1979年初版 1979年重版 山主敏子/編訳 山下一徳/カバー図案 西村保史郎/カバー絵・口絵・挿絵
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【内容抜粋メモ】
登場人物
フロシャルデ 肖像画家
ディアーヌ 娘
ロール夫人 フロシャルデの再婚相手
ジョフレット 乳母
ロマネーシュ 御者
ブランシュ ピクトルデュ侯爵の娘
フェロン博士
マルスラン 甥
●ピクトルデュの館
フランスのジェボダン地方にある古い館では
昔、派手なパーティーが開かれていたが
今は寂れ果てている
肖像画家のフロシャルデは、8歳の娘ディアーヌが病気になり
静養させるために姉が院長をしているマンドの修道院から
アルルの近くの別荘に連れて帰る途中
馬車がひっくり返り、立ち往生してしまう
ディアーヌはベールをかぶった美しい女性に館に招かれたと言う
御者ロマネーシュの言うまま、まだ形が残っているローマ風の浴室で一泊するこにする
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●ベールをかぶった女
ロマネーシュはこの館には、ベールをかぶった女が現れ
招き入れるのを無視すると、馬車をひっくり返したりすると話す
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フロシャルデは貴婦人を描く際、本物より美しく若く描くことで人気を得ている
ディアーヌの母は娘を産んですぐ亡くなり、再婚した妻はオシャレが大好きで
ディアーヌを修道院に入れることを提案した
ディアーヌは館に泊った夜、美しい水の精に館を案内される
館は全盛期の時代に戻り、華やかなパーティーでは大勢が音楽に合わせて踊っている
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ディアーヌが願うと、神話の神々が額縁から抜け出して周り出す
ディアーヌの名前でもある月の女神も見て、目が覚める
館はもとの廃墟に戻り、ディアーヌは小石のモザイクを思い出に持ちかえる
泊まった浴室には「ディアーヌの浴室」と書かれていて驚く
見た美しいものを絵に描いてみたくなるが
当時、絵の教育を受けるのは、画家として生活する者だけで
父はひと財産つくり、娘はオシャレとお喋りをするだけのいいお嬢様に育てるつもりだった
●落ちぶれたお嬢さん
ピクトルデュ侯爵の娘ブランシュが話しかけてくる
フロシャルデ:私たちはご先祖の財産をなくして、地主並みの生活しかできなくなったの
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侯爵に食事に招かれる
侯爵は人はいいが、世間知らずで、教育を受けていない
不自由な暮らしと言っても、贅沢品が買えないというだけ
ブランシュ:
古い美術品は古美術を愛好するイタリアへ送ったら喜ばれたでしょうに
流行は変化しますから、保存すれば値打ちの出る時が来るかもしれない
ディアーヌは小石をもらったお礼に、トルコ玉の襟止めをブランシュにあげる
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●ロール夫人
ロール夫人はディアーヌも自分同様オシャレに着飾る
ロール夫人:
そんなたしなみの悪いことでは、良家の娘とは言えませんよ
女の子は女の子らしくするのがなによりです
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窮屈でたまらないディアーヌはまた時々熱を出して寝込むようになる
フロシャルデの知人で名医のフェロン博士:
ディアーヌを自由にさせて
ロール夫人には、娘を構うほかに気の引くことを見つけてあげるといい
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フロシャルデは夫人に前のように舞踏会やお茶の会に戻るようすすめる
●フェロン博士
ディアーヌはおもちゃ箱を片付けていて、大理石でできた小さな子どもの顔の彫刻に魅入る
フェロン博士に見せると、酒の神バッカスだという
フェロン博士:
ギリシアの芸術家は偉大な芸術を小さなものの中にまであらわした
ローマ人もギリシア人同様、生命を感じ取る力を持っているのだ
彫刻が生きていなければ、芸術品ではない
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フェロン博士とフロシャルデの芸術観は正反対でケンカになる
フェロン博士:
