1968年初版 1990年 第25刷 中村白葉・長崎謙二郎/訳 小林与志/挿画
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
身分の高い人妻が若い男性と恋に落ちるってありがちな設定だけど
出版された時代にはもっと刺激的なタブーだったろう
男女問わず、人生が狂うような恋をしたいという思いが根底にあるのかも
そもそも法律や宗教、家柄で結婚させて、離婚は罪とするルールが不自然
互いの愛情や信頼だけの結びつきなら
もっとオープンで流動的に付き合えるし
悪徳的な愉しみという捻じれた状態にはならないはず
社交界って場も華やかに見えて、両親が娘を競売にかけるような感じがするし
映像化しやすそうな物語で、実際、何度も映画化されている
私の好きなヴィヴィアン・リーも演じていて、プライムビデオで観れる
昔だと脚色が多めだろうな
近年だとキーラ・ナイトレイが演じている
【内容抜粋メモ】
登場人物
アンナ・カレーニナ 8歳の息子セリョージャ
アレクセイ・カレーニン 夫 モスクワの役所の長官
ステパン・オブロンスキイ公爵 自由主義的思想の貴族 アンナの兄
ドリー 妻 スチェルバーツキイ公爵の長女 6人の子どもがいる
キティー スチェルバーツキイ公爵の末娘 18歳
レーヴィン 金持ちの地主 キティを愛している 兄セルゲイ、ニコライ
ウロンスキイ ハンサムで金持ちの青年将校
リディヤ 社交界で有名な伯爵夫人 カレーニンの女友だち
ベーッシ公爵夫人 アンナのいとこの妻
ヤーシュヴィン騎兵大尉 ウロンスキイの親友
■解説 アンナの一生
『戦争と平和』と合わせてトルストイの二大長編と呼ばれ
晩年の『復活』を加えて三大作とも言われる
アンナ、ドリー、キティの3人が三者三様の女性のタイプとして描かれている
本書は中村白葉による訳を元に長崎謙二郎が書き縮めたもの
■愛のもつれ
快活、善良、ユーモアがあり、みんなから好かれているオブロンスキイは
フランスの家庭教師と浮気していたのが手紙で発覚して
妻ドリーは部屋にこもり、子どもを連れて実家へ帰ろうか悩むが
そんなことは不可能と分かっている
ドリー:私はこの人の「人の良さ」が大嫌い!
オブロンスキイは妹のアンナを呼び、事態収拾の協力を頼む

■公爵令嬢
田舎から出て来たレーヴィンはオブロンスキイの職場に立ち寄る
若い頃からの仲だが、性格や趣味は正反対で
互いの生活を心の中では軽蔑している
レーヴィンは母の記憶がなく、スチェルバーツキイ家で楽しい日々を過ごして
3人の令嬢たちに恋していた
長女ドリーはオブロンスキイ、次女ナタリーは外交官リヴォフと結婚したため
満を持して末女のキティーにプロポーズしようと決心している
レーヴィンの上の兄セルゲイから次兄ニコライが人生を狂わせてもなお
放っておいてほしいと手紙を書いてきたことを知り
なんとか力になりたいと願っている
■競争者
オブロンスキイ:
妻には予見をいう天才があるんだ
キティーはきっと君と結婚するだろうと言っていた
レーヴィンがキティーを愛していることはみんな知っていたのに
言い出せないまま田舎に帰ってしまったことでキティーの母から疎まれている
その後に現れた若くてものすごい金持ちのウロンスキイにキティーは恋しているが
ウロンスキイもまたプロポーズをする気配がない
レーヴィンはキティーが1人でいる時間を狙ってやって来て
ようやくプロポーズするが断られる
キティー:そういうわけにはまいりません ごめんなさいましね
■停車場で
ウロンスキイは家庭の味をまったく知らずに育ち
結婚の意思なしにキティーに近づくのは
社交界の礼儀に反するということも知らなかった
ウロンスキイは母を尊敬していなかったが、見せかけの敬愛から駅まで迎えに行く
老伯爵夫人と一緒にいたアンナを見かけて、ひと目で愛してしまう

