでいたが『ポーの一族』がすごいと噂があって少女雑誌を買った
■第1章 性別を越境する少女漫画
小谷さんの推し『トーマの心臓』
小谷:文学そのもの かなり難解だが分からなさ自体が魅力

あらすじ:
ギムナジウムの生徒トーマは鉄橋から身投げする



ユーリに届いた遺書

トーマにそっくりな転校生エーリクが来て驚くが性格はトーマと逆

エーリクの最愛の母が事故死
ユーリはエーリクと向き合う
トーマの死の意味は翼をユーリにあげるためと理解し、神学校へ入る列車に乗る

●BLの先駆的な作品
それまでは少女が主人公が当たり前

女性が良妻賢母に縛られていた時代
ウーマンリブ 女の子も自由でいいという文化が入ってきた
ヤマザキマリ:実際のギムナジウムはもっと汗臭くてがさつw
夢枕獏:14歳の神秘性 美しいファンタジーのイメージを作った
“人は二度死ぬという
まず自己の死
そしてのち友人に去られることの死”
アガペー:神から人間への自己犠牲的な愛
小谷:
キリスト教で自殺は許されない
ユーリの罪は性暴力を受けている 魂の殺人
ユーリを生かすためにトーマが捧げた
ギムナジウムはSFの異世界
たとえ話として苦しい現実を考える
世界全体を相対化する
女性の性暴力は生々しすぎる
それを許して肩代わりするのは救いになる
●1949年 福岡生まれ

幼い頃、絵を描いたり、話を書くのが大好きで
自己流でマンガを描くようになる
高校時代、手塚治虫『新選組』に衝撃を受けて漫画家になることを決意
20歳、両親の反対を押し切って『ルルとミミ』でデビュー

上京 同世代の女性漫画家と共同生活しながら創作
出版社に原稿を持ち込んでも断られる日々が続いた


インタビュー

萩尾望都:
ボツが2年くらい続いてすごく悩みました
私の作家感性は間違っていない 絵がヘタなだけw
技術上げなきゃと軌道修正しながら
その時のイメージイラストが『トーマの心臓』だった


きっかけはフランス映画『寄宿舎~悲しみの天使~』少年同士の恋愛悲劇

その笑顔がとてもステキで頭から離れなくなって
自分ならこの続きを書きたいと思って描き始めた
女の子が乱暴、木に登ったりするたびに言い訳しなきゃいけないと気づいた
男の子はそれが不要
少女は不自由だけど、少年は自由なんだと目覚めた
女の子は自分で自分に枷を作る(周りの影響だけどなあ
竹宮恵子が『風と木の詩』を発表 2作は元祖BL作品と言われた

●花の24年組

ヤマザキマリ:それまでは少女マンガも男性作家が手掛けていた
石ノ森章太郎『水色のリボン』
赤塚不二夫『ひみつのアッコちゃん』
ある種、既成概念的
女性が描くと怖い
山岸凉子『日出処の天子』(!
中条:
時間表現を変えた
少年は成長する 勝利に向かって一直線 コマがきっちり
少女マンガの時間は停滞、深い哲学を表現 誰が喋ってるか分からない
現実、夢、過去、幻想が並列される コマ割りを変えてしまった
■第2章 家族という病
ヤマザキマリさんの推し『半神』
マリ:カフカのような短編

あらすじ:
体の繋がった結合双生児が主人公

美しく無邪気だが知能が低いユーシー
姉のユージーは優れた知能を持つが
妹に養分を吸われて醜くやせ細っている
父からも理解されない
“いっそ妹を殺したい わたしの不幸はそれほど深い”


2人に命の危険が迫り、リスクの高い分離手術を行う
やせ細ったかつての自分のようになったユーシーはその後亡くなる
ユージーは美しく成長するが、鏡を見ると妹の姿
ユージー:愛よりももっと深く愛していたよ おまえを(なんと切ない・・・
ヤマザキマリ:古代ギリシア人が読んでも、現代人が読んでも絶対心に突き刺さる
●人間の中の二面性
ヤマザキマリ:
双子という見方を止めて、1人の大人として捉えてみた
自分が思う自分と、世間が見ている自分が一心同体になった存在
少女は、求められる自分になり、本来の自分を捨てる
鏡で見た時、喪失感を感じる
カズレーザー:
親のルッキズムもひどい
ユージーが死んだことになってる
夢枕獏:神という言葉を使っているのもスゴイ
中条:なぜ神はこんな私を作ったのか、と問うている
『イグアナの娘』
(ドラマで観て衝撃的だったなあ!
ヤマザキマリ:
母と娘の関係は深刻
彼女はいち早くそれを取り上げていた