子どもの好きなものをバカにして笑うことがいかに子どもを誤らせるか
子どもの能力を伸ばそうとしないことが、どれほど苦しめるか
大人には分かっていない
ディアーヌは生まれながらの芸術家だが父親はまったく気づいていない
ディアーヌは博士の家にあるたくさんの古代芸術を見てデッサンする
●お母さまに会わせて
ロール夫人:
フロシャルデは娘に甘いし
フェロン博士がコルセットは体に悪いと止めさせた
あの子の母親は身分のいい者じゃなかった
フロシャルデはあの子には絵の才能などないと言っている
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ロール夫人が近所の婦人に話すのを聞いて、自分を愛していないと知り泣くディアーヌ
昔からいる乳母のジョフレットに実母についてしつこく訊ねる
ジョフレット:
お母さまは世界中で一番美しく尊い方でした
お母さまがちゃんと見ていてくださると思って
いつもお利巧にしていらっしゃれば不幸せではなくなります
ピクトルデュ館で見たベールの女がディアーヌに会いに来て
女:本当のお母さまは私です 私に顔を取り返してくれればいいのです
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フェロン博士は、ディアーヌにちゃんと勉強を教えるために引き取り
甥のマルスランが医者を継いで、自分の財産を2等分して譲りたいという
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ロール夫人の贅沢で借金をしているフロシャルデは申し出を受け
ディアーヌは博士の家に越す
●少女のねがい
博士はフロシャルデが持つディアーヌの母の肖像画を借りて渡すが
自分で顔を見つけ出すまでは見ないと誓うディアーヌ
父がロール夫人とお金のことで言い争うのを見て悲しむディアーヌ
その時に浮かんだ顔を描くと、ベールの女はようやく顔を見つけてくれたと喜ぶ
博士とジョフレットは絵を見てディアーヌの母ソックリだと驚き
父の肖像画を見て描いたのだと思い込む
フロシャルデ:
私の弟子でもこれほどの腕を持つ者はいない
今までお前の才能を疑ってすまなかった
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●なくなった財産
ディアーヌの才能は次第に世間に知られるようになる
ロール夫人は残った財産を持って実家に帰ってしまったため
ディアーヌは父をなぐさめるために実家に戻る
ある日、借金取りが来て、家、美術品、家具も差し押さえる
フロシャルデの描く美人画は流行遅れとなり人気が落ちて、注文がなくなる
ディアーヌは博士に持ち家の一軒を買ってくれたら、そこで暮らすと頼む
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フロシャルデに同情した土地の人がまた注文するようになる
ディアーヌは子どもの肖像画を描いて大評判となる
1年後、親子は博士に家賃が払えるほど収入が戻り
ロール夫人も帰ってくると、ディアーヌの悪口を言って評判を落とす
ブランシュはいとこと結婚して子爵夫人となって会いに来る
まだ貧しいままだが、身分にこだわっていて
以前、浴室だった部分を改築して住んでいると話す
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●拾った古いお金
ディアーヌはより美しいものを見るためにジョフレットを連れて旅行に出る
浴室はすっかり変えられ、美しい彫刻や絵も台無しになっていたが
どこからか声が聞こえる
声:
あなたの未来は母の心に任せなさい
2人で力を合わせて、理想の道を見つけましょう
苦しみをしのぶことは才能を伸ばしてくれます
庭で古い硬貨を拾い、調べてもらうとブランシュに約束する
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●若い女流画家
それまでデッサンとパステル画だけだったが
油絵の勉強も始め、ますます評判となる
ロール夫人はディアーヌが金の卵を産む鳥だと悟り、急に優しくふるまう
ディアーヌも金やモノに執着がないため、ロール夫人の贅沢に寛容になる
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改築にお金がかかって困っているブランシュは
博士を通じて、古銭を売って費用にあてる
その後、ディアーヌはマルスランと結婚
貧しい少女のためにアトリエを建てて、無料で教え、家族で仲良く暮らした