オブロンスキイがアンナを迎えに来た時
線路番の男が後退してきた列車に押しつぶされる事故が起きる
アンナ:不吉な前兆ですわ
■空色のもや
アンナはドリーを説得する
アンナ:
私は兄の弁解をしようとも、あなたを慰めようとも思いません
ただあなたがお気の毒で
兄は誘惑されやすい性格だが、妻は神聖なものと信じているから許して欲しい
アンナはうまく兄夫婦をとりもつことに成功し
次の舞踏会でキティーがウロンスキイと結ばれるようにと祈る
■はずかしめ
大舞踏会の夜
アンナは黒ビロードのドレスを着て、みんなが見惚れる美しさ
キティーはウロンスキイがダンスに誘うと思って、5人も断ったが
ウロンスキイはアンナと踊るのに夢中で声もかけないという侮辱を味わう
気まずいアンナは予定を早めて、明日ペテルブルグへ帰ると言い
ドリーにキティーを傷つけることになって申し訳ないと謝る
ドリー:
私はキティーのためにこの結婚は望んでいない
あなたが私のためにしてくれたことを忘れないし
永久にあなたを愛すると誓います
アンナの帰りの汽車にウロンスキイが乗ってきて愛を告白する
アンナは心底は歓びながらも忘れてほしいと切願
駅まで迎えに来た夫カレーニンを改めて見ると、どこも不快に感じて驚く
20も歳が離れて、世間体ばかり気にする夫を愛していないことに気づいたウロンスキイ
■蜜の誘惑
キティーはショックから重い病で伏せる
女児を出産したドリーは慰めに行くと
キティーはウロンスキイを憎み、レーヴィンを愛し始めていることが分かる
アンナはウロンスキイにキティーが大病を患っているから謝りに行ってほしいと頼む
ウロンスキイ:私たちはこの世で一番幸福者になるか、不幸者になるかのどちらかです

■禁断の果実
カレーニンは嫉妬深くはないが、ウロンスキイとアンナの噂を耳にして
妻の言動に“忠告と指導”を与えなければと思う
カレーニン:
われわれの生活は神により結ばれたものだから
これを破るのは罪悪なんだ
被害者は子どもとお前自身なんだよ
アンナはカレーニンに愛など分かるものかと思いながら、適当にあしらう

