「罰金」の読みどころの一つはイギリスの競馬記者の生態である。フランシス自身が騎手を引退後、新聞社で競馬記者を十数年していたという。
記者の生活を描写しているところが興味深い。日本の競馬ジャーナリズムも似たようなものなのだろうか。
発端は賭け屋に提灯記事を書かされていた記者が奇怪な事故死をするところから始まる。フランシスの小説は大体が一人称視点のようだが、この小説では事故死した記者の同業者である競馬記者が主人公である。
テンポは軽快だが、終盤に来て長大なしつこい活劇場面となる。いまはアクション場面と言うのかな。長い活劇場面を珍重する書評家もいるようだが、いささかテイル・ヘヴィーでもたれる感がある。
主人公の妻が完全介護を必要とする小児麻痺患者であるという設定が特徴で存分に薬味としていかされている。
ま、携帯電話がまだなくて公衆電話が活躍する懐かしい時代の話である。