人に尽くすのが大きな喜びで
妖精が近づくのもそういう人たちのところ
■解説
ジョルジュ・サンド
1804年パリ生まれ
18歳でデュドパン男爵と結婚し、2人の子どもを産んだが別れて作家生活に入る
ミュッセやショパンとの恋愛事件は有名
後世に子どものための作品を書いた
本書は『おばあさまのお話』に入れたうちの1冊で原題は『ピクトルデュの館』
もう1編は『ものをいうカシの木』
その他『魔の沼』『愛の妖精』ほか
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
【内容抜粋メモ】
登場人物
フロシャルデ 肖像画家
ディアーヌ 娘
ロール夫人 フロシャルデの再婚相手
ジョフレット 乳母
ロマネーシュ 御者
ブランシュ ピクトルデュ侯爵の娘
フェロン博士
マルスラン 甥
●ピクトルデュの館
フランスのジェボダン地方にある古い館では
昔、派手なパーティーが開かれていたが
今は寂れ果てている
肖像画家のフロシャルデは、8歳の娘ディアーヌが病気になり
静養させるために姉が院長をしているマンドの修道院から
アルルの近くの別荘に連れて帰る途中
馬車がひっくり返り、立ち往生してしまう
ディアーヌはベールをかぶった美しい女性に館に招かれたと言う
御者ロマネーシュの言うまま、まだ形が残っているローマ風の浴室で一泊するこにする
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●ベールをかぶった女
ロマネーシュはこの館には、ベールをかぶった女が現れ
招き入れるのを無視すると、馬車をひっくり返したりすると話す
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ディアーヌの母は娘を産んですぐ亡くなり、再婚した妻はオシャレが大好きで
ディアーヌを修道院に入れることを提案した
ディアーヌは館に泊った夜、美しい水の精に館を案内される
館は全盛期の時代に戻り、華やかなパーティーでは大勢が音楽に合わせて踊っている
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ディアーヌが願うと、神話の神々が額縁から抜け出して周り出す
ディアーヌの名前でもある月の女神も見て、目が覚める
館はもとの廃墟に戻り、ディアーヌは小石のモザイクを思い出に持ちかえる
泊まった浴室には「ディアーヌの浴室」と書かれていて驚く
見た美しいものを絵に描いてみたくなるが
当時、絵の教育を受けるのは、画家として生活する者だけで
父はひと財産つくり、娘はオシャレとお喋りをするだけのいいお嬢様に育てるつもりだった
●落ちぶれたお嬢さん
ピクトルデュ侯爵の娘ブランシュが話しかけてくる
フロシャルデ:私たちはご先祖の財産をなくして、地主並みの生活しかできなくなったの
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侯爵に食事に招かれる
侯爵は人はいいが、世間知らずで、教育を受けていない
不自由な暮らしと言っても、贅沢品が買えないというだけ
ブランシュ:
古い美術品は古美術を愛好するイタリアへ送ったら喜ばれたでしょうに
流行は変化しますから、保存すれば値打ちの出る時が来るかもしれない
ディアーヌは小石をもらったお礼に、トルコ玉の襟止めをブランシュにあげる
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●ロール夫人
ロール夫人はディアーヌも自分同様オシャレに着飾る
ロール夫人:
そんなたしなみの悪いことでは、良家の娘とは言えませんよ
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窮屈でたまらないディアーヌはまた時々熱を出して寝込むようになる
フロシャルデの知人で名医のフェロン博士:
ディアーヌを自由にさせて
ロール夫人には、娘を構うほかに気の引くことを見つけてあげるといい
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フロシャルデは夫人に前のように舞踏会やお茶の会に戻るようすすめる
●フェロン博士
ディアーヌはおもちゃ箱を片付けていて、大理石でできた小さな子どもの顔の彫刻に魅入る
フェロン博士に見せると、酒の神バッカスだという
フェロン博士:
ギリシアの芸術家は偉大な芸術を小さなものの中にまであらわした
ローマ人もギリシア人同様、生命を感じ取る力を持っているのだ
彫刻が生きていなければ、芸術品ではない