アンナとウロンスキイが愛し合うシーンをぼやかしているのは児童向けだからか?
ウロンスキイの母は最初、身分の高い婦人との情事は
前途ある青年にとって一種の装飾だと思っていたが
息子が地位を拒絶し、上司の反感を買ったと聞いて反対し
社交界もアンナに対して批判的になる
■田園ぐらし
プロポーズが失敗してから3か月経ってもまだレーヴィンは失意の中にいて
すべて執事に任せていた農業や牧場作業をやり始める
オブロンスキイが訪ねてきて、レーヴィンと猟に出る
オブロンスキイはドリー所有の森を安く売ってしまった
キティーが大病して外国に転地していることを知り、再び愛情が戻るレーヴィン
■告白
競馬が大好きなウロンスキイは大会前にアンナを訪ねると妊娠していると聞く
ウロンスキイ:
僕たちの運命は決まった
ご主人を捨て、2人の生活をひとつにすることです
アンナはベーッシと競馬を観戦に行き、夫と離れた席に座る
ライバルと競ったウロンスキイが落馬して心を乱す
カレーニン:うわべだけでいいから不謹慎な態度をしないようお願いしたい
アンナ:
私はウロンスキイを愛しています
私はあなたを怖れ、憎んでいます
カレーニンは無言でペテルブルグに帰る
■夫の手紙
オブロンスキイは気ままに金を使うために、ドリーは6人の子どもを抱えて
田舎に移り住み、とても不自由な暮らしをしている
オブロンスキイに頼まれて様子を見に来たレーヴィンに
キティーは回復したから会ってほしいと頼む
カレーニンはこの事件を世間に秘密にしておこうと決めて
アンナを呼び戻す手紙を書くが
それを読んだアンナは寒気を覚える
■破られた約束
アンナはウロンスキイに夫にすべて明かしたと話す
ウロンスキイが夫と子どもを捨てて来いと言えばそうしようと決心していたが
ウロンスキイは憤慨した顔を見せただけだった
カレーニン:
家であの男に会わないこと
君もあの男にもう会わないことだけを望む
その代わり、妻としての義務を果たさず、権利は利用できることになる
アンナはウロンスキイに来てほしいと言い
時間に遅れて来たウロンスキイはカレーニンと出くわしてしまう
カレーニン:
私は明日モスクワへ行き、二度とこの家には戻らない
弁護士から離婚の報告を聞くだろう
わしは子どもを連れて行く
アンナは息子のセリョージャを渡して欲しいと懇願するも断られる
■再会
キティーと再会したレーヴィンはまだ愛していることを伝える
カレーニンの元にアンナから「死にそうだから帰ってきてくれ」と電文が来る
ウソかもしれないと疑いつつ、帰宅すると、アンナは女児を産み
産褥熱で瀕死状態にある
アンナは許しを請い、カレーニンとウロンスキイを握手させる
感動したカレーニンは“上着を取ろうとする者には、下着を与えたい”と態度を和らげる
ウロンスキイ:
おれは彼女なしには生きてゆけない
人はこういう時に気が狂うんだ、自殺するんだな
拳銃で胸を撃つが、心臓を外れて九死に一生を得る
娘は同じアンナと名付けられ、アニーと呼ばれる

オブロンスキイはカレーニンからの手紙を見て感動して涙を流す
カレーニン:
妻は教会の掟によって、夫が生きている間は再婚できない
私は離婚して、あれに子どもも渡しましょう
アンナは息子を心配するあまり、この申し出を断り
セリョージャを残したままウロンスキイと旅に出てしまう
ウロンスキイはタシケントの任命を断り、退職する
■死
レーヴィンとキティーは結婚し、妻として田舎での暮らしを回す様子を見て
もっと恋人同士の楽しみを味わえると思っていたレーヴィンは失望する
次兄ニコライが瀕死だと愛人マリヤからの手紙を受け取り
レーヴィンとキティーは安宿に見舞いに来てニコライの世話をする
ニコライは周囲に散々迷惑をかけて死ぬ

