穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

ディック・フランシスの「再起」

2010-01-09 10:09:31 | ミステリー書評

引退した元スター・ジョッキーが主人公のシッド・ハレーものは結局四作あるらしい。最後の(いまのところ)「再起」を読んでいる。

ちなみにシッド・ハレーものはつぎのとおり。

題名         著作年代     著者年齢

大穴         1965年      45歳

利腕         1979年      59歳

敵手         1995年      75歳

再起         2006年      86歳

「再起」には著者の息子の協力を得ていると言うが、86歳の加齢臭はあまり感じない。大穴よりはいい。「利腕」レベルだろう。「敵手」は未読。

小道具が一変している。いわく、携帯電話、留守番電話、DNA鑑定、インターネット・ギャンブリング。だだ、ご本人のために必要だったのだろうが注釈が長すぎて退屈。著者の高齢といい、うたた今昔の感あり。

ここでも英国独特のAntepost 制度が出てくる。訳者は出走馬掲示前、と訳している。たしかに辞書にはそうあるが、なんのことかこれじゃ注釈が必要だろう。

要するに数カ月、数週間前からの馬券前売りである。そう訳したほうがよかったのにね。

前売りは不正のタネだと前に書いたが、前売りにはその馬がそのレースに出るかどうかも予測して賭ける要素があるのが分かった。第一に馬の出走予定を予測して、第二にその馬が勝つかどうかを予測するわけだ。

つづく