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フェロン博士:
子どもの好きなものをバカにして笑うことがいかに子どもを誤らせるか
子どもの能力を伸ばそうとしないことが、どれほど苦しめるか
大人には分かっていない
ディアーヌは生まれながらの芸術家だが父親はまったく気づいていない
ディアーヌは博士の家にあるたくさんの古代芸術を見てデッサンする
●お母さまに会わせて
ロール夫人:
フロシャルデは娘に甘いし
フェロン博士がコルセットは体に悪いと止めさせた
あの子の母親は身分のいい者じゃなかった
フロシャルデはあの子には絵の才能などないと言っている
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ロール夫人が近所の婦人に話すのを聞いて、自分を愛していないと知り泣くディアーヌ
昔からいる乳母のジョフレットに実母についてしつこく訊ねる
ジョフレット:
お母さまは世界中で一番美しく尊い方でした
お母さまがちゃんと見ていてくださると思って
いつもお利巧にしていらっしゃれば不幸せではなくなります
ピクトルデュ館で見たベールの女がディアーヌに会いに来て
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ディアーヌは博士の家に越す
●少女のねがい
博士はフロシャルデが持つディアーヌの母の肖像画を借りて渡すが
自分で顔を見つけ出すまでは見ないと誓うディアーヌ
父がロール夫人とお金のことで言い争うのを見て悲しむディアーヌ
その時に浮かんだ顔を描くと、ベールの女はようやく顔を見つけてくれたと喜ぶ
博士とジョフレットは絵を見てディアーヌの母ソックリだと驚き
父の肖像画を見て描いたのだと思い込む
フロシャルデ:
私の弟子でもこれほどの腕を持つ者はいない
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ディアーヌの才能は次第に世間に知られるようになる
ロール夫人は残った財産を持って実家に帰ってしまったため
ディアーヌは父をなぐさめるために実家に戻る
ある日、借金取りが来て、家、美術品、家具も差し押さえる
フロシャルデの描く美人画は流行遅れとなり人気が落ちて、注文がなくなる
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ディアーヌは子どもの肖像画を描いて大評判となる
1年後、親子は博士に家賃が払えるほど収入が戻り
ロール夫人も帰ってくると、ディアーヌの悪口を言って評判を落とす
ブランシュはいとこと結婚して子爵夫人となって会いに来る
まだ貧しいままだが、身分にこだわっていて
以前、浴室だった部分を改築して住んでいると話す
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●拾った古いお金
ディアーヌはより美しいものを見るためにジョフレットを連れて旅行に出る
浴室はすっかり変えられ、美しい彫刻や絵も台無しになっていたが
どこからか声が聞こえる
声:
あなたの未来は母の心に任せなさい
2人で力を合わせて、理想の道を見つけましょう
苦しみをしのぶことは才能を伸ばしてくれます
庭で古い硬貨を拾い、調べてもらうとブランシュに約束する
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●若い女流画家
それまでデッサンとパステル画だけだったが
油絵の勉強も始め、ますます評判となる
ロール夫人はディアーヌが金の卵を産む鳥だと悟り、急に優しくふるまう
ディアーヌも金やモノに執着がないため、ロール夫人の贅沢に寛容になる
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改築にお金がかかって困っているブランシュは
博士を通じて、古銭を売って費用にあてる
その後、ディアーヌはマルスランと結婚
貧しい少女のためにアトリエを建てて、無料で教え、家族で仲良く暮らした
人に尽くすのが大きな喜びで
妖精が近づくのもそういう人たちのところ
■解説
ジョルジュ・サンド
1804年パリ生まれ
18歳でデュドパン男爵と結婚し、2人の子どもを産んだが別れて作家生活に入る
ミュッセやショパンとの恋愛事件は有名
後世に子どものための作品を書いた
本書は『おばあさまのお話』に入れたうちの1冊で原題は『ピクトルデュの館』
もう1編は『ものをいうカシの木』
その他『魔の沼』『愛の妖精』ほか