メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

福武文庫 カイウスはばかだ ウィンターフェルト/著 福武書店

2024-04-27 11:37:23 | 
1990年初版 関楠生/訳 シャルロッテ・クライネルト/カバー画

「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します


現代の少年のほのぼのとした教訓話かと思ったら
古代ローマ時代の本格的な推理ものだった/驚

実際にポンペイの発掘で見つかった「カイウスはばかだ」という子どもの落書きから
インスピレーションを受けて書いたそうで
ここまでの長編が描ける才能にビックリ

映画『テルマエ・ロマエ』の阿部ちゃんをつい思い出してしまう人も少なくないのでは?w


福武文庫<JOY>シリーズ
かっこう時計 モールズワース
魔法の木 フォークナー
たるの中からうまれた話 シュトルム
熊とにんげん チムニク
ヤンと野生の馬 デンネボルク
卒業の夏 ペイトン
ミシェルのかわった冒険 ルネ・ギヨ
灰色の谷の秘密 マスパン
小さなロバのグリゼラ デンネボルク



【内容抜粋メモ】

登場人物

クサントス学校
クサンチップス先生
ムキウス 主席で模範生 父は有名な護民官ドミチウス
ルーフス 父は有名な将軍プラエトニウス 母リウィア
ユリウス 几帳面で理屈っぽい 父は偉い裁判官
プブリウス 皮肉屋
フラウィウス 臆病者
アントニウス 大ぼらふき
カイウス いたずら好き 父は元老院議員ウィニキウス
クラウディア カイウスの妹 ルーフスが好き

テルス 前執行官
ルーコス 名高い占い師で予言者



●ルーフスがカンテラをまちがえた
クサントス学校は、ローマでいちばん授業料が高く
金持ちの貴族ばかり7人が勉強している

授業が始まるのは日の出前!
毎日、奴隷が少年たちを送り迎えしている

カイウスがいたずらばかりするので怒ったルーフスは「カイウスはばかだ」と書字板に書く
カイウス:そういう君のおやじは臆病者じゃないか

父を崇拝しているルーフスはカイウスと取っ組み合いになり

クサンチップス先生:
ルーフスを退学させるよう、明日、母に言う
カイウスには書き取りの宿題を出す

ムキウスはカンテラを落とし、ルーフスが間違えて持って帰ったことに気づく

太ったはげ頭の小さい男・前執行官テルスが
大勢の黒人奴隷が担ぐかごに乗って広場を通る
大金持ちで穏退生活を送っている



●カーテンのうしろは墓場のようにしずか
翌朝、学校に来るとカイウスとルーフスは欠席、先生も来ない
「カイウスはばかだ」と書いた書字板もなくなっている

学校の向かい側には名高い占い師で予言者のルーコスの屋敷がある
「禁を犯す者の生命は保証せず」と看板が出ている



●こぶの直径はそうとうなもの
先生のすまいはすぐ隣りで、物音がするため、覗くと泥棒が入ったようにめちゃめちゃ
ひもでぐるぐるに縛られた先生が洋服だんすから出てくる
足をくじいて歩けない

クサンチップス先生:
寝込みを襲われた
頭を殴られて気を失っている間に縛られてしまった



●強盗は数学を勉強するのかも
調べると本が数冊と論文が盗まれただけ

クサンチップス先生:
ルーフスの母に昨日のことを言うというのは脅し
ルーフスはけして悪い生徒ではない

学校は休みになり、ルーフスの家を訪ねる途中にある
皇帝にささげた神殿に大きく真っ赤な文字で
「カイウスはばかだ」と落書きがしてあるのを見つける

神殿を汚すのは大変な罪
通りがかりの男は「両手を切り落とそう」という

カイウスの妹でルーフスが好きなクラウディア:
落書きを知った父が激怒して、カイウスに聞くと、ルーフスの仕業だと言ったがウソに決まってる
夜回りの警官は昨日の夜10時にここで夜食を食べていた時、落書きはなかったと証言

