ヴァン・ダインの僧正殺人事件(創元文庫)を70頁ほど読んだ。処女作ベンスンより数段進歩したようだ。目障りな引用過多も是正されている。叙述の確かさもクリスティなどより数段上だ。
ところで本格ものなんて中学生の遊戯みたいだと長い間食わず嫌いだったが改めなければなるまい。この機会にミステリーの分類を考えてみた。
ハードボイルドと本格という分け方が一般的らしいが、ハードボイルドはともかく本格というのが何のことだか分からない。非ハードボイルドとハードボイルドという二分法があるかもしれない。もっとも、非本格と本格といってもいいか。
一応ハードボイルドと非ハードボイルドというふうに分けてみた。それぞれの特徴は以下の様になるか。
はじまり::
ハードボイルドは失踪、紛失、脅迫で警察に相談したくない事情がある、あるいは警察が取り合ってくれない(忙しくて、とか)事案を私立探偵に依頼するところから入る。あたり前だがいきなり殺人事件で警察を抜きにして私立探偵がもっぱら捜査すること等ありえない。もっとも、失踪など調査しているうちに必ず死体に遭遇して警察との意地の張り合いに成るのが定番ではある。
それに対して非ハードボイルドではまず死体が出てくる。両者の決定的な違いである。
捜査主体::
ハードボイルドは個人探偵(自前営業、マーロウなど)と民間探偵社(コンチネンタルオプ)
非ハードボイルド:
1・警察(刑事、海外では地方検事や予審判事)、司法制度の違いによる。
2・警察と親善関係にある素人、シャーロック・ホームズ、ポワロ、フィロ・ヴァンス
1・は警察小説とよばれることがある。警察主体でも「はぐれ刑事」とかハードボイルドタッチのものもある。
2・はもっとも非現実的であるが、ミステリーの大半を占める。
ハードボイルド、非ハードボイルドのほかに犯人を主人公にする犯罪小説があり、犯人の視点で記述される小説が有る。ときにノワールと呼ばれることも有る。ジェームス・ケインの郵便配達などが例である。カミユの異邦人なども一例である。最近ではその女、アレックス
この分野は文体によってはハードボイルドと呼ばれることがある。
死体の転がり方::
1・密室や突飛な道具や薬品を使ったもの、非ハードボイルドに多い。私に言わせれば中学生系
2・シンプル・アート系、拳銃、撲殺、刃物、アイスピック
いわゆるハードボイルド分野に多い。
推理の過程の複雑さ(緻密さ)::
心理的、と非心理的とがある。両ジャンルにあるが、非ハードボイルド系に多い(それを売りにする)。
犯人::
ハードボイルド系に際立った特徴があり、ほとんどの場合犯人は美女である。チャンドラーで犯人が美人でないのは高い窓くらいではないか。
てなことで分類もまた楽し。