穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

アップデート要求52:オホーツク海から東シナ海まで電磁シールドのカーテンを下ろす

2021-04-21 13:07:35 | 小説みたいなもの

 国家間のイデオロギー対立の温度が37.5度に達すると宇宙船団から多数の無人ロボット衛星が発射される。それらはオホーツク海から日本海を経て東シナ海に至る高度100キロメートルの海上に整列する。有事発生を予測感知すると、これらのロボットが作動して海上まで電磁シールドをおろす。この壁は来襲するミサイルを跳ね返すので、この近くまで西方から来たミサイルはUターンして発射地に向かうか推力を失って海上に墜落する。電磁装置であるから極性がある。西方からのミサイルには強力な反発力が発生するが、東からくるミサイルはシールドを透過する。

 おかけで日本はミサイルに直撃されることは無かったが、日本海の真ん中に落下して爆発した核爆弾の間接的な影響を受けることになった。またユーラシア大陸に逆戻りしてそこで爆発したおびただしい数の原爆、水爆によって放出された放射能は偏西風に乗って日本上空を汚染してるという状況らしい。

 もちろんユーラシア大陸東部は壊滅し、二十億人を超えた人口は二百万人しか生き残れなかった。それも全員が放射能で生殖細胞を破壊されたので、遠からず一世代から二世代後には全員が死に絶える運命にあった。

 日本は直撃は免れたものの、偏西風や黄砂に付着して飛来する放射能で遠からず大陸同様に種の絶滅の危険にさらされた。星人はこの事態に緊急勧告を発出して種の保存策として出産の国家管理すなわち家族制度の廃止を改めて提案したのである。つまり汚染を免れた精子と卵子の一元的管理体制を勧告したのである。

 こうして考案されたのが健康な精子の採取計画である。健康な精子を供出した人間は甲種合格者として相応の代価が与えられ表彰される。政府の中央管理を経ないで私的な家族制度や野合によって膣から出産することは厳重に取り締まられることになったのである。殿下が目的地に到達したのはそういう精子採取、検査病室であった。その月の甲種合格者は氏名が官報に掲載される。

 

 



コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。