アントニウス:都長官に訴えられたら子どもも死刑になった
ショックを受けたクラウディアは泣いて家に入る

ユリウス:カイウスとは絶交だ

ムキウス:
ルーフスは逃げなきゃダメだ
いつも会合に使う洞穴へ隠して、別荘に連れて行こう


●ルーフスの筆跡は偽造されたのか?
寝ているルーフスに事情を話すと

ルーフス:
僕は神殿に落書きなんてけしてしないと誓う
ボクの字じゃないと証明してみせるよ

書字板に書いた文字を神殿のと比べるとソックリ

ルーフス:
誰かが僕の字を真似て書いたんだ
そのために書字板を盗んだのかもしれない 僕は逃げない

クサンチップス先生の長持ちに入れたはずの書字板がなくなっている
代わりに金のメダルがついた鎖が見つかる


●ムキウスは、しばりつけられたようにじっと日報を見つめる

クサンチップス先生:
強盗のものさ
雨外套の襟につけて、マントを留めるのに使うものだ

ウィニキウスも前は裁判官だったため、字を鑑定してもらおうと再び家に向かうと
新しい報道が広場に出て、奴隷たちが蝋板に書き写している
ミネルワ神殿のニュースがあり、犯人はクサントス学校の生徒だと推測されている


●クラウディアはちょうどおそろしくたいくつしていた
カイウスの父ウィニキウスは体操場で2人の奴隷に背中をマッサージしてもらっている
少年たちはルーフスの無実を訴えると、アポロ図書館の館長で
ローマでいちばん有名な筆跡鑑定家スクリボーヌスを呼び
鑑定してもらう

スクリボーヌス:これは少年の字ですな 壁の文字は本物だ


●着物はぬれ、貯金箱はからっぽ
ルーフスは兵士を連れた将校が監獄に入れてしまったと泣いている母リウィア

リウィア:
誰かルーフスを訴えた人があるはず
できるだけ早く真犯人を見つけなきゃならない

窓は小さすぎるし、庭の塀は高すぎて乗り越えられないため
夜中に出かけたという説は難しい
奴隷はローマ市民を訴えることはできない

カンテラを見つけようとベッドの下を覗くと、びしょ濡れになった服が出てくる


●だれも塀の穴を知らなかった
ルーフスを送迎する奴隷ロンプスが戻り
主人がガリア人を全滅させたという知らせが入り、町中が歓呼に包まれていると話す

ロンプス:
昨晩、学校に迎えに行った時はいなかった
貯金箱からお金を全部出して、生垣から姿を消し
朝になって返った時はずぶ濡れだった
どこにいたか聞いても答えず、母に言うといったら
「そんなことをしたら、お父さんは破滅だ」と大声を出した

囚人は外の人と話すのを厳しく止められている


●いくら魔法使いだって、やたらヘビを投げつけたりしないほうがいい
少年たちはルーコスに犯人を占ってもらおうと、小遣いを集めて門から入る
顔にメーキャップをした大柄の老人の前には生きたヘビがカゴに入れられている

鎖を見せて、持ち主の名前と住所を知りたいと聞いても無言
その後、いきなりヘビを投げつけてきて、驚いた少年たちは広場まで逃げる

お金を持っていたムキウスだけがいない
家に帰ったのかもしれないと思い、みんなも帰る


●川がどうして家のなかへ
ルキウスは1人逃げ遅れてドアが閉まったため
必死に屋根までのぼり、隣りの家に移ると、いきなり水に落ちて驚く

隣りはディアナ浴場で、門は閉じられていたため、朝まで眠る


●浴場もときには役にたつことがある
翌朝、管理人に捕まり、おとといの晩も忍び込んだと怒られる
証拠はムキウスのカンテラで、ルーフスが同じルートをたどったと分かる
ルキウス:ルーフスは無罪だ!


