やっとベンスン殺人事件を読み終わった。200−250頁以降無味乾燥、文章に勢い無くなる。読むのが大変だった。
処女作だそうで、文庫の解説でも未完成なところが有ると行っていた。僧正殺人事件がスタイルとしても完成したものだそうだ。次はこれを取り上げようか。
人間の心理的特徴が犯行の行動に刻印されているという主張がミソなんだが、これは今言うプロファイルの考え方だろう。それは現代でも通用するだろうが、それ一辺倒というのが「非現実的」なところだ。
訳者は文章が高踏的だというが、適切に表現すれば「高級俗物」受けを狙った物、スノビッシュとか嫌みなというところだろう。この読者絞り(マーケティング)は当たったらしくて発売直後の売れ行きはよかったそうだ。
高踏的というのは、やたらと絵画や詩文への引用、言及が多いことをいっているのだろうが、非常識なスタイルだ。これが何となく当時のニューヨーカーにはかっこ良く見えたのだろう。
地方検事の友人が捜査にこれだけ介入し、指揮するがことき「非現実的」な記述が許されるなら書くのも楽だろう。
記述トリックに頼るところ大で、探偵小説二十則の作者としてはフェアでないな、と感じた。まあ処女作だからよし、ということにしておこう。