穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

カミユ「最初の人間」は満蒙開拓団の物語である

2017-04-22 09:14:19 | カミユ

カミユには出版された中編以上の作品(小説)は三作しかない。異邦人(中編)、ペスト(まあ長編)、転落(中編)の三つしかないようだ。「最初の人間」は未完の小説で“まあ長編”(文庫本訳で400ページほど)である。作品の構成に幾何学的な彫琢を長期間入念に加えた作家らしく、昨今の作家のように目方(ページ数)で売り上げを伸ばそうという野卑な生き方をしなかった作家である。

「最初の人間」は死後未完の作品として残されたものを関係者(夫人、娘)などが整理したのだが、かなりまとまった作品として読める。「転落」に続く四作目の長編としてみると、四作目でようやく小説らしい作品を書いたと言える。大衆作家としてではなくて一般作家(文学者なんて言葉も有るが)として、世間一般の「小説」という概念に近い作品にしようとしていたようである。

文庫本の解説にあったが、誰だかフランスの評論家が若い読者にカミユの作品でまず読むことを進めるのが本書であるそうだが、適切なアドバイスだろう。実は私はこの作品は初読である。第二部のはじめあたりまでよんでいる。

このブログで何回かカミユを取り上げたので、この機会に手に入る作品(小説)を一通り読んでみようと新潮文庫で出ていて未読の作品を買って来た。この「最初の人間」とこれも完成した作品というよりか創作ノートあるいは「資料」とも言われている「幸福な死」である。取りあえず「最初の人間」を読んでいる。

そうそう、その時に洋書の棚も見たが並んでいたのは新潮文庫で出版しているものとパラレルだった。実は「反抗的人間」を探していたがペーパーバックの英訳はやはり無いようだ。翻訳では相当昔に出版された全集には収録されているようだが、古本や図書館は利用しない方針なので英訳でもないかな、と探してみたのだが。

その時に「異邦人」(エトランゼ)はOutsiderになっていた。この英訳の題名が多いらしい。私は前回Alienを提案したのだがね。>>