あらすじ:
母は長女を産むと醜いイグアナに見えて愛せない
次女はフツーのかわいい女の子に見えるため次女ばかり可愛がり
長女も自分がイグアナに見えるようになる

神さまが魂と体を入れ違えたのよ
ガラパゴスに本当の両親がいると思い込む

恋愛、結婚 親元を離れると幸せを実感するが
出産した娘は人間の姿で困惑して愛せないリカ
母の訃報にホッとして、悲しくないリカ
リカ:私は冷血動物のイグアナなんだ
死に顔を見ると、母もイグアナで驚く
夢の中のガラパゴスでイグアナの母と会う
母の辛さを知って許し、我が子も愛するようになる
(ドラマと違う?
小谷:
自分も息子と娘に対する態度がどうしても違うと悩む
娘に過剰に反応する 自分とイヤなところ、理想と重ねて涙が出た
ヤマザキマリ:
なぜありのままの自分を愛してもらえないのか
今日の親子関係に問う
夢枕獏:
萩尾さんも自分の両親との問題があった
『ポーチで少女が子犬と』
あの子はおかしい 空がキレイとかばっかり言ってると抹殺する話
ヤマザキマリ:
私の母もマンガを否定して、『テルマエ・ロマエ』がヒットするまで一切読まなかった
油絵を捨てて、道楽系に行ったとものすごく否定した
『ゲゲゲの女房』で水木さんの母親を見て
マンガに対して寛容になった(水木サン、すげー
ラスト
“どこかに母の涙が凝(こご)っている”(凝るって初耳
不穏な空気が残り続けている感じ
中条:
シルエットはヒトの女性
すべての母に共通する涙ととらえた
池の中にいる爬虫類は繰り返しを意味してる?

萩尾も母から「フツーの子と違う」と言われて認めてもらえず
漫画家として活躍しても変わらなかった
萩尾:
どうしてこんなに言葉、価値観が通じ合わないんだろう
観ている世界がまったく違うのでは?
私は宇宙語で人間ではないかもと思ったら諦めがつくと思った
片方を動物にしちゃえと思いついた
これを読んだ母は「あれば読んで泣いたたい」と言った
といっても、やっぱり「マンガやめなさい」(命令形なのも毒親の共通なのか
こごっていたのは“母の無念”
きっと母は無念のまま死んだだろうなとリカは思っている
「小さな生き物は?」
トカゲは母のイメージ 人間になりたかったお母さんの正体
●社会的にも母娘関係が注目

精神科医・斎藤環:
『イグアナの娘』は母娘問題を取り上げた先駆的作品だと取り上げている
母娘問題の特徴
女性としての身体が一緒というところ 洋服、色、仕草など
母娘関係は支配的になる こうありなさいと押し付けにならざるを得ない構造
(うん、命令調になるんだな
ご自身のナラティブ(物語を語ること)として表現して
葛藤、トラウマを浄化する
トラウマが1、浄化が100な感じ
トラウマを糧にするパワーがものすごくて驚く
■第3章 夢と現実のパラレルワールド
中条省平さんの推し『バルバラ異界』SF大作
中条:
2006年のSF大賞受賞(まだまだ知らない作品たくさんあるなあ!
恐ろしいほどの傑作
夢が一番重要 遺伝子、脳科学などの問題が入り込む

あらすじ:
2052年 他人の夢に潜入できる夢先ガイドの時夫に依頼が来る
7年間眠り続ける青羽の夢に潜る


9歳の時、母が父を殺し、その心臓を食わせて(!)自死した(重すぎる・・・
そのショックで深い眠りに入った
夢の中で青羽はバルバラで暮らしている
ヒトが空を飛べるユートピア

時夫の息子キリヤは、父を憎み、コンピューター上の世界をバルバラとしている
青羽の世界とソックリで驚く時夫
事件を調べるため、青羽の祖母・菜々美を訪ねる
若返り薬バルバラを開発させている(面白い
青羽は火星こそが生命の起源だと告げる
まもなく火星と地球の生命体は再び一つになり永遠の命を持つようになる
(スピリチュアルだな
時夫が再び夢のバルバラに入ると、死んだ人間の心臓を食べる儀式がある
食べることで永遠の命が約束される(コワイ・・・ そんな命要らない
ヤマザキマリ:萩尾先生は膨大な量のSFを読んでいる