●皇帝は手紙なんかこわがらない
少年たちはいつもの洞穴に集まって相談する
ルーフスがルーコスの所に行って、浴場に落ちたなら
夜10時に神殿に落書きはできない

それを羊皮紙に木炭で書いて、皇帝に渡そうとすると
カイウスが来て、落書きをしたのは自分だと告白する


●クサンチップス先生がてこの支点を見つける
カイウス:クサンチップス先生を縛ったのも自分だが、都長官に訴えてはいない

落書きの方法は、書字板に溝を入れて、赤い絵の具を入れて貼った
ユリウス:それだと文字はさかさまになるはずだ
ムキウス:君はお父さんに告げ口したのを後悔してるんだね

少年たちはカイウスと仲直りする

クサンチップス先生:
君たちの証明はなっとらん
仮説はまず証明されなければならない

日報の記事は朝一に間に合わせるため、前日の夜までに集める
落書きの前に書かれて、身分の高い人から送られたもの
ニュースを渡した使者が分かれば、誰の使いかが分かる


●安せっけんと、もえる油と、タマネギのにおいがする
記録保管所の番兵に、メガバテスの住所を聞いて訪ねる
使いの名を聞くと役所の秘密だと取り合わず
少年たちの父が有名な高官と分かると喋りだす
メガバテス:前執行官テルス閣下本人ですよ


●その客は一定の条件をみたさなければならない
テルスは皇帝の信用が厚いと噂されている
事件の夜も宴会を開いている

たくさんの金持ちと知り合いで、宴会に来た人の名を大理石の壁に刻んでいるから
事件の夜の客の名が分かれば犯人が推測できる

クサンチップス先生:『奴隷のもっとも危険な部分は舌である』

記憶力のいいアントニウスはテルスの宮殿に行って酔っぱらって帰ってくる
テルスに酒を飲まされ、途中で逃げだして、寝室にあるマントを盗んできた
それは強盗のものと一致し、事件の夜の客の名は消されていた
しかし、ルーコスは先生より小さい

老人が入ってきて、ルーフスのことづけを言う

老人:
わしらは並んで寝ていた 何日も飲まず食わずで始終監視されていた
釈放される前にルーフスは
「赤いオオカミからヒツジの皮をはぎとってくれと、クサントス学校の友だちに言ってほしい」と言った

テルスが広場のパン屋に入るのを見る
高官が奴隷を連れずに歩いたり、自分でパンを買うことはあり得ない

パン屋の主人は週に数回通り抜けるのを黙っていたら
月に100セステルチウスくれると言われている

通り抜けた先はルーコスの家
追いかけた少年たちは罠にかかって閉じこめられる
ルーコス:落書きしたのはわしだ


●ムキウスもやっぱり同じようにぼうぜんとする
ルーコス:明日の朝、船がオスティアの港から出る わしは故郷に帰る

ルーコスの隙を狙って、襲いかかり殴って気絶させる
黄色いカツラをとると、正体はテルスだった!
高い木の靴を履いて大柄に変装している

ムキウス:
看板に真っ赤な絵具でルーコスと書いてある
ギリシア語でオオカミはリュコスだ

テルス:
わしの正体を暴露しないでくれ
たくさんの借金をして、占い師が儲かることを思いつき、ルーコスに化けていた
ルーフスは先生が母の家に行くのを忘れる魔法をかけてくれと頼みに来て
偶然、正体を見てしまった

その後、元元老院議員が来て、プラエトニウスが勝利したと知り
ルーフスが落書きをしたように細工し、ガレー船に乗せて奴隷として売ろうと思った
早く逮捕されるようニュースを届け、都長官の所へ行って訴えた

少年たちが見破ったと分かり、ルーコスに罪を負わせようとした
ルーコスが犯人ということにすればルーフスを助けると誓う

ルキウスが誓うために手をあげたところを剣で刺そうとして失敗し
そこに近衛兵と先生、ウィニキウスが入って来て、犯人はテルスだと伝える

テルスは屋根裏に逃げ、浴場に落ちるが、水をはけた後で死んでいる


●ライン川は、両側に岸がある
ルーフスは釈放され、リウィアの家で祝いの会が開かれ、学校は再開
寝ているカイウスに今の話を繰り返すよう言うと
カイウス:ライン川は、、、両側に岸のある川です

厳しい先生が初めて泣くほど笑う
クサンチップス先生:カイウス、君はほんとうにばかだなあ




解説

ヘンリー・ウィンターフェルト
1901年ベルリン生まれ
本書は児童文学では珍しく古代ローマが舞台
ギリシア人が当時どんな職についていたか、奴隷はどう扱われていたかなどが描かれている
この後『カイウスはひらめいた』『カイウスはこまった』が発表された


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