メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

王国

2006-04-19 20:19:53 | lyrics
「我らの王国はどこに?」農夫はきいた
「己れの耕す畑に」王様は答えた
王様は皆の「領土」だと敬われた

「我らの戦う敵はどこに?」兵士はきいた
「己れの剣のおさまる鞘の中に」王様は答えた
王様は皆の「庇護」だと敬われた

「我らの楽園はどこに?」盲目の老人はきいた
「己れの暗闇の中に」王様は答えた
王様は皆の「慈悲」だと敬われた

「坊やに食べさせるパンはどこに?」母親はきいた
「腰に下げた麻袋の中の種に」王様は答えた
王様は皆の「糧」だと敬われた

「不変なる真理はどこに?」賢者はきいた
「己れの目の奥深くの良心の中に」王様は答えた
王様は皆の「智恵」だと敬われた

「王様はどこに?」ひとりの髪の長い少女がきいた
王様は答えなかった
皆は固く閉ざされた門を開き
城の頂きまで登ったが
そこには誰もいなかった

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どこかで

2006-04-18 20:18:22 | lyrics
どこかで
どこかで 男たちは働いている
汗をかいて働いている
黙っている寝具
かわいた時刻表
なぜか泣けてくる甲子園野球
涼しげな杉木立
低木とのバランスが大事

どこかで
どこかで 女たちは笑っている
涙をながして笑っている
海に穴があいたよ
黒い黒い穴だよ
でももう遠ざかって あんなところだ
さようなら さようなら

どこかで
どこかで 島がひとを待っている
押し寄せてくる 狂った人工の波々
素晴らしい眺めと
素晴らしい声の恋人
かなしきは遠ざかりしこと

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金鳳花

2006-04-17 20:17:23 | lyrics
麻のブラウス 麻のブラウス
洗いざらしの 麻のブラウス
麻のパンツ 麻のパンツ
はいたばかりの 麻のパンツ
陽を吸収したストッキング
にわか雨にぬれたジャケツ

今朝
霧がかったプール開きの日

そして路上の
金鳳花

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昨日 わたしは忘れる

2006-04-16 20:16:02 | lyrics
昨日 わたしは忘れる
わたし自身が幻影だったことを

今日 わたしは告白する
愛人は創造だったことを

軍配はあがり 紙のうえの人形が
かたかたと相撲をとっている
ひとつが倒れると もうひとつは
もう相撲をとることはできない
これが社会


明日 わたしは記憶をたどる
この空虚は 生涯をかけて
埋め立てなければならない

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物語はここから始まる

2006-04-15 20:14:33 | lyrics
物語はここから始まる
まずは暗い穴から
そして長い沈黙を破って
だれかが大きく悲鳴をあげる
狼の群れのなかで
「わたし」は生まれる

ここはどこでしょうか
蜂の羽音が聞こえる
磁力に乗って、甘いミツを探し求める
まっかな川のほとりで
休みましょうか
心地良い音楽が鳴っている
「わたし」が眼を開けて見えたのは
枯れた木々と黒い雲
地球はとうとう終わってしまったのでしょうか


しかし「わたし」の物語はここから始まる
まずはこの暗い穴から
始まりはいつでもまっくら
そしていつも長い沈黙を破って


小さな囁き声をたどっていくと
ある湖にたどりつく
「わたし」はそこに腰をおろす
とてもつかれてしまったから
みんなとてもつかれてしまったから
だから もうだれも喋り合うことをやめて
それぞれの穴へ戻った
暗く涼しい穴へ戻った
おんなの叫び声がして
きみはもう一度 生まれ堕ちるために

つきに「つき」と名をつけた
人間はとても陳腐だね
つきはつきでしかないのに
永遠に空に浮かぶ 白い球体でしかないのに
けれどももし「わたし」が死んだのなら
藍い銀河を流れて あなたのもとへ行こう
こんな人間でもたまには懐かしく思い出し
すこし塩辛い涙を流すでしょう
「わたし」はここから歩き始め
わたしは2度とすべてを繰り返さない

