PHP新書で「知の最先端」と大げさに銘打った大野和基氏のインタビュー集がある。そのなかで40ページほどカズオ・イシグロ氏とのインタビューがある。話題の大半が「私を離さないで」である。
ああいう記述というかスタイルをとった目的は著者としては意識的ではっきりとしているらしい。しかしこれを念頭に入れて「私を」を読み返す元気はまだ出ないが。
彼の小説はこれだけを半分ほどかじっただけで、全般的な評価はできないが、よく比較される村上春樹に比べてシリアス調であることは間違いないようだ。ノーベル賞選考委員はシリアスなものが好きらしいから、今後も村上氏の受賞は難しいかもしれない。
イシグロ氏は村上春樹をリアリズムの外で書いて成功している作家としている。こういうスタイルで書いて成功する作家は少ないとも。このような作家としてカフカとかガルシア・マルケスを挙げているが村上春樹にはカフカのようなシリアス感がないように私は感じる。