■誕生日
カレーニンは家のことが回らず、女友だちリディヤ伯爵夫人に協力してもらう
アンナとウロンスキイがペテルブルグに来ていて
アンナがひと目セリョージャに会いたいと言ってきた手紙に冷たい返事を書くリディヤ
リディヤ:
セリョージャは母が亡くなったと信じているのに
心を乱せば恐ろしいことになる
ベーッシは2人が結婚しないかぎり、世間は冷たいままだとウロンスキイに忠告する
アンナはセリョージャの誕生日を祝うためにこっそり帰宅する
セリョージャ:母さんが死んだなんてちっともほんとにしなかった!
カレーニンが帰宅し、セリョージャに父を愛すように言って家を去るアンナ
■劇場にて
アンナはウロンスキイの愛情だけを生活のメインに置き
少しでも冷たい態度を見ると心変わりしたのではないかと疑うようになり
重く感じたウロンスキイは家にいつかなくなる
母親は公爵令嬢ワルワーラとの縁談をすすめるし
アンナを社交界に戻そうにも協力者が誰もいない
アンナは目立つレースのドレスを着て、芝居に出かけ
隣り桟敷にいたカルターソフが声をかけると
妻が怒ってアンナを侮辱して帰る事件が起きる
アンナ:あなたがみんな悪いのよ!
■レーヴィン家の夏
ドリーは変わらぬ愛を証明するためにアンナを訪れる
ウロンスキイは病院を建てたりして仕事を持つ
アンナ:私、申し出ないほど幸福なんですよ
■愛の壁
ウロンスキイはアンナが離婚要求の手紙を書くよう説得してほしいとドリーに懇願し
ドリーはアンナに離婚を改めてすすめる
アンナ:
アニーの苗字はカレーニンのままで、子どもの産めない体になった
今の夫はリディヤの支配下にあるからセリョージャを渡してくれないでしょう
■モスクワにて
カシンスカヤ県で貴族団の選挙があり
ウロンスキイの友が無投票の満場一致で郡の貴族長に選出された
アンナはウロンスキイがそばにいないと不安でたまらず
アニーの具合が悪いなどの理由をつけて、何度も呼び出す
キティーはウロンスキイとばったり出くわして
落ち着いて会話できたとレーヴィンに話す
オブロンスキイはレーヴィンをアンナに紹介すると、その美しさや教養に見惚れる
他の若い男たちをこれほど魅了できるのに
ウロンスキイの愛が冷めたのはなぜかと自問するアンナ
■すきま風
セリョージャは母と一時の再会を果たした後
命も危ないほど患ったが、成長し、学友ができるとそんなことも忘れ
オブロンスキイからアンナの話をされると目を反らす
オブロンスキイはベーッシを訪ねて、アンナの離婚について相談すると
カレーニンは今やリディヤ伯爵夫人と妖しい占い師ランドウの言いなりになっていると明かす
リディヤ伯爵夫人宅でランドウを見かけ、眠りながら
「疑いを挟んでいるその人を追い出せ!」と言ったのが気味悪く、慌てて外に出る
その後、カレーニンから離婚拒絶の返事を受け取る
■破局

アンナは荷物をまとめて自分だけ田舎へ戻ると言ってウロンスキイを困らせ
別の女性に気持ちが移ったのだと思い込んで自殺も考えるが
異常な恐怖が襲って断念する
ウロンスキイは外出し、アンナからの手紙と電文がすれ違って届く
アンナはウロンスキイを追って駅まで来て、初めてウロンスキイと会った日の
轢死人のことを思い出して、自分のなすべきを悟り
車輪の中に身を投じる
アンナ:神さま、何もかもお許しください!
2か月後、ウロンスキイはアニーをカレーニンに渡して
賭け事で無一文となったヤーシュヴィンとともに
セルビヤ戦争の義勇兵として出征した
ウロンスキイ:
そうです 1個の武器としては、私も何かの役に立つでしょう
しかし、人間としては、もはや廃墟ですよ
■解説
本書を書き始めたのはトルストイ45歳の春
その後4年を費やして完結した
ドフトエフスキイ:芸術として完全なものである と激賞
トルストイはプーシキンの短編小説の書きだし
「客は別荘へ集まってきた」という一行に感動する
トルストイ:こう書きだせば、いきなり読者を事件を中心的な興味へ誘いこんでしまえる
本書の有名な書きだし
「オブロンスキイ家では、何もかも乱脈をきわめていた~」に後から
「幸福な家庭はすべてよく似通ったものだが、
不幸な家庭はみなそれぞれに不幸である」と追加した

プーシキン、ゴーゴリがロシア近代文学の父と言われ
ツルゲーネフ、ドフトエフスキイ、トルストイが並び出て
それまでの絢爛たるヨーロッパ文学を圧倒した
トルストイの生まれた帝政治下のロシアは、貴族と農民から成り
極端に身分のへだたる社会だった
放蕩暮らしの末、自ら農民の暮らしに身を投じて
文学を人間と行動によって描く原動力とした
本書の元となったのは、領地の近くで起きたアンナという地主の妻の鉄道自殺事件
夫が家庭教師と浮気したのを怒って家出し、遺書を残して自殺した
トルストイは18歳のソフィアと結婚したが不和は深まるばかりで
82歳で家出し、旅先で肺炎で死去した