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返事

2006-04-14 20:12:09 | lyrics
「元気です」
それだけで晴れる四月の雨

もし?の群集がひっきりなし流れ込み
結果の届かない街

分厚い札束で酸素を回し
何も売らない店員

一億年解決されないままの
コンドルの声

返事をください
「元気です」

たったこれだけなら
小さいカード一枚で
足りることだから


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ちいさな遠い祈り

2006-04-13 20:11:02 | lyrics
あなたのいない このへやに
かのじょのいない このへやに
かれらのいない このへやに
あめがふっている

あたらしい傷がひらいて
あたらしい夜をむかえる
あたらしい服にきがえて
あたらしい車ででかけよう


あなたのいない このへやに
かのじょのいない このへやに
かれらのいない このへやに
あめがふっている

まっくらやみにヘッドライト
まっくらやみをまっしぐら
まっくらやみに赤い靴
まっくらやみとわたしたち


ちいさな手のなかの
ちいさな遠い祈り
ちいさなポニーにのっかった
ちいさくひかるマホガニー

あなたや
かのじょや
かれらや
あの人がいないこのへやいっぱい
あめがふっている
少年少女よ
はやく飛びたてよ

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2006-04-12 20:08:05 | lyrics
光を
この一本の道に光を
悪戯に失望とたわむれないために

花を
この一本の道に花を
その香りであの人を引き留めておくために

歌を
この一本の道に歌を
迷っても悲嘆に暮れないために

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花のみち

2006-04-11 20:06:52 | lyrics
私は花のみちを歩いていた
若葉のみどり、舞い降る薄桃色のあめ
やわらかい幹のあいまを抜けて
昇ってゆく純白の翼
私はその日 花のみちを歩いていた
母の手にひかれて
紺のスカートがまいあがった
私は覚えている


私は花のみちを歩いていた
小刻みに震える両手、黒電話の重い受話器
「きみが好きだ」
躍る心臓、詰まる喉元、遠のく意識
風に吹き飛ぶ麦わら帽子
私はその日 花のみちを歩いていた
「ありがとう。あたしも好きです」
私は今でも夢に見る



私は花のみちを歩いていた
半分無感覚な足先がじっとり濡れてゆく
水たまりに浮かぶ花びら 飛び交うカラス
ああ 生きてくことはた易いものじゃない
重い両肩 首をうなだれ
まぶたの下には不吉な影が落ちている
私はその日 花のみちを歩いていた
行くべき場所も見つからないまま


私は花のみちを歩いていた
緑の切符 小さな時刻表 温もり残る電話ボックス
「いま駅。これからすぐ戻るから」
かえろう 古びた時計の鳴る町へ
レールは運ぶ 軽いバッグと小さな手土産
私はその日たくさんの花に彩られた小道を歩いた
「ただいま」
もうなにも心配することのない安息の砦


私はあの日 花のみちを歩いていた
母の手にひかれて
とかした髪がもつれて泣いた
私はよく知っている
これから先もずっと
花びらが敷きつめられたみちと
水たまりで泥だらけのみちとが
交互にはるか続いているのを

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レールに乗って

2006-04-10 20:05:47 | lyrics
レールに乗って
ながれる景色をみてる
毎日失恋してる気持ちで
盲目の愛に没頭することだって出来る
スーパースターがスーパースターだった頃のように
いつでも
底のない沼から死にもの狂いではい上がったとたんに
足元の岩が砕けて崖から転がる気持ちで
毎日 遠くかなたの雲がどんな形か見つめたり
毎日 コンクリート道路に落ちている吸殻を
いちいち数えていることも出来る

もっとシンプルに生きよう
あるがまま
そのままで
目で見えるもの全てを理解しようとせず
自分でえらんだ
思想だけを信じよう
何かを追いかけ
何かに猛烈に追いかけられながら

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