第三部途中まで読んでいる。映画で見たときにも印象が強かったが、小説のほうがはるかに迫力がある。
スカーレット・オハラが主人公なのだが、南北戦争の推移が、戦争が銃後の南部に与える影響が印象的だ。ときどきトルストイの戦争と平和と比較されるが、歴史小説の範疇に入るだろう。
「戦争と平和」がシリアス・ノベルとすれば、これもそうかもしれないが、より一般小説(そんな言葉があるかどうか知らないが)的、通俗小説といえるかもしれない。「レミゼラブル」が通俗小説と言われるならこれも通俗小説である。
もちろん、銃後の社会を活写できているのはスカーレットという女性の一典型の見事な創出によるところが大きい。
大戦争を扱った歴史小説は腐るほどあるし、有名なのが多いのも事実だが、「風と共に去りぬ」は抜きんでている。これをよむと司馬遼太郎なんて「小説」だな、と思う。小さな説ね。
銃後のアトランタ社会の描写は太平洋戦争当時の日本の内地事情をほうふつとさせる。それが身につまされるようなリアルな感じを与える。
私はそれらを身をもって体験したわけではないが、まだ戦争を生き抜いた世代に取り囲まれてそだったから、口づてに一次情報に取り囲まれていたので、この小説を読みながらそのころの社会を思い出した。