「バルバラとは?」
約100年後の世界 予知夢に生きている
時夫が時空を行ったり来たりしている
カニバリズムと結びついた不老不死への欲望
心臓の筋肉にあるバルバラプロテインは消化吸収されないから
脳に届いて、封印されていた記憶を解き放つ
2002年当時、狂牛病が流行
『ポーの一族』では表面的な姿が保たれる永遠の命
本作は記憶の継承による不老不死なのが今風
時夫は心肺停止となり、バルバラでトキと親子のように過ごす
キリヤは火星の体験をする
キリヤ:
オレは1つになるのはイヤだ オレはオレだもの
目覚めた君と話がしたい

母から出生の秘密が明かされる
タカという少年と入れ替わっていた
タカは遺伝子操作で生まれた
キリヤは事故死
タカが現れ、夢と現実が入れ替わる?
バルバラは火星との戦争で消える
青羽が歴史を改変し、地球は救われる
青羽は老衰で亡くなる
(ネタバレされちゃったけど読みたいな
「パンスペルミア説」
生命の起源は地球外にあったという説
近年は火星が有力な惑星とされる
中条:
火星は原初のユートピア
すべての生命がとけあって1つになる素晴らしさと
個々が孤独な地球の対比は
ある種、カルト宗教的なファシズム(全体主義)的な誘惑
生命の統一性の回復は危険かも
(スピリチュアルとは捉えないのか
ヤマザキマリ:
第一次世界大戦後、ドイツからヒトラーが出た
俯瞰で状況が見えなくなる
夢枕獏:コロナでどうしたらいいか教えてと外に問う
ヤマザキマリ:まとめてくれる人を待ってるのとも重なる
中条:
人間は必ず死ぬ キリヤのほうに萩尾さんは肩入れしている
言葉を介してでないと、本当の意味で人間にはなれないというメッセージを感じる
血がつながらなくても親子関係は築けるという希望
時夫は珍しい父親像
夢枕獏:息子のために心を砕く父親はあまり見られない
『残酷な神が支配する』
父親による性的虐待を描いたサイコサスペンス
萩尾:
サディスティックな父親を登場させて義理の息子をいじめる
怖いお父さんが人間レベルまで降りて来た
大人、社会がコワイという気持ちを描いて片付ける体験ができたのが面白かった
最後のセリフを読み解く
“未来はきみらを愛しているか?”
きみたち=子どもたち 未来を変えられるかもしれない
ヒトは神に操られて運命のままに生きているのか
個人の意志で切り開けるのかオイディプス以来の大問題を埋め込んでいる
萩尾さんはSF少女マンガという新たなジャンルを開拓した
幼い頃からの「ここではないどこか」への強い憧れがあった
萩尾:
本当に妄想系の子どもだった
SFはあるかもしれないもう1つの現実を描く
思考の幅がすごく好き
現実は書いててちょっと辛い 空想の世界に遊ばせてくださいw
■第4章 人間ならざるものの孤独
夢枕獏さんの推し『ポーの一族』
萩尾さんとの親交は数十年
読んだ人の魂が透き通る

発表順は飛び飛びで時系列とは違う

1960~1970年代初頭 男たちによる革命の時代
その後の経済成長 おお!太陽の塔が出てきた!

あらすじ:
エドガーはバンパネラと呼ばれる吸血鬼
200年の時を超えて生きる物語

1744年 妹メリーベルと森に捨てられる
育てたのは吸血鬼のポー一族
秘密の儀式を見てしまい14歳で吸血鬼にされてしまう
1879年 養父母の男爵夫妻の目的は新しい生贄を手に入れるため
同い年のアランに出会う
医師クリフォードは正体を見破り
メリーベルは銀の弾丸に撃たれて消滅
“僕は行くけど、君はどうする? おいでよ 一人ではさびしすぎる”
アランも仲間に加え不老不死となる



