穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

チャンドラーとスピレーン

2013-01-10 22:59:59 | 書評
チャンドラーのプレイバックを読んだ。

前にも書いたが、死の前年たしか69歳の時の作品だが、かなり日本では読まれているようだ。版の重ね方を見るとそう思われる。英米ではどうなのか知らないが。

よく言われるように他のチャンドラーの作品に比べてセックス場面が非常に多い。描き方も直接的だ。若返り術としてセックス描写に力を入れたか、なんてね。

そう言えば、谷崎潤一郎が鍵なんてエロ小説を書いたのもよぼよぼになってからじゃなかったかな。分かるね。

一つ年譜的なことを、

ミッキー・スピレーン 1947年 I, The Jury
  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 
     同     1952年 Kiss Me Deadly

言わずと知れたミッキー・スピレーンのマイク・ハマー シリーズが猛威を振るった時代である。

そして 1958年 チャンドラー プレイバック

彼も一世を風靡したスピレーンのセックス過剰小説を見て、取り入れなければいかんと思った可能性がある。

村上春樹が彼の女性描写はどうもね、というのはどの小説のことを言っているのかな。プレイバックのことなのか、他の小説のことなのか。もっとも、ロング・グッドバイのリンダ以来おかしくなりだしたのかも知れない。