※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
身分の高い人妻が若い男性と恋に落ちるってありがちな設定だけど
出版された時代にはもっと刺激的なタブーだったろう
男女問わず、人生が狂うような恋をしたいという思いが根底にあるのかも
そもそも法律や宗教、家柄で結婚させて、離婚は罪とするルールが不自然
互いの愛情や信頼だけの結びつきなら
もっとオープンで流動的に付き合えるし
悪徳的な愉しみという捻じれた状態にはならないはず
社交界って場も華やかに見えて、両親が娘を競売にかけるような感じがするし
映像化しやすそうな物語で、実際、何度も映画化されている
私の好きなヴィヴィアン・リーも演じていて、プライムビデオで観れる
昔だと脚色が多めだろうな
近年だとキーラ・ナイトレイが演じている
【内容抜粋メモ】
登場人物
アンナ・カレーニナ 8歳の息子セリョージャ
アレクセイ・カレーニン 夫 モスクワの役所の長官
ステパン・オブロンスキイ公爵 自由主義的思想の貴族 アンナの兄
ドリー 妻 スチェルバーツキイ公爵の長女 6人の子どもがいる
キティー スチェルバーツキイ公爵の末娘 18歳
レーヴィン 金持ちの地主 キティを愛している 兄セルゲイ、ニコライ
ウロンスキイ ハンサムで金持ちの青年将校
リディヤ 社交界で有名な伯爵夫人 カレーニンの女友だち
ベーッシ公爵夫人 アンナのいとこの妻
ヤーシュヴィン騎兵大尉 ウロンスキイの親友
■解説 アンナの一生
『戦争と平和』と合わせてトルストイの二大長編と呼ばれ
晩年の『復活』を加えて三大作とも言われる
アンナ、ドリー、キティの3人が三者三様の女性のタイプとして描かれている
本書は中村白葉による訳を元に長崎謙二郎が書き縮めたもの
■愛のもつれ
快活、善良、ユーモアがあり、みんなから好かれているオブロンスキイは
フランスの家庭教師と浮気していたのが手紙で発覚して
妻ドリーは部屋にこもり、子どもを連れて実家へ帰ろうか悩むが
そんなことは不可能と分かっている
ドリー:私はこの人の「人の良さ」が大嫌い!
オブロンスキイは妹のアンナを呼び、事態収拾の協力を頼む

■公爵令嬢
田舎から出て来たレーヴィンはオブロンスキイの職場に立ち寄る
若い頃からの仲だが、性格や趣味は正反対で
互いの生活を心の中では軽蔑している
レーヴィンは母の記憶がなく、スチェルバーツキイ家で楽しい日々を過ごして
3人の令嬢たちに恋していた
長女ドリーはオブロンスキイ、次女ナタリーは外交官リヴォフと結婚したため
満を持して末女のキティーにプロポーズしようと決心している
レーヴィンの上の兄セルゲイから次兄ニコライが人生を狂わせてもなお
放っておいてほしいと手紙を書いてきたことを知り
なんとか力になりたいと願っている
■競争者
オブロンスキイ:
妻には予見をいう天才があるんだ
キティーはきっと君と結婚するだろうと言っていた
レーヴィンがキティーを愛していることはみんな知っていたのに
言い出せないまま田舎に帰ってしまったことでキティーの母から疎まれている
その後に現れた若くてものすごい金持ちのウロンスキイにキティーは恋しているが
ウロンスキイもまたプロポーズをする気配がない
レーヴィンはキティーが1人でいる時間を狙ってやって来て
ようやくプロポーズするが断られる
キティー:そういうわけにはまいりません ごめんなさいましね
■停車場で
ウロンスキイは家庭の味をまったく知らずに育ち
結婚の意思なしにキティーに近づくのは
社交界の礼儀に反するということも知らなかった
ウロンスキイは母を尊敬していなかったが、見せかけの敬愛から駅まで迎えに行く
老伯爵夫人と一緒にいたアンナを見かけて、ひと目で愛してしまう