小谷:吸血鬼のイメージが変わった 醜いモンスターから美しく儚いもの
夢枕獏:
14歳という設定が素晴らしい
萩尾作品につねに出てくる醜いアヒルの子
集団の中で違和感をもつ子が
どうやって世間と折り合いをつけていくか
異形のものの中でエドガーは究極のマイノリティ
子どもの姿のままでは疑われるため、2年間しか同じ土地にいられない
永遠に時空を旅する宿命
“1人ではさびしすぎる”
萩尾さんが少女マンガ家として生きる上の肉声が入ってる
創作に入った人間は孤独
エドガー=萩尾望都
萩尾さんも特殊な才能を持って生まれたのでシンクロする
世間でどんな立ち位置をとるか重要な問題
描くことで自身を確かめたのではないか
「絵の特徴」
ヤマザキマリ:
萩尾ワールドが凝縮されている
その後の少女マンガのパターンが全部入ってる
実際サラサラと描いて見せるのもスゴイ!
1.顔の特徴は鼻がない 左から描くだけで、その人が真似してると分かる
2.風が吹いている
3.花びらが舞う

目の形
これまで大きな目に星がいっぱい
萩尾さんはリアル 奥が深い まつ毛がかかっている 黒目がち
これを描くのにどれだけの時間を費やしたのかと思う

●宝塚 2018年 エドガー役は明日海りお

インタビュー(厚い化粧を落とすとガラっと印象が変わるな/驚

りお:
少年のままの人恋しさや、人との触れ合いに憧れ、求める気持ち
時を超えて生きて、精神年齢はずっと年上で達観している
何回もマンガを読みこんで、先生の心を想像しながら演じた
2021年1月から3年ぶりに舞台化
あらすじのつづき:
20世紀 イギリス
19世紀に描かれたランプトンの肖像画が残されている
オービン卿は証言を集め、2人を生け捕りにしようと考える
館で火事になり絵が燃える
1人の少女が犠牲となる
10年後 エディスという少女に出会う
館で焼死した少女の妹 アランはエディスに惹かれ、アランとすれ違う
爆発事故でエディスを助けようとしてアランは炎に巻き込まれる

オービン卿はエドガーの物語を書く

“エドガー おまえに私のはるかなおまえに
そして、そのポーの一族によせて”
1976年 ポーの一族の物語を封印した萩尾望都
夢枕獏:死んでない説を考えたが考えつかなかった
中条:根本的な孤独はもっと深いもの 死んだ結末で納得した
「永遠と一瞬の物語」
夢枕獏:
“いっしょにおいでよ”のセリフから“明日へは行かない”までの物語
いろんな悲しみを何百年も背負って生きなきゃならない
オービンは理解できてない
オービンはオレ 美しいものを見た時、探しに行く作家
中条:生み出すことがない存在を分かっている
日本の対局 生産至上主義=男性至上主義に対するアンチテーゼ
働くお父さんを一家で応援する70年代なかば
少女に愛、結婚、出産、子育てが与えられ、吸血鬼はそれがかなわない存在
萩尾さんの最愛のキャラクターはエドガー
萩尾:
社会から異端だと否定され、嫌われているが心を持っている
「どうしてちゃんと出来ないの」と母から言われてきた自分と重なる
日本の教育的文化背景の中で失敗したりする子に心があると思っていない
何を言ってもいい、どんな教育をしても良い
「バカ」「ダメだ」「死んじまえ」とか言ってもそれが許される
でも言われる子はツライ 心があるから
そういう立場としてエドガーを描いた
(それに共感して、感動するのは、まだそういう文化が根深く残っている証拠だな
●2016年 40年ぶりに『ポーの一族』の最新作発表
エドガーが蘇り、時代を超えて旅を再開


萩尾:
エドガーとアランの2人が待っていた
40年ぐらい放っておいたけど、彼らは吸血鬼だから歳をとらないw
昨日お別れ会みたいな顔して「待ってたよ」て感じで
こんなことがあったよってまた喋り始めた
なんか捨てたお母さんみたいな気分になっちゃった ごめんね
あなたたち元気だったのねって
それからずっと話を聞かせてもらっている感じです
夢枕獏:
会うたびに『ポーの一族』のつづき読みたいと
ずっと言い続けてきたので本当に嬉しかった
中条:勲章をもらいましたけど、足りない 人間国宝にしろ!
萩尾:
表現できるという手段を手に入れられただけでも
すごい幸福なんじゃないかと思います(そうだよなあ!
載せてくれる本があって
読んでくれる読者がいて
ほんとに良かった ありがたいと思って
