一度だけだが直木賞の選考委員の選評を読んだことがある。あれはオール読み物に出ていたと思ったが。批評が適切だったかどうかは別にして、たいへんまじめに論評しているな、という印象だった。各委員の批評も芥川賞にくらべると随分長かった。別に長さで善し悪しが決まる訳がないが、一生懸命やっているという印象は伝わる。
それに比べると芥川賞の選評(文藝春秋に載る)は愛想のない簡単なもので、内容も素人ながらどうかな、と感心しない物もなかにはある。
直木賞は一応作家として出来上がった人物を対象としているようだが、芥川賞はあくまでも新人賞で将来性を見るということのようだ。そう取らないとひどい作品が多すぎる、受賞作に。受賞作はまだまだだが、なにかこの作家は化けそうだというカンをたよりに選んでいるようだ。
事実一作きりで退場して行く人もいるようだし、あとが続かない傾向が顕著ではないか。ということは選考委員は伯楽としては失格者が多いということかも知れない。
本屋大賞は書店員の入れ札だからたいして論ずることもない。書店員というのはほとんどアルバイトじゃないのかな。
本屋大賞をあげるまえに、ほかに立派な文学賞が多数あるではないか、とおしかりを受けそうであるが直木賞、芥川賞で代表しても差し障りがないのではないか。
本屋大賞を取り上げたのは、読者に対するインパクトすなわち売り上げに貢献する程度が直木賞、芥川賞に匹敵するからである。