オブロンスキイがアンナを迎えに来た時
線路番の男が後退してきた列車に押しつぶされる事故が起きる
アンナ:不吉な前兆ですわ
■空色のもや
アンナはドリーを説得する
アンナ:
私は兄の弁解をしようとも、あなたを慰めようとも思いません
ただあなたがお気の毒で
兄は誘惑されやすい性格だが、妻は神聖なものと信じているから許して欲しい
アンナはうまく兄夫婦をとりもつことに成功し
次の舞踏会でキティーがウロンスキイと結ばれるようにと祈る
■はずかしめ
大舞踏会の夜
アンナは黒ビロードのドレスを着て、みんなが見惚れる美しさ
キティーはウロンスキイがダンスに誘うと思って、5人も断ったが
ウロンスキイはアンナと踊るのに夢中で声もかけないという侮辱を味わう
気まずいアンナは予定を早めて、明日ペテルブルグへ帰ると言い
ドリーにキティーを傷つけることになって申し訳ないと謝る
ドリー:
私はキティーのためにこの結婚は望んでいない
あなたが私のためにしてくれたことを忘れないし
永久にあなたを愛すると誓います
アンナの帰りの汽車にウロンスキイが乗ってきて愛を告白する
アンナは心底は歓びながらも忘れてほしいと切願
駅まで迎えに来た夫カレーニンを改めて見ると、どこも不快に感じて驚く
20も歳が離れて、世間体ばかり気にする夫を愛していないことに気づいたウロンスキイ
■蜜の誘惑
キティーはショックから重い病で伏せる
女児を出産したドリーは慰めに行くと
キティーはウロンスキイを憎み、レーヴィンを愛し始めていることが分かる
アンナはウロンスキイにキティーが大病を患っているから謝りに行ってほしいと頼む
ウロンスキイ:私たちはこの世で一番幸福者になるか、不幸者になるかのどちらかです

■禁断の果実
カレーニンは嫉妬深くはないが、ウロンスキイとアンナの噂を耳にして
妻の言動に“忠告と指導”を与えなければと思う
カレーニン:
われわれの生活は神により結ばれたものだから
これを破るのは罪悪なんだ
被害者は子どもとお前自身なんだよ
アンナはカレーニンに愛など分かるものかと思いながら、適当にあしらう

