穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

本格ものでも読むか

2015-06-10 09:29:01 | 犯罪小説

煎じ詰めるとバードボイルドなる括弧でくくられている作家でも再読に耐えるのはハメット(の一部)とチャンドラーしかない。ケインは読みたくても「郵便配達・」くらいしかないし(カクテルウェイトレスはまあ、現代作家レベルで言えば並)、原文でもケインは入手がむづかしい。もっともケインはノワールというかクライムノベルなんだろうが。 

スピレーンの刺激はすれきった現代では賞味期限が切れている。ロスマグからパーカーとかなんちゃら、かんちゃらいう作家群、ハードボイルドと銘打って早川あたりが出している中には初読に耐える作家すらいない。ようするにHBは一過性のものなんだな。一過性というのは褒め言葉だ。別の表現をすれば屹立する孤峰,秀峰とでもいうのかな。

で本格もののふるいやつでも読もうかと思い立った。幸いほとんどが初読である。ポー、ドイル、クリスティは複数読んだがまったく感興を覚えず、記憶もまったく残っていない。あとチェスタートンもつまらなかったな。彼を本格というのかどうか知らないが。

たしかクロフツという作家がいた? 樽というのは彼の作品だったかな。これは面白いと思った記憶がある。内容はまったく覚えていない。情動記憶とでもいうのかな、そう言うのがあるでしょう。イメージとしての記憶ゼロ、文章的に表現出来る記憶ゼロ、だけどいやなヤツだったとか、面白い本だったとかは覚えている。そういう記憶だ。

思うに、スジの運びとか叙述の過不足がなく水準が高いことが樽という書名を覚えている理由だと思う。でも樽は後回しにして初期本格もの?のヴァン・ダインあたりから始めようかと考えている。