アンナとウロンスキイが愛し合うシーンをぼやかしているのは児童向けだからか?
ウロンスキイの母は最初、身分の高い婦人との情事は
前途ある青年にとって一種の装飾だと思っていたが
息子が地位を拒絶し、上司の反感を買ったと聞いて反対し
社交界もアンナに対して批判的になる
■田園ぐらし
プロポーズが失敗してから3か月経ってもまだレーヴィンは失意の中にいて
すべて執事に任せていた農業や牧場作業をやり始める
オブロンスキイが訪ねてきて、レーヴィンと猟に出る
オブロンスキイはドリー所有の森を安く売ってしまった
キティーが大病して外国に転地していることを知り、再び愛情が戻るレーヴィン
■告白
競馬が大好きなウロンスキイは大会前にアンナを訪ねると妊娠していると聞く
ウロンスキイ:
僕たちの運命は決まった
ご主人を捨て、2人の生活をひとつにすることです
アンナはベーッシと競馬を観戦に行き、夫と離れた席に座る
ライバルと競ったウロンスキイが落馬して心を乱す
カレーニン:うわべだけでいいから不謹慎な態度をしないようお願いしたい
アンナ:
私はウロンスキイを愛しています
私はあなたを怖れ、憎んでいます
カレーニンは無言でペテルブルグに帰る
■夫の手紙
オブロンスキイは気ままに金を使うために、ドリーは6人の子どもを抱えて
田舎に移り住み、とても不自由な暮らしをしている
オブロンスキイに頼まれて様子を見に来たレーヴィンに
キティーは回復したから会ってほしいと頼む
カレーニンはこの事件を世間に秘密にしておこうと決めて
アンナを呼び戻す手紙を書くが
それを読んだアンナは寒気を覚える
■破られた約束
アンナはウロンスキイに夫にすべて明かしたと話す
ウロンスキイが夫と子どもを捨てて来いと言えばそうしようと決心していたが
ウロンスキイは憤慨した顔を見せただけだった
カレーニン:
家であの男に会わないこと
君もあの男にもう会わないことだけを望む
その代わり、妻としての義務を果たさず、権利は利用できることになる
アンナはウロンスキイに来てほしいと言い
時間に遅れて来たウロンスキイはカレーニンと出くわしてしまう
カレーニン:
私は明日モスクワへ行き、二度とこの家には戻らない
弁護士から離婚の報告を聞くだろう
わしは子どもを連れて行く
アンナは息子のセリョージャを渡して欲しいと懇願するも断られる
■再会
キティーと再会したレーヴィンはまだ愛していることを伝える
カレーニンの元にアンナから「死にそうだから帰ってきてくれ」と電文が来る
ウソかもしれないと疑いつつ、帰宅すると、アンナは女児を産み
産褥熱で瀕死状態にある
アンナは許しを請い、カレーニンとウロンスキイを握手させる
感動したカレーニンは“上着を取ろうとする者には、下着を与えたい”と態度を和らげる
ウロンスキイ:
おれは彼女なしには生きてゆけない
人はこういう時に気が狂うんだ、自殺するんだな
拳銃で胸を撃つが、心臓を外れて九死に一生を得る
娘は同じアンナと名付けられ、アニーと呼ばれる

オブロンスキイはカレーニンからの手紙を見て感動して涙を流す
カレーニン:
妻は教会の掟によって、夫が生きている間は再婚できない
私は離婚して、あれに子どもも渡しましょう
アンナは息子を心配するあまり、この申し出を断り
セリョージャを残したままウロンスキイと旅に出てしまう
ウロンスキイはタシケントの任命を断り、退職する
■死
レーヴィンとキティーは結婚し、妻として田舎での暮らしを回す様子を見て
もっと恋人同士の楽しみを味わえると思っていたレーヴィンは失望する
次兄ニコライが瀕死だと愛人マリヤからの手紙を受け取り
レーヴィンとキティーは安宿に見舞いに来てニコライの世話をする
ニコライは周囲に散々迷惑をかけて死ぬ

■誕生日
カレーニンは家のことが回らず、女友だちリディヤ伯爵夫人に協力してもらう
アンナとウロンスキイがペテルブルグに来ていて
アンナがひと目セリョージャに会いたいと言ってきた手紙に冷たい返事を書くリディヤ
リディヤ:
セリョージャは母が亡くなったと信じているのに
心を乱せば恐ろしいことになる
ベーッシは2人が結婚しないかぎり、世間は冷たいままだとウロンスキイに忠告する
アンナはセリョージャの誕生日を祝うためにこっそり帰宅する
セリョージャ:母さんが死んだなんてちっともほんとにしなかった!
カレーニンが帰宅し、セリョージャに父を愛すように言って家を去るアンナ
■劇場にて
アンナはウロンスキイの愛情だけを生活のメインに置き
少しでも冷たい態度を見ると心変わりしたのではないかと疑うようになり
重く感じたウロンスキイは家にいつかなくなる
母親は公爵令嬢ワルワーラとの縁談をすすめるし
アンナを社交界に戻そうにも協力者が誰もいない
アンナは目立つレースのドレスを着て、芝居に出かけ
隣り桟敷にいたカルターソフが声をかけると
妻が怒ってアンナを侮辱して帰る事件が起きる
アンナ:あなたがみんな悪いのよ!
■レーヴィン家の夏
ドリーは変わらぬ愛を証明するためにアンナを訪れる
ウロンスキイは病院を建てたりして仕事を持つ
アンナ:私、申し出ないほど幸福なんですよ
■愛の壁
ウロンスキイはアンナが離婚要求の手紙を書くよう説得してほしいとドリーに懇願し
ドリーはアンナに離婚を改めてすすめる
アンナ:
アニーの苗字はカレーニンのままで、子どもの産めない体になった
今の夫はリディヤの支配下にあるからセリョージャを渡してくれないでしょう
■モスクワにて
カシンスカヤ県で貴族団の選挙があり
ウロンスキイの友が無投票の満場一致で郡の貴族長に選出された
アンナはウロンスキイがそばにいないと不安でたまらず
アニーの具合が悪いなどの理由をつけて、何度も呼び出す
キティーはウロンスキイとばったり出くわして
落ち着いて会話できたとレーヴィンに話す
オブロンスキイはレーヴィンをアンナに紹介すると、その美しさや教養に見惚れる
他の若い男たちをこれほど魅了できるのに
ウロンスキイの愛が冷めたのはなぜかと自問するアンナ
■すきま風
セリョージャは母と一時の再会を果たした後
命も危ないほど患ったが、成長し、学友ができるとそんなことも忘れ
オブロンスキイからアンナの話をされると目を反らす
オブロンスキイはベーッシを訪ねて、アンナの離婚について相談すると
カレーニンは今やリディヤ伯爵夫人と妖しい占い師ランドウの言いなりになっていると明かす
リディヤ伯爵夫人宅でランドウを見かけ、眠りながら
「疑いを挟んでいるその人を追い出せ!」と言ったのが気味悪く、慌てて外に出る
その後、カレーニンから離婚拒絶の返事を受け取る
■破局

アンナは荷物をまとめて自分だけ田舎へ戻ると言ってウロンスキイを困らせ
別の女性に気持ちが移ったのだと思い込んで自殺も考えるが
異常な恐怖が襲って断念する
ウロンスキイは外出し、アンナからの手紙と電文がすれ違って届く
アンナはウロンスキイを追って駅まで来て、初めてウロンスキイと会った日の
轢死人のことを思い出して、自分のなすべきを悟り
車輪の中に身を投じる
アンナ:神さま、何もかもお許しください!
2か月後、ウロンスキイはアニーをカレーニンに渡して
賭け事で無一文となったヤーシュヴィンとともに
セルビヤ戦争の義勇兵として出征した
ウロンスキイ:
そうです 1個の武器としては、私も何かの役に立つでしょう
しかし、人間としては、もはや廃墟ですよ
■解説
本書を書き始めたのはトルストイ45歳の春
その後4年を費やして完結した
ドフトエフスキイ:芸術として完全なものである と激賞
トルストイはプーシキンの短編小説の書きだし
「客は別荘へ集まってきた」という一行に感動する
トルストイ:こう書きだせば、いきなり読者を事件を中心的な興味へ誘いこんでしまえる
本書の有名な書きだし
「オブロンスキイ家では、何もかも乱脈をきわめていた~」に後から
「幸福な家庭はすべてよく似通ったものだが、
不幸な家庭はみなそれぞれに不幸である」と追加した

プーシキン、ゴーゴリがロシア近代文学の父と言われ
ツルゲーネフ、ドフトエフスキイ、トルストイが並び出て
それまでの絢爛たるヨーロッパ文学を圧倒した
トルストイの生まれた帝政治下のロシアは、貴族と農民から成り
極端に身分のへだたる社会だった
放蕩暮らしの末、自ら農民の暮らしに身を投じて
文学を人間と行動によって描く原動力とした
本書の元となったのは、領地の近くで起きたアンナという地主の妻の鉄道自殺事件
夫が家庭教師と浮気したのを怒って家出し、遺書を残して自殺した
トルストイは18歳のソフィアと結婚したが不和は深まるばかりで
82歳で家出し、旅先で肺炎で死去した
